あなたはご存知だろうか。

日本国内最難関・東京大学に入学を果たした「東大女子」の生き様を。

東京大学の卒業生は毎年約3,000人。

しかしそのうち「東大女子」が占める割合は2割にも満たず、その希少性ゆえ彼女たちの実態はベールに包まれている。

偏差値70オーバーを誇る才女たちは卒業後、どのような人生を歩んでいるのか。

これまでには隠れにゃんにゃんOLや向上心の塊のような才色兼備、愛人枠に甘んじる文学少女、量産型女子を演じる理三女子が登場。さて、今週は?




<今週の東大女子>

氏名:中西みゆき
年齢:32歳
職業:不動産営業
学部:経済学部
住居:新横浜の賃貸マンション(週1、2日)、明治神宮前の分譲マンション(週5、6日)
ステータス:既婚

セオリーのノースリーブワンピースに、足元はマノロのピンヒール。

肩にかけたエルメスのガーデンパーティからは、書類やiPadが覗く。

シンプルかつラグジュアリーな彼女のファッションは、170cm近い長身と相まって風格すら漂っていた。

表参道『TWO ROOMS GRILL | BAR』に現れた中西みゆきは、まさに“東京のキャリアウーマン”そのものである。

「仕事の合間にここのテラスで息抜きするのが、最近の定番なんです」

梅雨に入ってしまったら寂しいなぁと呟きながらハーブティーを啜る彼女は、しかしどこか妙に艶っぽい。

軽やかなショートボブから覗く、白くて細い首筋のせいだろうか。

「今の仕事は完全歩合制なので休もうと思えばいくらでも休めるはずなんですが...逆にそれだとどうも怠けられないのが、人間の性ですよね」

彼女は現在、富裕層向け高級物件のみを扱う、外資系不動産仲介会社で営業職を務めている。

平日・休日関係なく、顧客から声がかかれば足しげく出向く必要があり、ランダムに入ってくるアポイントメントを捌くのはかなりのバイタリティが求められるそうだ。

「ハードですけど、今の仕事は本当に気に入ってます。新卒では日系の大手メーカーに就職したんですが...今となっては自分がどうしてそんなところを選んだのか、さっぱり分かりませんね」

みゆきは、過去の自分にダメ出しをするかのごとく頭を振った。

それもそのはずだ。

完全歩合でプレッシャーも高く人材の入れ替わりも激しい業界だが、みゆきは入社以来右肩上がりに成績を伸ばし、今では東京オフィスでも1、2位を争う稼ぎ頭だという。

「6年ほど前になるかな。叔父がちょっとした事業で成功して、ハワイに別荘が欲しいと言い出したんです。

それで叔父とともにハワイの不動産めぐりに付き合ったんですが...思いがけずそれが転職のキッカケになりました。

商談中に、なんと仲介会社からスカウトされたんです。

私をスカウトしたのはハワイ支店の担当者でしたが、その後、東京支店で席を用意してくれるという話をもらって、それなら...と転職を決めたんです」

なんというフットワークの軽さだろう。

そして、さすがは東大女子。

転職という大きな決断ですら即座に的確な判断が下せるのは、その頭脳のなせる技だろう。


美しきキャリアウーマンとなった東大女子。そんな彼女の、結婚観とは?


バリキャリ東大女子の、歪んだ結婚観


「夫は、新卒で入社したメーカーの同期です。

どんな人かって言うと...これは自分が転職してから思ったんですけど、彼は本当に典型的な“日本のサラリーマン”って感じですね。

…というかどっちかというと“駄目リーマン”かな?」

ふふふと笑うみゆきの表情に、しかし批判や軽蔑の色は無い。

ただ淡々と、事実としてそう述べているだけのようだ。

「彼、趣味らしい趣味もなくて。休みの日は大体パチンコに行ってるみたい。

…まあ最近あんまり会ってないから今はどうなのか分かりませんけど」




現在みゆきは、夫とほぼ別居の状態が2年以上続いているのだという。

「もともとは、夫と新横浜の家に住んでいました。でも転職してからは都内のお客様とのアポイントが多くて、毎日横浜まで帰るのが面倒になっちゃって...。

それで2年ほど前に、神宮前にマンションを買ったんですよ。今は週1、2日は新横浜、他はほとんどこっちで過ごしています」

しかも驚いたことに、彼女は神宮前のマンション購入を、完全に独断で決めたらしい。

「転職してからはマンションを購入する前も、どちらにしろ週の半分はホテル暮らしでしたし。

敢えて言わなかったわけではないんですが、別に言う必要もないかなって」

しれっと言い放つみゆきだが、彼女が神宮前に別宅(本宅と言うべきかはさておき)を構えているのにはやはり別の事情もあるようだ。

「そりゃあ私だって仕事ばっかりじゃ疲れますから、たまには彼氏が泊っていくこともありますけど。

...でもうちの夫は、そういうの黙認なので。なんて言ったって、お互い様ですから」

夫婦がお互い経済的に完全に自立しており、生活もばらばら。

その上、お互いの不貞を黙認し合っているというのだから驚く。

どう考えても歪んだ結婚観だが、彼女にとっては何ら問題ないらしい。

しかしそんな状態でありながら、彼女が現在の夫と結婚生活を続けるのには、いったいどのような理由があるのだろうか。


生活もバラバラ、しかもW不倫中。それでも彼女が結婚生活を続ける理由とは。


離婚しない理由


「わざわざ別れる理由ってありますか?」

周囲の雑音を制するように、みゆきは強い口調で語り始めた。

「私たち、一緒にいる時は仲良しなんですよ。

週1、2日顔を合わせるだけですが、そういう時には家でごろごろ一緒にテレビを見たり、横浜の方までお出かけしたり」

傍から見れば歪んだ夫婦生活であっても、みゆき自身は十分に満ち足りているらしい。

「ただ私も今年で33ですから…子どものことをそろそろ真面目に考えようかなぁって。

仕事は順調だしこのまま続けたいんですが、これ以上後になるとチャンスは低くなる一方ですもんね」

観念したような表情で、子作りについて言及したみゆき。

とはいえほぼ別居の今の状態で、夫と子作りなど現実的ではないような気がするのだが...?

「あ、当然夫とは“レス”ですよ。なので、人工受精を検討しています。

仕事は少しペースを落としてでも続けたいので、無事に子どもが生まれたら、うちの両親に新横浜に引っ越してもらうつもり」

...彼女にとっては子作りすらも転職と同様、ひたすら理性で決断できてしまうらしい。




「“もっと良い結婚相手がいたかも”って思うことが、ない訳じゃありません。

でもそんなこと言い出したら、キリがないでしょう?」

穏やかな声でそう言うと、みゆきは自信に溢れた微笑を浮かべた。

「相手に全てを求めようとして上手く行かなくなる夫婦って、多いと思いませんか?

みんな “夫婦”とか“家族”とかに、一つの理想の姿を求めすぎなんじゃないでしょうか。

そういう意味では私達、とっても上手くやってると思います。お互いの趣味や仕事に口出ししない、一緒にいる時間に拘らない。

私達は“夫婦”で居続けるために、お互いにとって一番良いバランスを見つけたんです」

『TWO ROOMS GRILL | BAR』のテラスは青山通りに面していながら、わずか5階とは思えないほど喧騒から遠い。

すべてを言い終えたみゆきは、どこか世俗を超越したような佇まいで、再び静かにハーブティーを啜った。

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