1回の献血によって3人の命が救われると言われていますが、オーストラリアのジェームズ・ハリソンさんはこれまでの献血活動で、のべ240万人以上の赤ちゃんの命を救ってきました。そんな「神の血」を提供してきたハリソンさんが、生涯最後の献血を行いました。

James Harrison - Pioneer of Australia's Anti-D program | Australian Red Cross Blood Service

https://www.donateblood.com.au/learn/anti-d/james-harrison

Final donation for man whose blood helped save 2.4 million babies

https://www.smh.com.au/healthcare/final-donation-for-man-whose-blood-helped-save-2-4-million-babies-20180511-p4zerp.html

ハリソンさんが献血によって240万人以上の赤ちゃんの命を救ってきた様子は、以下のムービーで解説されています。

Son sang a sauvé 2 millions de bébés - YouTube

血液にはABO式の他にRh式があることが知られていますが、極まれにRh(-)型の妊婦がRh(+)型の赤ちゃんを妊娠する「Rh式血液型不適合妊娠」が起こることがあります。



この場合、お母さんの血液に入った赤ちゃんの血液(赤血球)は異物とみなされて「抗D抗体」と呼ばれるたんぱく質が作られます。この抗体ができたお母さんが、次にRh(+)型の赤ちゃんを妊娠すると、赤ちゃんの赤血球が抗D抗体に攻撃されてしまい、貧血や脳障害をもたらしたり、流産を引き起こしてしまうことが知られています。



そこで抗D抗体による攻撃を防ぐためのワクチン「抗D人免疫グロブリン製剤」が1960年代に開発されたのですが、このワクチンを作るための特殊な血液を持ったドナー1号がハリソンさんで、これまでワクチン製造のために血液を提供し続けてきました。



1000回以上の献血によってワクチン製造に必要な血漿(けっしょう)を提供することで、ハリソンさんは240万人以上の赤ちゃんの命を救うことになったというわけです。ハリソンさんには「黄金の腕を持つ男」の異名がつけられ、1999年にオーストラリア政府から勲章を授与されています。



ハリソンさんはほぼ毎週500〜800mlの献血を行ってきました。これまでに行われた献血は、右腕からが1162回、左腕からが10回だとのこと。そして、81歳のハリソンさんは1173回目にあたる生涯最後の献血をタウンホールドナーセンターで行いました。ドナーとなる年齢制限をすでに超えていたハリソンさんの健康を守るため、医療機関が今回の献血が最後という判断を行ったそうです。

最後の献血には、ハリソンさん由来のワクチンによって命を救われた赤ちゃんの母親たちが駆けつけたとのこと。



黄金の腕を持つ男の引退によって、今後、オーストラリアでは160人のドナー登録者が提供する血液によってワクチンが作られる予定です。