実は"どこへもタクシー"が節約になる理由

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大切な老後資金を守り、増やすためにはどうすればいいのか。「プレジデント」(2018年4月2日号)では、だれもが直面する「悩ましすぎる10大テーマ」について、Q&A形式で識者に聞いた。第3回は「移動手段は、自家用車か、どこへ行くのもタクシーか」――。

■1年間の自家用車関連支出は約80万円

自家用車には、買い物、とくに重いモノを買ったり、まとめ買いをしたりするときに便利であるほか、通院に使える、気軽にドライブに行ける、などのメリットがあります。

しかし、100万円単位の購入費用のほか、車検、保険、自動車税、ガソリン代などの維持費が継続的にかかります。年間20万〜30万円、駐車場代を入れればさらに負担は重くなります。もしも車を手放せば、それらの費用は一切かからなくなります。

仮に諸費用含めて250万円で買った車を5年乗るとしたら、1年あたりに換算すると50万円。年間の維持費が30万円とすると、1年間の自家用車関連支出は80万円です。

これをタクシー利用に換算するとどうなるでしょうか。仮に1回1000円でタクシーを利用するとしたら、年間80万円の自家用車関連支出は、800回分のタクシー代に相当します。

そう考えると、自家用車とタクシーではタクシーに軍配が上がる、といえるでしょう。

タクシーを使うなんて贅沢だし、利用するには気が引ける、もったいないから出かけなくなりそうという人も多いと思いますが(私もその1人)、実際には自家用車のほうが贅沢なのです。

しかも自身の運転には事故を起こすリスクが伴います。これは自動車保険による保障があろうとなかろうと、被害者はもちろん加害者になっても大きなダメージとなります。ですが、タクシーならその心配はなし。夫婦で外食に出かけても、タクシーなら夫婦揃ってお酒を楽しむこともできます。

■「交通事故のリスクを避けられる」というメリット

とはいえ、車が好きで、車を自室のように大切にしている、運転が好きなど、お金以外の要素もあると思いますし、子供にチャイルドシートが必要なうちは、たしかに自家用車が便利です。経済以外の側面も無視できません。

冷静に判断するためにも、まずは自家用車にいくらお金がかかっているかを計算してみてはいかがでしょうか。購入費用については使用する期間で案分。維持費については、自動車税、自動車保険料、車検費用(1年分に案分)、ガソリン代、駐車場代を計算します。「えっ? こんなに!」と思ったら、見直しの必要あり、と考えてください。

実際、自家用車関連支出は家計の中でも負担が大きい費目であり、節約効果が得やすいといえます。今すぐでなくても、子供の送迎の必要がなくなる時点などを見越して、計画的に考えるのもいいと思います。

ただし、高齢になったら積極的にタクシーへのシフトチェンジを考えましょう。過疎地ではそうもいかない場合がありますが、タクシーを便利に使えるエリアでは、経済的な要素に加え、まずは「交通事故のリスクを避けられる」というメリットを重視したいところです。辛い出来事があると自身の体調にも精神にも支障をきたすことがありますから、お得で安心な選択をすることが望まれます。

▼まずは自家用車にいくらお金がかかっているかを計算する

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井戸美枝
社会保険労務士
ファイナンシャルプランナー、経済エッセイスト。神戸市生まれ。講演やテレビ、雑誌などを通じ、身近な経済問題をやさしく解説する語り口に定評がある。『100歳までお金に苦労しない 定年夫婦になる!』(近刊)など著書多数。

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(社会保険労務士 井戸 美枝 構成=高橋晴美)