日大アメフト部選手による反則タックル問題が新たな展開を見せています。試合直後から雲隠れした日大・内田正人監督は19日、被害に遭った関西学院大学の選手に謝罪したものの、その後の取材への対応に全国から批判が殺到。さらに21日、関学の被害者生徒の保護者が警察に被害届を提出するに至りました。なぜ日大サイドはここまで誤った対応を取り続けてしまったのでしょうか。そして事態を収拾する道はあるのでしょうか。この件に関してフジテレビのニュース番組でもコメントを求められた、「謝罪のプロ」として知られる増沢隆太さんは、まぐまぐの新サービス「mine」に「昭和の監督たちの終焉〜レスリング協会や日大アメフト部の危機管理」を掲載。今回は、「事態はもはや危機レベルに進行している」とする記事の一部を公開します。

昭和の監督たちの終焉〜レスリング協会や日大アメフト部の危機管理

反則タックルで関西学院大選手に大けがを負わせた日本大学アメリカンフットボール部の問題で、ついに監督の内田氏がマスコミで直接会見を行いました。しかし事態はもはや危機レベルに進行しています。この対応をめぐってフジテレビ・プライムニュースサンデーの取材でコメントしましたが、レスリング協会の伊調選手へのパワハラ問題にも共通する、昭和の監督体質がその核心ではないでしょうか。連続して起こった事件に、今そこにある危機を詳しく述べたいと思います。

1.危機管理の間違い

謝罪会見など危機対応では時間が勝負です。事件発生後はとにかく早く事態収拾に乗り出さなければ、時間単位で事態は悪化していくからです。インターネットのない昭和の時代であれば雲隠れも一つの戦法でした。しかし今は放置すれば次から次へと批判の炎が収まるはずがありません。

恐らく法的な対応は協議したと思われますが、恐ろしいのそれ以上に経営リスクです。フットボールの問題ではなく、もはや大学経営に深刻なダメージをもたらせつつあることへの認識があるのか、非常に疑問に感じる対応でした。大学本部の最高幹部でもある内田氏は、自身の問題だけでなく大学そのものに今及んでいる危機的事態への対応責任があります。

スポーツ振興と受験生確保は私立大学にとって生命線ともいえるもっとも大切な経営課題です。この事件は大学の経営を直撃する二つのトラブルであるという認識が全く見えてきません。「監督を辞任」というのは、あくまで部の問題としてことを収める姿勢であり、時機はもうそこでは済まないでしょう。当然記者から大学の役職は辞めないのかという質問も出たようです。

当然つっこまれることが十二分に予見される事項であるにもかかわらず、何も回答しないという姿勢は、ベッキー事件で質問を一切受け付けず大炎上した時と全く同じ構造です。今回の問題の核心はどう見ても「意図的反則行為への指示の有無」と「(部ではなく)大学幹部としての責任」です。これらに対してゼロ回答で会見に臨んだのは、危機管理と呼べるものではありせん。

2.小学生でもぶん殴っていた昭和の体育教師

全日本女子レスリングヘッドコーチで至学館大学の監督を務めた栄氏も含め、昭和の時代に活躍した選手出身指導者です。プロ野球の監督でも、元名選手という例は数多くあります。しかしながら、プレーヤーとしてどれだけの名選手だったとしても、監督や指導者の技能と同じではないことは、すでにさまざまな失敗例である程度は明らかといえるでしょう。

今の感覚では考えられないことがフツーだった昭和の時代。小学校ですら教師から殴られるのはフツー。中学高校と体格が良くなればもっとエスカレートし、練習中に水を飲んだからとか、今ではあり得ない理不尽な言いがかりの暴行すらもありでした。そんな中で出世して、大学の大幹部になった方々ですから、企業では当然の人的管理やコンプライアンス意識とは無縁で来られてしまったのだろうなと感じます。

レスリング協会のパワハラや財務省のセクハラ事件など、昭和の時代は許されていた古い慣習がどんどん通用しなくなっています。今、若い学生たちが恐怖するブラック企業問題も、昭和ならフツーで済んでいたことだらけ。昔サムライは刀を持つことができましたが、今やれば銃刀法違反です。武士による無礼打ちという殺人は、当時の法律が認めていたとされますが(※)、もちろん現在通用するわけがありません。これと同じです(※:実際にはさまざまな規制があり、誰でもかれでも許されたものではない)。

今回の事件やハラスメントとされて問題となっているトラブルは、昔は精神論で済んでいたことに法律が介入するようになったからです。この変化をしっかり取り入れている組織とそうでない組織の差が、一連のセクハラ、パワハラ、反則行為などに共通して見ることができます。巨大で歴史と伝統ある組織の弱みともいえるものではないでしょうか。

3.名選手と名監督は別物

体育会学生が悪いわけではありません。スポーツの世界ですら、無意味な精神論では勝てないことは完全に共通認識です。今やプロでもアマでも本格的なスポーツの世界では、根性とは関係なく科学的トレーニングが行われています。「水飲むな」「ウサギ飛び」のような完全に科学的に否定された指導は「無礼打ち」同様にもはやあり得ません。

しかし問題はそうした時代の変化や科学的思考に、スポーツ関係者のトップがついて来られているのかという点です。役職上人事担当だからというだけで、取って付けただけのパワハラ問題責任者がパワハラを働くような事象が起こるのはこうした組織です。スポーツ団体などでは、そのスタッフに組織や経営の専門家やそうした専門知識を持つ人が多くいるようには全く見えません。そうだとすればそんな組織はこうしたトラブルリスクの塊といわざるを得ません。

当事者の記者会見に臨んで、法的な準備はされていたのかと思いますが、その上の危機管理についてはおよそ準備は不十分でした。本人はもちろんですが、大幹部を支える周囲のスタッフにおいてもそのような危機対応認識がなかったのではないでしょうか。

たとえスクールカラーであってもピンクネクタイをしたり、相手校の名前を呼び間違ったり、責任はすべて自分と言っているにもかかわらず辞任するのはあくまで監督職だけで、核心の疑問や理事責任へは回答しなかったり、6日の事件発生から2週間もの時間を経ておきながら「相手校への謝罪を優先したのでマスコミ対応が遅れた」という理由になっていない理由など、おそらく炎上の火がますます燃え盛ることはあっても鎮火には程遠いものになることでしょう。

4.事態収拾の道、一発逆転策はあるのか?

大学本体にも及んでいる巨大な危機。この危機に対処する道はあるのでしょうか? このまま放置すればスポーツ推薦やスポーツでの活躍を目指して進学する学生に影響するのではないしょうか。大学ブランド毀損は受験生の数に影響があるのではないでしょうか。

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2016年、日本大学は危機管理学部を発足させました。

(この後、増沢氏が「好き放題書いた」という続きは、まぐまぐの新サービスmineへご登録の上、お楽しみください)

image by: 日本大学 アメリカンフットボール部 PHOENIX - Home | Facebook

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