中国軍の「J-20」(手前)と「J-31」(奥)のプラモデル(以下、プラモデルは筆者作成)


 近年、中国軍の戦闘機による日本への領空侵犯が増加しており、その意図や動向に関する議論が高まっています。そして同時に注目が集まっているのが、中国の戦闘機自体の性能です。特に中国が独自開発したと誇示するステルス戦闘機については、公開情報が少ないこともあり、各方面で分析が進められています。

 今回は、現在の中国空軍および海軍が保有する戦闘機について、開発系譜をまとめてみました。特に高い関心が寄せられているステルス機2機種については、市販のプラモデルを参考にしながら、構造の特徴などを紹介したいと思います。

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ライセンス生産から“独自”開発へ

 中国の戦闘機開発の歴史は、ソ連製戦闘機「MiG(ミグ)」シリーズのライセンス生産に端を発します。中ソ蜜月時代には「MiG-15」「MiG-19」というソ連製戦闘機がそれぞれ「J-5」「J-6」(中国名「殲-5」「殲-6」。以下、「殲」の字は「J」と表記)としてライセンス生産されていました。しかしその後の中ソ対立により、これらに続く「MiG-21」のライセンス生産は中止されました。

 ライセンス生産が中止されたことで、中国の戦闘機はここから一旦、独自開発の道を歩みます。まず残されたMiG-21の部品をもとに「J-7」を完成させると、これを発展させた「J-8」「J-8供廚魍発し、冷戦終了頃まで主力戦闘機として運用していました(下の図と表)。

中国軍戦闘機の大まかな系譜


中国のJシリーズ戦闘機一覧(各種公開情報を基に筆者が作成)


(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53121)

 しかしこうした独自開発だけでは、あらゆる技術で先を行く米ソの戦闘機、そして米国製戦闘機を導入する日本や韓国との戦力差は開く一方でした。

 そんな周回遅れのような状況の転機となったのが、1991年のソ連崩壊です。中国は東側諸国の混乱や懐事情に乗じて、積極的に海外技術を導入していきます。

 その嚆矢として、まず財政難だったロシアとの間で、現在も世界各国で絶賛運用されている「Su-27」(通称:フランカー)のライセンス契約を締結し、これを「J-11」として生産を開始します(95年)。

 このJ-11ですが、初期のA型は紛れもないライセンス生産品だったものの、「地上攻撃力など必要な機能を追加、カスタマイズした」として作られた後期のB型に関してはロシアから抗議を受けています。抗議の内容は、中国はB型の製造にあたって「ライセンス契約でロシアからの調達が義務付けられていた部品をコピーし、自国で生産・使用している」というものでした。しかし中国はロシアから「知財権の侵害に当たる」という抗議を受けてもどこ吹く風で、J-11Bの発展形に当たる「J-16」の運用を既に開始しているようです。

 なお、ロシアは旧ソ連時代にもライフルの「AK-47」を中国に違法コピーされまくっています。もしかしたら最も中国の違法コピーの餌食になっているのはロシアかもしれません。

イスラエルから技術者を引き抜き

 上記のJ-11の開発と同じ時期に、中国はもう1種類の陸上機である「J-10」の開発・生産も始めています。

 大型双発(エンジンが2基)のJ-11に対し、J-10は小型単発(エンジンが1基)です。中国はあくまでJ-10は独自開発機種だと主張していますが、イスラエルが米国と共同開発していたIAI社製試作機「ラビ」をベースに開発したことは周知の事実であり、技術者を引き抜いて開発したと各所から指摘されています。実際にJ-10の機体はラビの特徴的な外観にそっくりで、隠す気はまったくないようです。

 J-10は現在までに大型アップデートがすでに2回行われており、初期型のA型に対してそれぞれB型、C型と区別されています(最新のC型は中国メディアから「魔改造」という表現を用いて紹介されています)。

 このほか中国は2001年頃に、旧ソ連が開発していた空母と試作艦載機をウクライナから購入、調達しており、その後の中国国内での改造を経て、どちらも中国にとって初となる空母「遼寧」および艦載機「J-15」(2013年運用開始)へと至っています。J-15はSu-27の艦載機版「Su-33」(通称:シーフランカー)の試作機をベースに開発されており、今後の空母運用でメインに使われることでしょう。

