その投稿、後で発掘されても大丈夫な内容ですか?(写真:pixelfit/iStock)

日本人のスマートフォン保有率が何%かご存じだろうか。総務省の「平成29年版情報通信白書」によると、全年代の平均56%、20代に限ると94%に上る。友人との動画や画像のやり取りやSNSへの投稿、ニュースの閲覧とコメントなど、「人とつながる」端末をつねに持ち歩くのが、今の大学生の日常だ。

しかし、こうした日常の中に潜むリスクについて、きちっと学校では教えられることはなく、また教えられても「情報」の時間に少しだけ、というのが実情だと思う。

すべて「本人任せ」になっているのではないだろうか。

不適切な投稿で炎上した過去はネットに残り続ける

こうした「本人任せ」の結果、若者がネット上で炎上する事件が後を絶たない。5〜6年前から「バイトテロ」なる言葉が生まれ、大学生がバイト先で悪ふざけをした様子を写真や動画で撮り、ツイッターなどに投稿し炎上するのもその1つだ。

こうした事件は学生本人やグループが非難されるだけでなく、大学当局まで非難が飛び火して、学長自らが謝罪に追い込まれるケースもある。この構図は、社員が不適切な投稿をしたためにネット炎上し、勤務先が突き止められて会社が非難の対象になるというものと同じである。

また、ネットに載った不始末や個人情報は永遠にネットに残り続ける。そのため、就職活動で応募企業の採用担当が氏名を検索し、過去の事件を知るに至り内定をどこからも得られないといった事態に追い込まれることもある。

大学生も昨今のバイトテロがテレビのワイドショーなどで面白おかしく取り上げられるのを目の当たりにして、バカはしちゃいけないと気づき注意するようになった。

しかし、今度はSNS上でどうやったら自分が「見栄え」するか、他人から「いいね!」をもらえる投稿になるか、といった体裁や表向きだけスマートにする学生が増えてきた。リアルな自分とネットの中の自分は別人格であり、他人が見たときに「すごい」「立派」と思われるように演じる者まで出てきた。

就活時期を迎えると、学生は不適切と思われる画像や投稿をさかのぼって削除したりする。会社の人事担当者も採用のプロであるため、そうした魂胆はお見通しではあるが、特に最終面接の前には、学生が使っていたSNSは見られる範囲でチェックし、外部のコンサルタントにSNSで接近させ学生の日常を調べさせるということも行っている。

こうした事実を踏まえると、学生にはソーシャルメディアガイドラインについて、入学の早い段階でオリエンテーションとかミニ授業で、ソーシャルメディアとの正しい付き合い方などを、レクチャーするのがいいかと思う。そして、「絶対にしてはいけないこと」「次にしてもいいが注意して使うように促すこと」など、内容別にレクチャーしていく必要があるだろう。

SNSにおける鉄則3つ

特に学生が守るべき点は以下の3つだ。

1. 第三者の権利の尊重と保護
他人の著作権や肖像権、商標権、コンテンツの二次利用について、関係法令を順守すること
2. 誹謗中傷の禁止
特定の個人や集団に対する侮辱、名誉毀損、差別的表現の禁止、特定の思想、信条、宗教、政治等に関する攻撃的、差別的、排他的表現を差し控えるなど
3. デジタルツールとしての特質の理解
いったんネット上に出た情報は瞬時に伝達され、取り消すことができない性格のものであることを理解し、表現や記述には細心の注意と慎重な態度で臨むこと

まず、「第三者の権利の尊重と保護」というのは、ネット上に転がっている他者のコンテンツを無断で使用しない、ということである。よくありがちなのは、いい写真だと思って自分のブログに貼り付けたり、他者の執筆した文章を、引用の範囲を大きく超えて無断で利用したりといったことである。

ちなみに引用の範囲は、原文(自分が書いたオリジナル原稿)を主として、引用部分が従でなければならず、主従の関係が明確になっている必要がある。なお引用の際には「引用の文章」のようにかぎかっこで引用部分がわかりやすく明示されていなければならない。また(出典:〇〇)というふうに、引用した元の出典名(本なら『書名』、執筆者名など)を明示しておくことも必要になる。

2つ目の「誹謗中傷の禁止」とは、他者を誹謗中傷するような書き込みはやめよう、ということである。例え書き込んだ内容が真実であったとしても、場合によっては名誉毀損の対象となり、刑事・民事事件に発展する可能性がある。

書き込みをされた側が訴えを起こし、捜査機関が動いてプロバイダーに情報開示を求めれば、匿名であっても書き込んだ本人を特定することは難しくない。みんなが書いているから大丈夫だろう、といった付和雷同的な書き込みがいかに危ういか、教える必要がある。

最近多いのが「売国奴」やら「在日」とかいう表現で相手を決め付けて人種差別的な攻撃を仕掛けるもので、ヘイトスピーチとして自治体によっては条例で禁止されている。首長の判断で投稿者の実名が公表されるリスクもあることを、投稿者は知る必要がある。

ネットに一度出した情報は消せない

最後の「デジタルツールとしての特質の理解」とは、一度ネットに出てしまった個人情報や不適切な書き込み、投稿などは、デジタルデータの特性として消せない、履歴として残っていくということである。

過去に若気の至りでしでかした、忘れ去りたい内容も、消せないのがネットの特質であり、その点を十分認識する必要がある。フェイスブックやラインのように、自ら書き込みを消すことができるSNSなら救いがあるが、こうしたメディアばかりではない。たとえば5ちゃんねる(旧名2ちゃんねる)などに転載されたら、消すことが非常に困難を伴う。

学生には、以上の3点を特に注意してSNSを利用してほしいものである。