提供/伊藤忠都市開発株式会社

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大学への入学を機に、親元を離れる大学生も少なくありません。日本学生支援機構が公表している平成24年度の学生生活調査によると、大学進学者(昼間部)が自宅以外に居住する学生の割合は43.2%。そのうち、学生寮を選んだ人は5.6%と少数にとどまっています。しかし、そんな学生寮も最近は個性的で魅力あふれるものに変化しつつある模様。そこで、大学と学生寮を運営する企業、それぞれに昨今の学生寮事情について聞きました。

募集から3カ月で満室に。特色を打ち出したニュータイプの学生寮も登場

まず話を聞いたのは、青山学院大学。相模原と武蔵小杉、それぞれに学生寮を設けています。

「相模原については、相模原キャンパスに隣接した便利な立地にあります。例年12月中旬から募集を開始して、4月時点で全94室が満室になります。『全室南向き』『エアコン』『シャワー・トイレ完備の完全個室』のほか、館内には、洗濯機・乾燥機、共用システムキッチンなどの設備も充実しています。寮費は水道光熱費含めて月額3万9000円と比較的安価なのも人気の理由かもしれません」

相模原は在校生の男女が入居できる、いわゆるスタンダードな学生寮。かたや武蔵小杉は、2017年4月から全128室の「国際学生寮」として運営。日本全国から集まった学生だけではなく留学生も入居しています。

「将来、留学を目指す学生にとって貴重な経験になるだけでなく、留学したいけれども難しいという学生も、外国人留学生と交流する機会を得ることができます。寮内の共有リビングやキッチン等で交わされる日常の会話から、お互いの文化を紹介し合い、異文化理解を深めることができるのが魅力ですね。国内外に卒業後もつながることのできる友人を作ることができ、学生の将来にとっても大きな強みになると考えます」

なお、寮には大学が選抜した在学生のうち、リーダーとしてレジデント・アシスタント(RA)が男女各3名住み、交流イベントの企画をはじめ、区役所などで留学生の手続きをサポートするなど、寮生がより充実した生活を送れるよう主体的に協力できる仕組みを取り入れているそうです。

「交流イベントは毎月1回程度開催しており、共有キッチンで日本のスイーツをつくるイベント、七夕、書道教室、水引アクセサリーづくりなどが実施されています」

食事は、1階のカフェテリアで平日朝・夕2食提供。夕食は毎日数種類のなかから選択することができ、栄養バランスや季節感にも配慮したメニューとなっているとのこと。また、24時間有人管理で、カードキーによる入退館管理システムを導入しており、セキュリティにも万全を期しているといいます。

気になる毎月の寮費は10万4440円。学生寮としては割高ですが、武蔵小杉という立地や留学生との交流、食事代といった付加価値を考えれば、十分に見合うものがありそうです。

この青山学院大学の国際学生寮のように、大学によって特色あるスタイルの学生寮はほかにも増えている模様。例えば、大型テレビを備えた「シアタールーム」、同人誌をつくれるパソコンやコピー機がある「クリエーターズルーム」、露天ジャグジーやサウナ、スポーツジムがあるなど、共用部が充実しているタイプの寮もあるようです。

写真/PIXTA

実家と一人暮らしの中間にあたる「学生寮」、時代を問わず人気

こうした、新しいタイプの学生寮が増えているのはなぜなのでしょうか? 伊藤忠グループの住生活領域を担う総合デベロッパーである伊藤忠都市開発で学生寮開発を担当する片岡賢治さんに聞きました。

「首都圏における学生寮は、築年数が古いものが大多数を占めており、需要があるにもかかわらず、良質な設備や環境、セキュリティもしっかりしている寮は少数でした。また、現在、日本に来る留学生が増加していて、大学としても国際化に対応する方向にあるということも相まって、留学生向けの学生寮をつくる動きも加速しています。留学生にも対応できる寮をつくる必要性も高まり、新しい寮の整備が進んでいるとも言えると思います」

国際交流ができる物件は評価も高く、コミュニティースペースの充実も推し進められているそう。

「今も昔もですが、やはり親御さんの不安を払しょくできるのは、学生寮の強みではないでしょうか。食事の提供はかなり重要視されています。管理栄養士がメニューを監修しているなど、健康を意識したようなメニューを出す寮もあります。ほかにも自習室がある寮も、親御さんの評価が高いようです。また、留学生はジムの利用頻度が高いので、ジムを完備する学生寮もこれから先増えてくるかもしれません」

ちなみに、問い合わせが増えるのは推薦で合格が決まる10月くらいから。ほとんどの場合、住む本人ではなく親が探しているようです。

良質な環境が整った学生寮が増えれば、ますます利用者は増えるだろうと予想する片岡さん。一生に幾度もない学生時代。限られた時間だからこそ、より充実した環境で過ごしたいもの。

では、実際に寮で暮らしてきた学生は、生活をどのように感じているのでしょうか。大学4年間を通して入寮していたという上智大学の女子学生は次のように話します。

「学生寮に暮らして良かったのは、朝と夜のご飯で友達と会えることです。学校にいる友達よりも、長い時間を過ごすことになるので、より深いコミュニケーションが取れると思います。あとは、就職活動のときに『寮に住んでいます』と伝えると、面接官から割と質問をされました。個人的な感想ですが、寮に住んでいるというのは、ある意味集団行動の中で生きていて、規則を守れるところが評価をされるのではないかなと。実際、寮生活を通して協調性も身につきました」

寮生活では一人暮らしとはまた違う経験が得られるようです。共同生活が苦ではない学生にとって、寮という選択肢は有力かもしれません。

●取材協力
青山学院大学
・伊藤忠都市開発株式会社
(末吉 陽子(やじろべえ))