画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●革新的なブランドを次々開発

ブランドの構築は、企業にとって収益拡大の大きな柱。そして、強いブランドがあるからこそ、企業間競争で優位に立つことができる。ただ、このブランドを大きく揺るがす存在がある。そう、“模倣品”だ。

MTGという企業をご存じだろうか。企業名だけではピンとこない方もいらっしゃるだろうが、同社が手がけている商品を聞けば、「あ! あの商品の開発企業か」と思い当たることと思う。

○多くの人が知る商品

MTGの本社・開発センターは、愛知県名古屋市にある

有名どころを挙げていこう。まず「ReFa」(リファ)というブランドがある。これは、クレンジングや洗顔、化粧水、美容液といったスキンケアの総合ブランドだが、もっとも有名なのは、美容ローラーというもの。ハンドルに2つの球体がついており、それを顔の肌やボディで転がすことにより、引き締める効果がある。

続いて「SIXPAD」。これはトレーニングに効率的な20Hzの周波数を利用したEMS(Electrical Muscle Stimulation)機器で、体を激しく動かさなくても筋肉を刺激し、運動と同じような効果が得られるというもの。SIXPADは、京都大学 名誉教授 森谷敏夫氏の理論をもとに、世界屈指のサッカー選手、クリスティアーノ・ロナウドと共同開発で生まれた製品だ。

このほかにも、口にくわえ、カモメの羽のようなブレードを振ることで顔のフィットネスができる「FACIAL FITNESS PAO」といった製品がある。製品の紹介はここまでにして、同社が直面している問題について触れよう。そう、冒頭で述べた模倣品に悩まされているのだ。

●製品・著作物を守る知的財産権

人間の知的活動から生まれた製品には、知的財産権が生ずる。これは、著作権や特許権、実用新案権、意匠権、商標権など、知的財産の種類によって各法律で守られるというものだ。直近では、マンガを無料で読める「漫画村」や、アニメ動画を無断配信する「AniTube」といったサイトが閉鎖された。これは、著作権に配慮した対処だが、インターネットというブラック・グレーゾーンを併せ持つ特性が生み出した闇だ。

MTG 法務知的財産本部 知的財産部 ブランド保護課 林正克氏

一方、MTGが直面する問題は、製品の「丸コピー」。パッケージから説明書までも模倣するもので、特許権や実用新案権、意匠権といったところで問題となってくる。

MTG 法務知的財産本部 知的財産部 ブランド保護課 林正克氏は、「模倣品には2つのパターンがあり、ひとつはパッケージや製品の形状は違うものの、機能を模倣するタイプ。もう一方は、製品の形状やパッケージ、説明書までをも“丸コピー”するタイプ」だという。後者は特に悪質で、メーカーとしては見逃せないとのことだ。

○模倣品の闇は中国にはびこる

では、こうした丸コピー品がなぜ、そしてどこから出てくるのか。まず出所は中国だ。財務省がまとめた「平成29年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」の資料によると、平成14年頃は韓国製のコピー商品が7割を超えていたが、平成29年には中国製のコピー製品が9割以上を占めている。

なぜ、中国製のコピー製品が多いのか。それは、中国に強いブランドがないからだとMTGの林氏は指摘する。ブランド力がなければグローバルな市場では通用しない。ならば、すでにブランドを確立している製品の丸コピーにすれば、手っ取り早く商売につながるというわけだ。

歴史的な経緯もある。日本企業は人件費が安価な中国にこぞって生産拠点を移した。だが、中国での人件費が高騰すると、生産拠点を日本に戻したりベトナムに移したりといった動きになった。結果、日本企業の進出で技術を学んだが、思うように収入が得られないといった状況が起こる。そうした人たちの一部が、模倣品に手を染めているともいわれている。また、近年は3Dプリンターの普及により、製品をコピーしやすくなっているという背景もある。

ただ、中国にもブランドが育ちつつある。ところが、そのブランドすら自国の闇がコピーする。グローバルで信頼されるブランドを育てるには模倣品は悪でしかなく、中国当局も対策に力を入れている。

●模倣品摘発の流れ

こうした状況にMTGはどう対処しているのか。まずは模倣品生産業者の摘発だ。MTGが、中国の調査会社に模倣品生産業者の洗い出しを依頼し、見つかれば調査会社から中国摘発当局に告発。そして当局が摘発するという流れだ。

また、水際での輸入差し止めにも力を入れている。中国からの輸出時に、同国税関に厳しくチェックしてもらうのが第一段階。ただ、ここでチェックを逃れ、欧米などにわたってしまうと、MTGではどうしようもできない。一方、日本の税関では比較的差し止めできているという。というのも、MTGが税関の職員を対象に正規品と模倣品の違いを伝える講習を行っているからだ。2017年は153件を摘発し、13,000以上の模倣品を差し止めたという。

○正規品と見まがう模倣品

下の写真は正規品と模倣品を並べたもの。パッと見では違いがわからないが、よく見比べてみると細かなところで異なっている。どこが異なっているのかは、業者に対応されてしまうので記事にできないが、もし模倣品単体なら本物と信じ込んでしまうだろう。

また販売店、特にウェブサイトを中心にパトロール。模倣品を扱うサイトを見つけたらページ削除を実行している。2017年には約9,200サイトを削除したという。サイトでMTGの製品を注文したら、中国から発送されてきたということが多々あるらしい。ちなみにMTGは「JAPANブランドを世界に発信」という方針なので、中国から届くことはない。

消費者側にも啓蒙が必要だ。特に近年、高級時計の模倣品、いわゆる「スーパーコピー」を好んで使用するユーザーが増えている。高額な出費になるのなら、ほぼ見た目が変わらないコピーでいいや、という考え方が蔓延し始めている。

腕時計ならまだいい。壊れようが、傷がつこうが、詳しい人に「それニセモノだよ」と指摘されようがそれだけのこと。だが、MTGの製品は人体に作用するものがほとんど。模倣品を使うことによって、健康被害につながる可能性も十分に考えられる。

代表取締役社長の松下剛氏を始め、同社のスタッフは常々こういっているそうだ。「模倣品を絶対に許さない」「徹底的に戦い続ける」と……。ブランドを守るため、企業を守るため、そして消費者を守るため、これからも戦い続けていくことだろう。