日本ハム・上沢直之【写真:石川加奈子】

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今季7試合で4勝も、防御率は12球団トップの1.39

 日本ハムの上沢直之投手が、エース級の活躍を見せている。今季7試合に先発して防御率は12球団トップの1.39。勝ち星は4勝ながら、先発した試合でチームが負けたのは1試合だけ。大谷翔平投手が抜けた穴を埋めるどころか、大車輪の働きぶりだ。

 大躍進の要因について上沢は「カウントが悪い時に変化球でストライクが取れている」と自己分析する。前回登板した5月16日は、狭い東京ドームで首位を走る西武を完封した。4年ぶり2度目の完封勝利で、1-0完封はプロ入り後初めて。「やっぱり格別でしたね。ああやって粘れたことは自信にしていいと思います」と胸を張った。

 昨オフに初めて行った上半身のウエートトレーニング効果が表れている。それまでの野球人生では、走って体力をつけることを重視してきた。「もうひとレベル上げるには新しいことが必要。ウエートトレーニングでエンジンを大きくして強い球を投げられるように」と始めた新たな取り組みによって、体は一回り大きくなった。その変化は1サイズ大きなシャツが必要になるほどだ。

「球数が多くなった時に思ったように投げられないということがなくなりました。変化球でストライクが取れるのも、筋力がついてフォームが安定した影響があるかもしれないですね」と効果を実感している。

 今季目標とするのは2桁勝利と規定投球回クリア。そのためにマウンドでは「長いイニングを意識して投げています」と言う。防御率トップを走っていても気負いはない。「今だけだと思います。いずれ抜かれますよ」と笑い飛ばす。

高橋コーチは内面の成長を指摘「感謝の気持ちを持つようになった」

 専大松戸高から11年のドラフト6位で入団した上沢のキャリアハイは14年の8勝。一昨年は3月に右肘内視鏡による右ひじ関節滑膜ヒダ除去手術を受け、ほぼ1シーズンを棒に振った。故障を乗り越えた昨季、後半から先発ローテーションに定着すると、球団から大きな期待を寄せられていた。 

 それは、背番号が「63」から「15」に変わったことでもわかる。昨年12月、契約更改後の会見で上沢はこんな話をしていた。「来年球団は15周年。僕の背番号も15に変わるということで、球団からは、こういう数字は君にとっていいきっかけになると思うから、来年は僕の年になってほしいと言われました」。球団が北海道に移転して15年目のシーズン、新たに背番号15を託された24歳は最高のスタートを切った。

 昨季まで2軍投手コーチとして上沢の復帰を支えた高橋憲幸投手コーチは、内面の成長が今季の飛躍につながったと見ている。

「もともと投手としてのトータルバランスを持った選手。怪我をして、支えてくれるいろんな人に感謝の気持ちを持つようになったことに人間性の成長を感じます。周りに協力者が多い選手ですよ」と言う。さらに「ピッチャーの中では一番ボールを持っている時間が長いんじゃないかな。(登板間の)ピッチングも70〜80球投げています。投げるのが好きで、うまくなりたいという姿勢が伝わってきます」と続けた。

 16日西武戦で完封した時、高橋投手コーチは上沢に「ナイスピッチング。次が大事やね」と声を掛けたという。「本当に一丁前になるには、次のピッチングが大事。次も良ければ、ひと皮向けたね、となりますから」と高橋投手コーチは期待する。次の先発は23日敵地ロッテ戦。どんな投球を見せるのか、注目だ。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)