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■60歳の定年までにローンを完済するのが理想

首都圏における今どきの住宅ローンは、新規借り入れの8割前後が変動金利です。マイナス金利政策下、変動金利は0.625%程度と、魅力的な水準ですが、半年ごとに金利が見直され、低金利の恩恵が続く保証はありません。歴史的な低金利の恩恵が長く受けられる、10年固定金利(1%前後)や、30年、35年などの長期固定金利(1.5%前後)がオススメです。

もうひとつ注意したいのが、「返済期間」です。

35歳で4000万円・35年返済のローンを組むと、完済予定は70歳。60歳時に約1400万円ものローンが残ります(変動金利0.625%で借り入れ、11年目以降2.5%と仮定。かなり楽観的な設定)。

60歳以降も働くとしても年収は50代の半分以下、65歳からの年金は200万〜220万円と、収入ダウンの崖が2回あり、60歳以降は毎月のローン返済が難しいと言えます。60歳の定年までにローンを完済するのが理想であり、住宅ローンは老後の家賃の前払い、と考えるべきなのです。

とはいえ、返済期間が短いと毎月の返済額が多くなり、借りたい額が借りられなくなりがちなので、返済期間は「65歳マイナス返済開始時の年齢」を最長と考えるといいでしょう。言い方を変えれば、その範囲で借りられる(返せる)額までしか借りてはいけない、ということです。

以前は借りられるのは物件価格の8割程度、完済は最長70歳までが一般的でしたが、現在は全額借り入れ可能、完済年齢最長80歳などとなっており、借りすぎてしまう人が多いといえます。不動産会社からは「繰り上げ返済すればいい」といわれるようですが、そんなに簡単ではありません。実際には、教育費の準備もままならない世帯が多いのです。

今や大学生の2.6人に1人が日本学生支援機構の奨学金を利用。返済経験のある方は、頑張れば返せる、と思いがちですが、就職先に寮社宅があったのは昔の話であり、増えない給料から家賃を払い、奨学金を返していくのは大変です。奨学金を借りるにせよ、その額が膨らまないよう、教育費の準備が必要です。繰り上げ返済どころではないかもしれません。かといって60歳以降の返済は大変ですから、長く借りない、借りすぎない、ということが重要なのです。

「もう借りてしまった」「65歳以降も返済が残る」という人はどうすべきでしょうか。

まずは60歳まではひたすらお金を貯め、60歳でローンを見直しましょう。

たとえば毎月返済額が10万円、完済が70歳の場合、60歳時のローン残高は1100万円程度。60代前半の給料が大きく下がらず、毎月返済していけそうなら、60歳で500万円程度を「期間短縮型」で繰り上げ返済します。5年程度、期間が短縮でき、65歳で完済できます。

60代前半の給料が大きく下がり、月10万円の返済が厳しければ、毎月返済額が少なくなる「返済額軽減型」で500万円を繰り上げ返済。毎月の返済額は5万円程度になり、返しやすくなります。ただし70歳までローンが残るので、完済まで頑張って働きます。

いずれにしても繰り上げ返済が必要ですから、計画的に貯めていくことが大切です。繰り上げ返済には利息が軽減される効果があり、金利が高ければ早く実行すべきですが、金利が低いローンなら急ぐ必要性は低いと言えます。貯めるだけ貯め、教育費のめどが立ったら繰り上げ返済、という順番がいいでしょう。

(ファイナンシャルプランナー 深田 晶恵 構成=高橋晴美 写真=iStock.com)