ファーウェイがスマートフォン技術の集大成ノートPC「MateBook X Pro」を投入する理由

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エントリーモデルからハイエンドモデルまで、ダブルレンズカメラを搭載したスマートフォンを投入し、さらに勢いを増しているファーウェイは5月10日、日本市場向けにモバイル利用も視野に入れたフラグシップノートPC「HUAWEI Matebook X Pro」を発表した。

スマートフォンのファーウェイがなぜノートPCを出すのか?
多くの人は、そうと思うかも知れない。

PC市場は、日本だけではなく、世界でも市場が縮小傾向にある。
はたしてそこに“うま味”があるのか? 
誰もが疑問を抱くのは不思議ではない。

その真意を紐解くために、最近の状況をみてよう。
ノートPC市場において、インテルは低消費電力型ながら上位モデルには4コア8スレッドのパワフルな第8世代Coreシリーズを市場に投入した。このことで、ノートPCを含め、多くの製品が代替わりする時期を迎える。
まずは低消費電力型のプロセッサを搭載したモデルが、夏から秋にかけてハイエンドラップトップ向けの高性能CPUを搭載したモデルが登場するだろう。

ファーウェイは昨年7月にファンレスの薄型ハイスペックノートPC「HUAWEI Matebook X」を発売している。今回のMateBook X Proは、最新の低消費電力型の第8世代「Core i7-8550U」および「Core i5-8250U」に対応させることで、しっかりとトレンドをキャッチアップしていたのだ。

つまり、モデルチェンジ時期にしっかり照準を合わせているというわけだ。

機能面では、画面のアスペクト比3:2の3000×2000ドットの液晶パネルを搭載。
文書作成や表計算などのオフィスワークにおいて、アスペクト比16:9の画面よりも3:2の方が縦方向に表示が広くなるため扱いやすい。また、デジタル一眼カメラのアスペクト比3:2の写真表示にも最適だ。

しかしながら、こうした使い勝手とモバイル性は相反する。

使い勝手を良くしようと画面を大きくすると、本体サイズも大きくなり持ち歩きに不便になるからだ。
これまでモバイル向けのPCを見ても、
・小さくて軽い
・画面が小さい
これが常識だった。

そしてモバイル向けのノートPCには、スマートフォン同様に、
・本体サイズはそのまま
・液晶パネル周りのベゼルを極力狭くして大画面化
といった方法がとられている。




Matebook X Proも、狭額縁技術により、13.9インチの大画面を従来機の幅約20mm増のサイズに収めることで携帯性と大画面を実現している。

この狭額縁化によって、インカメラの取り付け位置がなくなってしまったわけだが、ファーウェイはキーボード上部にポップアップ式のカメラを搭載することでカメラ問題を解決した。
このカメラは、通常はキーボード面に隠れており、カメラが外部を映し出すことがないためプライバシーを守る上でも安心感がある。まさに、逆転の発想でメリットを生み出したと言うわけだ。

さらに、マルチタッチ可能なタッチパネルを搭載。
Windows 10のタッチ操作に対応する進化を遂げている。
これによってスマートフォンやタブレットのように画面のボタンを直接触ったり、ブラウザのスクロールもタッチ操作したりできるようになり、直感的に操作できるようになった。

狭額縁とゴリラガラスを搭載したフラットなタッチパネルディスプレイは、まさにスマートフォンやタブレットでは当たり前となった技術であり、ファーウェイの得意な部分でもある。

実機を実際に触ってみて感じたのは、ディスプレイを閉じた状態から片手で開くことができることが便利だと感じた。ごく普通のノートPCならキーボード面を押さえる必要があり、両手で開く必要がある。ある意味、だからどうしたというレベルの話しであるかも知れないが、こうした部分のつくりの良さも評価したい。

また、バッテリーや放熱などもノートPCには重要な要素。
ファーウェイは、特に放熱に関してパッシブモード時はファンが回らない効率の良い放熱設計をMatebook X Proで採用しており、大きな特徴にもなっている。

スマートフォンでも熱による性能低下や低温やけどなど問題となることがある。
ファーウェイはこれまでスマートフォンで培った技術と、シャークフィンデザインによる冷却効率化で発熱の問題をクリアしている。

特にこのエアフロー周りの設計は、前機種がCore iシリーズのCPUを搭載しながらファンレスで動作していたと言う実績がある。

こうしてみると、様々な環境で動作するスマートフォンの技術が、十分にノートPCの製品開発に活かせることがわかる。

・画面の広さやタッチパネルなどの使い勝手
・持ち運びやすいサイズながら13.9インチの大画面
などMatebook X Proの良いところばかり並ぶが、残念なのが重さ1.33kgという点だ。
1kgを切ることが求められる既存のモバイルノートPCと比較すると、重さ的にはごく普通のUltrabookといったところなのだ。

とは言え、軽さを求めて筐体の強度が失われたり、放熱の機能が省かれたりしては本末転倒だ。

ビジネスやプライベートでも使いやすい機能を搭載し金属ボディながら上手く1.3kgに落とし込んだと考えるべきだろう。




いまやスマートフォンの方が、カメラやディスプレイ技術などで一歩先を行くことが多くなった。それだけ製品サイクルが短いと言うこともあるが、それに対応する研究開発の速さにも驚く。

そう考えると、
未来のノートPCには、ディスプレイ上部が欠けた“ノッチデザイン”も来るのだろうか?

今後はスマートフォンから、なにを学んで、使いやすいノートPCづくりをするのか?
各社の腕が試される時代になるだろう。


執筆  mi2_303