「違法サイトへの効率的な攻撃は広告主を攻めること」漫画村等、海賊版サイトへの対処法について小飼弾氏がコメント
政府が、コンテンツを違法掲載している「漫画村」などの海賊版サイトを名指しで対象にした「サイトブロッキング」が話題になってます。
これを受けて、4月23日の『小飼弾の論弾』で、プログラマーの小飼弾氏と、編集者である山路達也氏が、コンテンツの提供者だけではなく、「サイトの利用者も逮捕される可能性がある」と、海賊版サイトの危険性について解説しました。
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「マンガ」が禁止された近未来!? SF漫画『CICADA』作品に込めた想いを原作者語る今の法律でも海賊版サイトの利用者は逮捕できる 左から小飼弾氏、山路達也氏。
山路:
漫画村の話題なんですけど。
小飼:
村が焼かれて、街になったみたいな(笑)。
山路:
この問題、実はいろいろな方向への難しさがありますよね。そもそも、漫画のデータとかを勝手に掲載して、無料で誰でもダウンロード出来るようにしてて、それで漫画家とか出版社とかが被害を受けた、みたいな。
小飼:
いきなりブロッキングにいったというのは、なんでだろうね? といって、ブロックするサイトの業者のリストを管理する、天下り団体を作るためなんじゃないかというのが、かなり信憑性を帯びてきたんですけども。
それはともかくとして、今の著作権法でも、漫画村でタダで読んでいる子供を逮捕するというのは、可能なんですよ。
山路:
今の法律を適用するだけで?
小飼:
はい。だから学校とかに教師のフリをした捜査員を入れて、休み時間とかにスマホで読んでいる子供がいたら、現行犯逮捕できちゃうんですよ。
山路:
恐ろしいけど、それをやったらやったでまあ(笑)。
小飼:
実際Spotify【※】とかが、出てくる前のアメリカというのはそれをやったんですよ。
※Spotify
スポティファイ。2016年に登場した音楽ストリーミング配信サービス。
山路:
音楽データの違法ダウンロードを取り締まったと。
小飼:
そうそう。実際に6歳位の女の子に、15万ドルとか16万ドルだかの請求を送りつけたというのがあったんですよ。
山路:
結局、音楽ダウンロードは、AppleのiTunesストアなんかが出来て、合法的なサービスが充実していきました。
小飼:
そう。合法が一番楽で楽しくて、問題がないというのに気がついて、発展的解消をしたわけですけれども、漫画村騒動の場合、権利者のみなさんは、サイトブロッキング前の段階として、やれることはやったんですか?
山路:
編集者をやっている私が気になったのは、講談社がこの海賊版サイトについての緊急声明というのを出しているんですけれど、ここで違法サイトの運営者というのは、莫大な収益を得ています。被害は“数兆円”規模だと試算しているという。
小飼:
いや、だから、そういうことを言うからね!
山路:
出版業界の規模って、そんなに大きいですか(笑)?
小飼:
確かにこういった損害賠償を請求する時には、JASRACにしてもアメリカの場合は、RIAA(アメリカレコード協会)という団体にしても、盛るは盛るんですけれど、いくらなんでも盛りすぎだろう。
山路:
出版業界の規模というのが、だいたい年間の売上の1兆円ないくらいですよね。
小飼:
そうですね。うち、漫画が4千億円くらいですかね?
山路:
流石に数兆円規模の被害というのは盛りすぎだろうとは思いましたけどね。じゃあ、これをどういう風に漫画村に対抗すべきだったかといったら。
小飼:
一番いいのは、SpotifyやAppleミュージック、映画などであればNetflixやHuluなど、要はコンテンツプロバイダーをまたいだ、使い放題ポータルサイトが出来るというのが理想なんですね。
山路:
今、音楽データのダウンロードに関しては、色々フォーマットなんかも共通のものになったり、そういう動きがあったりしますよね? そういう出版なんかでも同じように、きちんと、どの出版社のものでも読めて、しかも収益が配分されるみたいな。
小飼:
そうそう。
山路:
そこのところが、なかなか効率化されないというのが、ビジネスモデルの限界なんでしょうか?
