アミノテツロー監督に“正々堂々”インタビュー! 伝説のアニメ『疾風!アイアンリーガー』誕生の裏側
君は、伝説のTVアニメ『疾風!アイアンリーガー』を知っているか――。

人間とロボットがともに働く近未来。そこでは、ロボットたちがさまざまなスポーツで競い合う「アイアンリーグ」が開かれていた。が、その実態は、スポーツと言いつつもラフプレーが横行する世界。そんな中、一切のラフプレーを拒否して正々堂々と戦うチームがあった。その名も「シルバーキャッスル」。マグナムエースやマッハウインディら、弱小チーム・シルバーキャッスルの面々が、ラフプレーばかりのアイアンリーグでチャンピオンを目指す戦いに挑む――。

と、観たことのない人にとっては“ロボットがスポーツ?”と思ってしまうかもしれない。いや、弱小チームがフェアプレーに徹して優勝を目指すなんて、ベタの中のベタと言うべきか。だが、そんな『アイアンリーガー』、1993〜1994年の初放映以来25年の歳月が経った今でも、根強いファンがいるという。

そのファンたちのアツい声に応えてか、4月22日からはCSのテレ朝チャンネル2でも再放送が始まったのだ。一体、『アイアンリーガー』の何が人々をとりこにしているというのだろうか。

というわけで、本作の監督を務めたアミノテツロー氏に伺った、『アイアンリーガー』の魅力と制作当時の秘話、そして作品に込めたメッセージを前後編2回に渡ってお届けしよう。



――そもそも、ロボットとスポーツの組み合わせが意外な印象です。こうした設定になったのはなぜなんですか?

アミノ もともとロボットでスポーツをモチーフにして、という企画があったんです。だけど、最初は『アイアンリーガー』とは全く違った。悪と戦う7人の戦士たちが……みたいな感じでした。だけど、悪いヤツを倒すストーリーはいっぱいあるし、さらにスポーツがモチーフになっているのに野球のバットを武器にして戦ったりサッカーボールを蹴って相手が爆発するってどうなの?と。それで「どうせならバリバリのスポーツモノ、スポ根モノにしたらいいんじゃないの?」ということで、『アイアンリーガー』の設定ができたんです。

――で、ストーリーも……

アミノ スポ根ものならひとつしかないじゃないですか。万年最下位の弱小チームが勝ち進んで優勝する。これ以上の王道はないというくらいの王道ですよね(笑)。思い切ってそこに乗っていこうと。主人公たちがいるシルバーキャッスルは、とにかく弱いんです。でも、一切ラフプレーはしない。

アイアンリーグのルールだと、別にラフプレーをしてもいいんです。だけど、彼らはそういうことをせずに戦う。まあ、それで負けてばっかりじゃしょうがないんだけど(笑)、でもそこを乗り越えて勝っていって、周りもだんだん変えていくという物語。過疎地の潰れそうな温泉旅館を立て直すドキュメントみたいな感じ。悪の組織と戦うのもいいんだけど、こういうストーリーも面白いものですよ。



――その王道をゆくストーリーに、キャラクターの可愛らしい造形がまた見事にマッチしています。

アミノ やっぱり恥ずかしいじゃないですか。正々堂々、フェアプレーで王道のストーリーをゆくというのは。生身の人間がこういう芝居をしていると少し恥ずかしい。でも、ロボットの彼らがやることで、どんなことでも言いたいことは言うしやりたいことはやる。人間以上というか、ボクらがやりたいことを実践してくれている、人間の理想の代弁者なんだよね。

――なるほど。そうなると、一見するとロボットのスポーツモノというシンプルな設定だけど、奥が深く感じられてきますね。

アミノ 恥ずかしさと言えば、結構あるんですよ。後半になるとボーシップという船が出てくるんだけど、これがまたヒドい(笑)。野球帽の形のまんまの宇宙船で、そのネーミングだからね。だからマグナムエースが「ボーシップに乗っていこう」と言うセリフがあるんだけど、演じていた声優の松本保典さんが「恥ずかしくて言えない」って言い出して。もう作品も後半だったから、今さら恥ずかしがるなよって思ったけどね(笑)。でも、そういう部分を遠慮せずにやれたのも、あのキャラクターたちがいたからだと思いますね。



――ただ、そうした中でもダーティーな部分も描いていますし、そこが作品に深みを与えている印象です。

アミノ サンライズ作品ですし、最初の設定が悪と戦う物語だったから、その名残もあるんです。そもそも、シリアスとコメディって紙一重なんですよね。『アイアンリーガー』にしても、シリアスな話として観てもいいし、コメディとして観てもいいし、それは観る人の自由。ただ、基本的には子供も見れる楽しい作品として作りたかったですから。その意味では、第1話にポイントがあるんです。



――それはどのシーンですか?

アミノ マグナムエースが登場するシーンです。結構なラフバトルが続いているところにさっそうと現れるんですけど、その時のマグナムエース、笑顔なんです。最初の絵コンテの段階ではそこまで笑顔じゃなかった。でも、作画担当のスタッフが満面の笑顔で描いてきた。ニヒルな感じでカッコよく登場するんじゃなくて、笑顔でハツラツと。これでボクね、いいなと思ったんです。

笑ってる場合じゃないところでも、笑って切り抜ける。スゴイことなんですよ、それは。深刻になって歯を食いしばるのもいいんだけど、やっぱり笑顔がないと。他のスタッフたちも、この最初のマグナムエースの笑顔に引っ張られていった部分もあると思います。



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■番組情報
「疾風!アイアンリーガー」

毎週日曜 よる10:30(2話連続放送)
http://www.tv-asahi.co.jp/ch/contents/anime/0292/
テレ朝チャンネル2