北朝鮮国内から流出した国境地域の党幹部向けの思想教育資料「国境沿線イルクンたちは隣国に私事旅行に行く住民たちに対する教養事業を抜け目なく行おう」

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北朝鮮の金正恩党委員長は、「海外への情報流出、海外からの情報流入」に神経を尖らせている。体制の存立を危うくすると考えているからだ。何年も前から取り締まりを強化しているが、思想教育に使われる資料から、マンションのパンフレットに至るまで様々な文書が海外に「ダダ漏れ」状態だ。そこで北朝鮮当局は、機密文書が海外に流出した場合にすぐに出処を確認できるよう、新たなソフトウェアを開発した。(丹東=カン・ナレ記者)

電話帳を売って銃殺

中国に派遣されている北朝鮮のある幹部によると、北朝鮮の五徳山(オドクサン)情報社が2013年に開発したソフトは、中央政府がMSワードや「チャンドク」などのワープロソフトで作成した文書のフォントを、メールで送る前に一部変更する機能を持っている。

例を挙げると、平壌から咸鏡南道(ハムギョンナムド)に発送する文書の場合、「ナ」(나)の母音を示す(ㅏ)の縦棒を少し長くしてある。このように地域ごとにフォントを少し変えて、送受信の経路がわかるようになっている。

文書が海外に流出した場合、中央政府だけが知る文字コードと照らし合わせると、出処がどこの道、市、郡なのかがすぐにわかるようになっている。このソフトは、道から市や軍に、また朝鮮人民軍(北朝鮮軍)が地方の部隊に文書を送るときにも使われている。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、北朝鮮には上質の紙を製造する技術がないため、軍事機密に関する文書であっても、中国から輸入した新聞用紙に印刷する。そのため、まずは紙の質を見ることで、北朝鮮国内から流出したものかどうかがわかる。次に文字コードの対照表を使用し、具体的にどの地方から流出したかを調べるという。

そのため、情報筋は次のようにアドバイスする。

「わが国から流出した文書をメディアなどで使用する際には、文書そのものの写真などを絶対に公開してはならない。どこの誰が流出させたかがわかってしまい、家族もろとも収容所送りになってしまう。実際、そのような人たちがこの数年で大幅に増えている」

つまり、ワープロソフトなどで打ち直した上で、公開しなければならないということだ。北朝鮮が、電話帳を国外に売り払ったという理由で6人を銃殺するような体制の下にあることを忘れてはならない。

(参考記事:変わらぬ北朝鮮、6人銃殺。理由は「電話帳を売ろうとしたから」