小飼:
最初、Amazonの読み放題サービス『Kindle Unlimited』は、話を聞いた時に、もしかして来るかと思ったんだけど、なんかAmazonがビビっちゃいましたね。
山路:
アメリカのKindle Unlimitedは、もっと上手く行っているんですかね? 日本では、最初Kindle Unlimitedをやる時に、美味しい条件をぶら下げて、出版社からコンテンツを一挙に集めようとしたみたいですけど。
小飼:
それが美味しすぎて、Amazon側の持ち出しが増え、Amazon自身がドン引きしたという。あれ、どう考えても導入の仕方が、まずかったと思うんだよね。Kindle Unlimitedが本来できたはずのことをやらなかったおかげで、漫画村が出てきたというのはあると思いますよ。
山路:
あと漫画村のことでいうと、広告主への電凸をした記事が出てましたね。弾さんも、広告を出しているヤツに圧力をかけろと言ってましたが。
小飼:
実はそれが一番効くんですよ。こういうのも何ですけれども、無料で手に入れられるコンテンツというのは、今のところ、広告で食っているので、そこを押さえてしまうというのが一番効くんですよね。
山路:
最近、アドテク(広告関係のテクノロジー)の取材をしたことがあります。「基礎知識として押さえておいてください」と渡された資料には、膨大な事業者が参加するネット広告の相関図が描かれていました。はたしてこの全体像を理解した上で、広告主は広告を出しているんでしょうか?
小飼:
このページに、この広告が表れたというのは、たしかに見れるわけですよね? どんなアドネットワークを通ったかなんていうのは、知ったこっちゃないけれども、最終的に、広告が何を広告してるのかというのは、わかるわけですよ。
ただでさえ、広告というのは、ウザいものが多いわけです。PCやMacのウェブブラウザから見ていた時代もそうだったけれども、スマホのやつというのは、それに輪をかけてウザいでしょう? 画面上に強制的に出てくるでしょう?
山路:
絶対に間違って押しちゃうというヤツですよね。なんか変なエロサイトに飛ばされちゃうみたいな。アプリのダウンロードとか。
小飼:
あれは、そろそろ流石に、みなさんもいい加減にしろと思わない(笑)?
山路:
広告主に圧力をかける。それは規制という形にせざるを得ないんでしょうか? それって、広告業界への法規制みたいなことっていう手段になるんですか?
小飼:
一番いいのは広告主に対して、広告しているものの不買運動をやることですよね。資本主義社会では、それが一番効く。
山路:
面白いなと思ったのが、Googleが始めた取り組みです。広告ブロッキングのツールが広がると、コンテンツの運営者に収益が入らないことが問題になってきていますが、Googleは広告ブロックによって減ってしまった広告収入分を運営者に還元するサービスを始めたんですね。つまり単純な広告モデルはもう成り立たないとGoogleは考えているんじゃないでしょうか?
小飼:
もうAppleとか、あからさまに広告を敵視しているしね。確かにAppleは広告をブロックすればブロックするほど、ユーザーも喜び、トラフィックも減るということですけれども、じゃあGoogleとかFacebookが潰れてもいいの? というと、それは流石にちょっと行き過ぎだと思う。
山路:
Appleの顧客層は有料サービスへの金払いがいいという話ですから、広告を敵視することもできるんでしょう。
小飼:
あともうひとつ、広告主を弁護するわけではないんですけども、わざわざ「見に行きたい広告」というのもあるんですよね。カップヌードルのTwitterの広告とかっていうのは、あれ見てて面白いと思いますもん。
山路:
確かにね。アニメでリメイクなんかを作ったり。
小飼:
そうそう。だから、広告が全部ダメなものだとは思わないけども、下からスーッとポップアップしてくるというのは、もうあれはふざけんなでしょう。あれはもう本当に死んで欲しい。
山路:
そういうふうにGoogleなんかも動き始めたとか、あるいはFacebookなんかに対する圧力というのは、結構そういうふうに世の中が変わろうとしてるのかな、という気もありますよね。
小飼:
広告に甘え過ぎたというのは、ひとつ確かだなことだと思う。
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