「夫のモラハラ」に悩む人へ。モラハラ夫の特徴と対処法

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ここ数年よく話題にあがる「モラハラ(モラルハラスメント)」。実は、夫の日々の振る舞いがモラハラであることも……。そんな夫の振る舞いに悩む女性のために、モラハラ夫の特徴とその対処法について、弁護士の刈谷龍太さんに教えてもらいました。

■そもそもモラハラとは?

まずは、モラハラとDVのちがいと実際のモラハラ事例についてチェックしていきましょう。

◇モラハラとDVのちがい

☆モラハラとは?

モラハラとは、「モラルハラスメント」の略ですが、この言葉自体は法律で明確に定義されているわけではありません。一般的な意味としては、言葉や態度などによる精神的暴力を指すと言われています。

☆DVとは?

DVとは「ドメスティック・バイオレンス」の略で、一般的には配偶者からの暴力を指すとされていますが、DVそのものを明確に定義した法律はありません。しかしながら、「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律(いわゆるDV防止法)」では、”「配偶者からの暴力」とは、「配偶者からの身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」”と定義されています。

☆モラハラとDVは同じような意味内容

前述の通り、モラハラもDVもどちらも定義としては同じような意味内容になっており、DVの中でも特に精神的DVをモラハラとする捉え方もあるようです。また、モラハラには、必ずしも被害者に向けられた直接的な精神的暴力、たとえば怒鳴ったり、罵ったりという行為を必要としないとする考え方や、精神的DVは経済的暴力や性的暴力を含むが、モラハラは含まないとする考え方もあるなど、さまざまな見解があるようです。

☆言葉の意味に囚われないことが重要

個人的には、精神的DVは単なる離婚問題にとどまらず、DV防止法の適用があることから、被害者に強い要保護性が要求されるので、モラハラの中でも特に被害者に直接向けられた”強度な精神的な暴力”をDVと捉える考え方がしっくりくるように思います。

いずれにしろ、モラハラもDVも明確な定義がないことから、重要なのは言葉の意味にとらわれるのではなく、配偶者からこのような仕打ちを受けたという内容を具体的に説明できるようにしておくことです。

◇モラハラ夫の事例

☆事例1

ある日子どもが風邪を引いた際に、夫から「子どもが風邪を引いたのはお前の食事が原因だ!」、「ちゃんとした食事を与えているのか!」、「お前に子育てをする資格はない!」などと言われたケース。

子どもが風邪を引いた原因には、さまざまな理由が考えられます。それにもかかわらず、夫は子どもが風邪を引いた原因が妻の食事だと決めつけた上、妻の人格を非難するような発言をしています。このような夫の発言により、妻は「子どもが風邪を引いたのは自分のせいなのではないか」と思うようになり、自分はダメな母親なのではないかと精神的に追い詰められることに繋がります。

このようによくないことが起きたときに、本来は妻が自分のせいだと思うべきではないような事項についても執拗に攻撃することにより精神的に追い詰める行為は、モラハラの典型例と言えます。

☆事例2

ある日、妻が家計のやりくりについて夫に相談した際、夫から「俺は仕事が忙しい! 家計のやりくりはお前の仕事なんだから、お前がなんとかしろ!」と怒鳴られ、その後、何度相談しようとしても、無視されたり、机を強く叩いてその場を去られてしまったりしたケース。

家計をどのようにしてやりくりするかについては、夫婦にとって非常に重要であり、本来は夫婦間できちんと話し合うべき事柄です。それにもかかわらず夫は、家計のやりくりをすべて妻に押しつけようとし、あたかも妻のやり方が悪いために家計が圧迫されているかのごとく妻を責め立てています。これもモラハラの典型例と言えるでしょう。

また、こうした発言に加え、怒鳴る、物に当たるなどして妻を威嚇し、無視するなど、妻を傷つけるような行為をしています。このような夫の発言や態度のうち、特に威嚇行動はDVと評価される可能性があります。なお、妻が家計について、夫の稼ぎが悪いなどと責め立てる行為は、逆にモラハラと評価されるかもしれないので、注意が必要です。

