あなたはご存知だろうか。

日本文化の真髄が今なお息づく、古都・京都のリアルを。

京都に3代以上継続して住まう家の娘だけが名乗ることを許される、“京おんな”の呼称。

老舗和菓子屋に生まれ育った鶴田凛子(26歳)は、西陣で300年以上に渡って呉服店を営む京野家に見初められ、跡取り息子である京野拓真と婚約中だ。

側から見れば幸せの絶頂、のはずだが…この結婚は悪夢の始まりだった!?

「京都ちゃん」一挙に全話おさらい!



第1話:生涯を保障された上流階級の暮らし。老舗呉服屋への嫁入りは、天国か地獄か

生まれ持った品の良さと、透き通るような白肌。控えめに輝く黒目がちの瞳に、艶々の長い髪。葵祭の主役を飾った凛子は、引け目なしに美しかった。

一躍有名人となった凛子のもとには、京都ゆかりの名家から数多くの縁談が舞い込む。何もかもが、予定調和。

このまま母のように何不自由なく生きていくのだと、上流階級で暮らす一生の幸福が約束されたのだと、そう信じていた…はずだったのに。

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第2話:根強く残るお見合い文化。ときめきも恋心もない結婚を受け入れる、女の本音

-ここだけの話。桜子さん、婚約破棄するかもしれんらしい。ー

先日、親友・ゆりえから聞いた噂が頭をよぎる。ドレスを物色している桜子さんに声をかけようか迷っていると、次の瞬間、彼女の大きな瞳に、バッチリ捉えられてしまった。

「凛ちゃん!久しぶりやねぇ」

よく通る、迷いのない声。桜子さんが笑うと、周囲にパッと花が咲くようだ。昔から変わらぬ屈託のない笑顔に凛子はホッとして、小さく手を振り返した。

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第3話:入籍前、突然呼び出して「墓を守れ」と言い放つ姑に憤りを覚えた日

「凛子さんに、色々教えとかなあかんおもて」

雑談をすることも、向かい合って座る凛子の反応を待つこともなく、義母の話は勝手に始まった。

「はい」

…考えてみればこれまで、義母とまともに会話をしたことなどないように思う。凛子の意見など、まったく求められていない。だからいつもどおり、思考を停止しておこう。

そんな風に思った矢先…しかし凛子は、義母が放った言葉に耳を疑うのだった。

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第4話:箱入りお嬢様の秘め事…婚約者を裏切ってまで、別の男と密会した夜

凛子は、これっぽっちもときめかない自分に余計悲しさを感じて、枕に顔を埋める。拓真への返事を送る気になれず突っ伏していると、今度はメッセンジャーの通知音がして、凛子は再びスマホを握りしめた。

メッセンジャーで連絡してくる相手には…心当たりがあった。

“凛ちゃん、久しぶり!いま京都に帰ってきてるんやけど、土曜の夜もし時間あったらご飯でもどうかな?”

それは…凛子が待ちに待っていた連絡だった。

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第5話:誰も逆らえない鬼姑から、新たに課された地獄のルール

-残念、一足遅かったなぁ。

竜太の言葉、そして思いがけない彼の真剣な眼差しは、凛子の心拍を乱した。気の利いた返しも、軽く流すこともできず黙り込んでしまった凛子を見て、竜太は困ったように笑う。

「そんな顔しんといて(笑)」

誤魔化すように日本酒を注ぎ、お猪口を口元へと運ぶ。凛子はそんな彼の様子を、スローモーションのように眺めた。

「凛ちゃんは、その人と…婚約して幸せなん?」

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第6話:婚約破棄をした女には「はみ出し者」のレッテル。悪目立ちは御法度の、京おんなソサエティ

「私も、報告したいことがあるんよ」

桜子はそう言うと、一呼吸置くように下を向いた。そして再び顔を上げた桜子は、あまりにも意外な言葉を口にしたのだった。

「私…京都を出ていく。東京行くことにしたから」
「え…!?」

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第7話:稼いでいても“サラリーマン”はお断り。家柄と資産が何より大事な、京おんなの結婚観

「やっぱり京都は、和食やね」

鼻からふわりと抜けていく、優しい出汁の香り。その上質さは、「日本人で良かった」と感じずにいられない感動がある。

茶道のお稽古帰り。親友・ゆりえとランチにやってきたのは、上賀茂にある『京 上賀茂 御料理 秋山』。とにかく予約が取れないことで有名な店だが、ゆりえがどこからか枠を手に入れて凛子を誘ってくれたのだ。

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第8話:優しい婚約者がいても…不完全燃焼で終わった恋は、いつも女を惑わせる

「会社のほうも雄一がずいぶん頼れるようなって肩の荷が下りたわ。凛子にも無事に嫁いでもらって、そしたらお父さんはもう、お母さんと隠居生活を楽しむだけや」

父はそう言って、満足げにお猪口を口に運ぶ。雄一というのは、父とともに二人三脚で和菓子屋を盛り立ててきた実弟の長男である。父の引退後は、この雄一が社長を継ぐ予定で話が進んでいるらしい。

安心したように笑う父の顔を見たら、凛子はやはりそれ以上のことを言う気にはなれなかった。

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第9話:東京の夜は、罪悪感を消す。好意を寄せる男と再会した京おんなの、意外な決心

つい先ほど彼女の東京での自宅・北青山のマンションに荷物を置かせてもらい、ディナーの時間までカフェで一息つこうという話になった。

マダムたちが優雅に歩く北青山を抜けて骨董通りに出ると、平日だというのにひっきりなしに人とすれ違う。細身のデニムで闊歩するおしゃれな女の子、ショッパーをいくつも抱えたモデル風の美女。

しかしここにいる人は誰ひとり、凛子のことを知らない。凛子がいつも以上にはしゃいでいても、何をしていても、誰にとやかく言われることもない。その気軽さに、凛子は病みつきになりそうな心地よさを感じた。

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第10話:恋愛経験ゼロの京おんなを打ちのめした、婚約者の意外な過去

「これ…よかったらお義母さんに」

東京から戻った翌日、凛子は拓真とともにオープンしたばかりの『FRANZE&EVANS LONDON』を訪れていた。夜にJCの会合があるがその前に少しだけ会おう、と拓真に誘われたのだ。

「『ララ・ファティマ』っていう紹介制パティスリーのローズケーキ。予約しないと買えへんらしいんやけど、桜子さんがお土産にって、私の分と拓真さんの分を用意してくれてて」

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第11話:結婚と恋愛は別。京都の名家に生まれた男女が背負う、自由のない結婚

-昔、結婚を考えた女性がいた-

知らなかった。彼に、そんな女性がいたなんて。そしてその事実は、凛子の心に思いがけぬ感情を運んだ。最初は、裏切られたような気持ちになった。そして次にふつふつと湧いてきたのは、対抗心とも似た感覚だった。

「そんなに気になるんやったら、聞いてみたらいいやん」

ゆりえは簡単にそんなことを言うが、拓真本人に尋ねるようなことはしたくない。するとそんな凛子の心などお見通し、とでもいうように、彼女は意味深に言葉を続けるのだった。

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