異様にサイズが大きいJ-20

 続いて、現在注目が集まっている中国のステルス機について解説します。

 今回、筆者は中国製ステルス機「J-20」と「J-31」の機体を分析するために、1/72サイズのプラモデルを組み立ててみました。プラモデルは、各パーツの大きさのバランスが実物とは変えられているので、厳密な縮尺模型ではありません。しかし、デザインはほぼ正確に再現されており、機体の大まかな形状は十分に把握することができます。なお、組み立てたプラモデルは、広東省の華新発展有限公司(ブランド名:小号手、トランペッター)というメーカーが市販している製品で、値段はそれぞれ約80元(約1400円)でした。

 まず、2017年3月から運用が始まり、既に量産段階にあるJ-20ですが、プラモデルを組み立ててまず感じたのはその異様な大きさです。

左が「J-20」。右が「MiG-29」。いずれも1/72プラモデル(Mig-29はタミヤ製)。J-20の機体の大きさがよく分かる


 上の写真のように他の戦闘機と比較すると大体2〜3回りくらい大きく、そのサイズから一部でJ-20は戦闘機ではなく爆撃機ではないかという声も出ています。J-20は米国の攻撃機「F-117」(通称:ナイトホーク)を参考にしているという指摘もあり、空戦よりも地上攻撃能のほうに重きが置かれているのかもしれません。

 機体の構造は、開発にあたって米国製ステルス機「F-22」と「F-35」の技術情報をハッキングしたと言われており、プラモデルを見ても、エアインテーク(空気吸入口)の形状等が確かにF-22に酷似しています。

 ただ、部分的に独自の形状も見られます。特に興味深いのは翼の枚数です。J-20の翼は前翼(カナード)、主翼、X字尾翼で計8枚もあり、これでステルス性能を阻害しないのだろうかと思えるような枚数です。なお、翼がこれほど多くなった理由について、中国側は「エンジンの推力不足のため」と認めており、後期型ではカナードはなくなるとしています。

 ちなみにJ-20のプラモを組み上げた際、黒くてでかくて角ばったそのデザインから、筆者はZガンダムに出てく強化人間専用兵器「サイコガンダム」を思い浮かべました。

中国軍「J-20」のプラモデル


J-31は、まんま米軍のF-35

 J-20に続き、現在開発が進められているステルス機が「J-31」です。J-20は四川省成都市で開発されましたが、J-31は遼寧省瀋陽市で開発が進められています。開発場所が異なっていることもあり、外観や構造は大きく異なっています。

 J-31は、現在自衛隊でも導入が進められているアメリカ空軍の「F-35」に近い形状になっています。というよりも、J-31のプラモデルを作ってみると、そのまま金型をF-35にも流用できるのではと思うくらい酷似しています(下の写真)。型式番号が20番台から30番台に一気に飛んだのも、わざわざ数字を合わせてきたのかもしれません(意味があるとは思えませんが)。

中国軍「J-31」のプラモデル


アメリカ空軍のF-35A(出所:)


 F-35との唯一の大きな違いは、エンジンが1基ではなく2基になっている点です。これは、J-20同様にやはりエンジンの推力不足が原因とみられます。なお航続距離は公開されていませんが、作戦行動半径は1250キロメートルと言われていますので、それから類推すると約2500〜2600キロメートル程度ではないかと考えられます。このほかJ-31はJ-20と比べるとサイズもコンパクトとなり、一般的な戦闘機らしくなっています。

 J-20はそのサイズから、多額の運用コストがかかるはずです。米国のF-22とF-35の関係のように、J-20は少数、J-31は大量に生産する、いわゆるハイ・ローミックスを中国も行うつもりではないでしょうか。

 以上のように現在の中国の戦闘機は、ロシア製と米国製のコピーが入り混じって運用される、ある意味で面白い構成の仕方がなされています。今後これらの機体はどう発展していくでしょうか。おそらく、米国、ロシアの新型機に合わせコピーし続けていくのではないかと筆者は見ています。

米中ステルス機の主要諸元比較
(航空自衛隊サイト、百度百科等を参照して作成、カナード面積は含まず)


筆者:花園 祐