◇モラハラ夫の特徴

・何かと人のせいにし、自分の非を認めようとしない

・感情の起伏が激しく、些細なことですぐ怒る

・プライドが異様に高く、自分の考えを曲げようとしない

・正論に聞こえる詭弁を振りかざす

・他者に対する思いやりがなく、考え方が自己中心的

・ときには優しい

・外に対する態度がいい

・束縛傾向にあり、嫉妬心が強い

・平気で嘘をつく

・ストレスに弱く、打たれ弱い

■夫が「モラハラかも」と思ったらすべきこと

もし自分の夫の言動がモラハラかもしれないと思ったときは、どうすればいいのでしょう。対処法について教えてもらいました。

◇モラハラ夫の対処法

☆モラハラ被害に遭っていることを自覚する

簡単なようで意外と難しいのが入口のこの部分。モラハラは相手を必要以上に攻撃するものですから、妻は自分が悪いのかもしれないと思い込んでしまい、夫のモラハラに気づけないことがあります。

なんでもかんでもモラハラだと決めつけるのはよくないことですが、少なくとも夫婦関係において、どちらかが常に悪いということは本来あるべきではないこと。そのため、自分がいつも謝ってばかりいるなど、自分自身を振り返ったときに少しおかしいと思えるきっかけに気づくことが重要です。「もしかして夫がモラハラかもしれない」と思った場合は、ひどくなる前に対策をとるべきでしょう。

ただ一方で,なんでもかんでもモラハラだと決めつけるのもよくないことですが、少なくとも夫婦関係において、どちらかが常に悪いということはなかなか考えられません。そのため、自分がいつも謝ってばかりいるなど、自分自身で異常と思える言動を行っていたことに気づいたときには,モラハラを疑いましょう。そして,「もしかして夫がモラハラかもしれない」と思った場合は、ひどくなる前に対策をとるべきでしょう。

☆夫と話し合う

モラハラがひどくなる前であれば、妻から自分の悩みや気持ちを正直に伝え、「○○○を直してほしい」などと訴えることにより、夫も自分の過ちに気づき、考えや態度を改める可能性があります。そのため、夫からモラハラ被害を受けた場合の対応として、まずは夫と話し合うことがおすすめです。しかし場合によっては、親族や共通の友人などの第三者を交えて話し合いをしたほうがいいことも。また、夫のモラハラがひどく、話し合いをしても改善が見込めないような場合には、効果は薄いと考えられます。

☆第三者に相談する

モラハラ被害を受けた場合にひとりで抱え込もうとすると、精神的苦痛も大きくなりますし、状況も改善しません。そのため、夫からモラハラ被害を受けた場合の対応として、親族や友人など信頼のおける人や、配偶者暴力相談支援センターの相談窓口などに相談するのがよいでしょう。また、夫のモラハラがあまりにもひどく、自分や子どもに危害が加えられるおそれがあるような場合には、すぐに警察や弁護士に相談するべきです。

☆証拠を残す

夫からモラハラ被害を受けた場合、離婚や慰謝料請求など、法的措置を検討する人もいるかと思います。これらの法的措置をとるにあたっては、モラハラ被害を受けた側がモラハラの事実を証明する必要があります。そのため、夫からモラハラ被害を受けた場合の対応として、ICレコーダーで夫の発言を録音したり、その日の出来事を詳細に日記に書いたりしておくなどして、証拠を残しておく必要があります。

■モラハラ夫と感じたら悩まずに相談を

夫の振る舞いに少しでも疑問を感じたら、ひとりで悩まずに信頼できる友人や家族に相談することが大切。誰かに話すことで、気持ちも軽くなり、客観的に判断できるきっかけにもなります。何よりも、ひとりで抱え込みすぎては心が疲れ切ってしまいます。そうならないよう、早めに対策をしていきたいですね。

(監修・文:刈谷龍太、文:おぜきめぐみ)

※画像はイメージです。