決まりそうで決まらない長友の完全移籍。このままイスタンブールに別れを告げるのは、選手本人も本意ではないだろう。(C)REUTERS/AFLO

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 土曜日のトルコ・シュペルリギ最終節で3シーズンぶりの優勝を飾ったガラタサライ。冬の加入以降、15戦連続フルタイム出場で覇権奪取に貢献した長友佑都も、歓喜を爆発させた。日本代表DFにとってはキャリアで初となるリーグタイトルだ。
 
 試合翌日、イスタンブールの本拠地で開催された優勝セレモニーでは大立ち回りを演じた。日章旗を羽織って登場し、切れのある殺陣パフォーマンスでファンを大いに喜ばせたのだ。いまやファティフ・テリム監督を筆頭にクラブ首脳部、チームメイト、そしてサポーターに愛される存在で、自他ともにインテルからの完全移籍を望んでいる。

 
 そんなダイナモが、日本への帰国を前にトルコ語で綴ったツイートが波紋を呼んでいるのだ。ガラタサライに関わるすべての人びとに感謝の気持ちを伝えるメッセージだが、どこか惜別の言葉のようにも響く。日本語に訳すとこうなる。
 
「入団当初から、監督、スタッフ、チームメイトのみんなが温かく迎えてくれました。本当に感謝しています。そしてこの4か月、小さな日本人フットボーラーを励まし続けてくれたサポーターにも心の底から感謝します」
 
「僕はここでかけがえのない経験をしました。素晴らしい愛情を受け取り、“信頼”という言葉の意味を深く理解できたような気がします。この先どうなるのかは分かりませんが、これからも生きている限り、僕はガラタサライのファンであり続けます。心の底から感謝します」
 
 長友らしいハートフルな言葉が綴られているが、やはり気になるのは「この先どうなるか分かりませんが……」の言い回しだろう。慎重に言葉を選んだだけなのか? それとも、望んでいた完全移籍の交渉が決裂したのか? 判然とはしない。
 
 敏感に反応したのが米ネットワーク局『CNN』のトルコ支局で、「これはお別れのシグナルだろうか?」との見出しを付け、警戒感を示した。長友の投稿を全文紹介したうえで、「選手本人も完全移籍を希望しているが、インテルとの交渉に進展がない状況だ。先方がノーと言えばそれまでの話となる」と、報じたのである。
 
 長友とインテルの契約は2019年6月まで残っている。当初の買い取り額は300万ユーロ(約3億9000万円)とされていたが、4月下旬になってインテル側が600万ユーロ(約7億8000万円)前後にまで引き上げたという。これに対してガラタサライのムスタファ・ゼンギス会長は不快感を露にし、「まるでマラドーナのそれじゃないか」と吐き捨てた。
 
 一方で、インテルの来シーズンに向けた補強計画の立ち遅れが影響していると見る向きも強い。UEFAからファイナンシャル・フェアプレー抵触の警告を受けているインテルは、巨費を投じた強化に踏み切れない。補強費を捻出するために、チャンピオンズ・リーグ出場で得る莫大な収入を当てにしていたのだが、日曜日のセリエA最終節でラツィオを下して逆転進出を果たした。これで長友の売却に障壁はなくなったと思われるが……。なにかしらの通達が長友側にあったのかもしれない。
 
 日本のファンとしても相思相愛のガラタサライでのプレー続行と、来シーズンのチャンピオンズ・リーグでの躍動を期待していただけに、完全移籍の成立を望みたいところだ。はたして長友が切望するように、「ワールドカップ前」に決着を見るのか。動向を注視するほかない。