ハリウッドで表面化したセクハラ問題をきっかけに、SNSなどで性暴力被害者に連帯する「#metoo」運動が拡大。そして、あらゆるハラスメントの根絶、マイノリーティーの安全、平等を求めるセクハラ撲滅運動「TIME'S UP」も注目されるようになりました。そこで目を向けたいのは、一般人である女性が受けたセクハラ、パワハラについて。彼女たちが、様々なハラスメントにどう向き合ったのかを本連載では紹介していきます。

お話を伺った裕子さん(40歳・仮名)は、「現場が業務改善しようと上に提言すると、こちらが逆にツブされますよね」と言います。裕子さんの第一印象は、笑顔がかわいらしく明るく朗らか。パワハラらセクハラとは無縁のようにも感じます。

「前の会社では、女性社員からは“KY”と言われていたみたいです。男性からは“いつも楽しそうでいいね”とか“いつも明るいね”などと話しかけられることが多かったですね。悩みがないように思われてしまうと、“あいつには何を言ってもいい”という雰囲気ができてしまう。これってパワハラの対象になるんですよね。私は短大卒業後5年間、アパレルメーカーに勤務していたのですが、いつもヘラヘラしていたので、上の人から無理な数字を押し付けられたり、人員や在庫を回してもらえなかったりして、辛い思いをしました」

店長として現場のお店で働くうちに、アパレル業界のみならず、社会は男性中心の搾取構造だと痛感する。

「私達が手取り15万円くらいの給料で12時間立ちっぱなし労働の末に、必死で立てた売り上げで、役員は高級キャバに行ったり、ハワイでゴルフしたり贅沢三昧。それに、女の子の販売員を競わせて、結果が出ない子はクビにして、売れている子には雀の涙ほどの報奨金を与えて、売れなくなったら解雇する。アパレルは特にその傾向が顕著です。今、女性の間で戦前の遊郭巡りや娼婦の歴史を学ぶことがブームになっていますが、あれって絶対に自分自身を重ねていると思う。働いても、全然豊かにならない姿は、ボロ雑巾のようになるまで働かされて捨てられた遊女と同じ」

25歳のときに、40代の既婚の上司から一方的に片思いをされて……

上司からの一方的な好意が、退社の原因になった。

「私はクセでついボディータッチをしてしまうんですよ。それに対して“あいつは俺のことが好きかも”って勝手にカン違いされたんですよね。2人での食事を断ると、仕事上でも嫌がらせを受けて、バカバカしいからサッサと辞めました。その上司は女性が好きで、様々な武勇伝や自己流すぎる恋愛のテクニックがあるんです。例えば、会社の飲み会で後輩男子に向かい“女は強引に行けば絶対に落ちる”とか、“店員さんにお願いして、酒を強めにしてもらい、ガンガン飲ませればすぐに持ち帰れる”など堂々と語っていましたね」

あと、この上司は性産業も大好きだった。

「名古屋店や博多店の立ち上げの時に、会社の経費でその手のお店に行くんですよ。会社も店のサービス内容をわかっているのに、経費として落としてしまうんですよ。私達の交通費は厳密にチェックするくせにね」

新入社員や後輩の男性社員を、性産業のお店に連れていくのも、裕子さんは何らかのハラスメントではないかと考えている。

「今思えば、上司と性産業のお店に行くって、精神的な暴力じゃないかなって思うんです。上司は“連れて行ってあげれば、絶対に喜ぶ”という信念が揺らがない。みんなが自分と同じだと思い込んでいるんです。一度、新人の男性社員から“僕、プロの方というか、女性が苦手なので苦痛です。でも断ると好きな仕事ができないし”と相談を受けました。

会社をすぐに辞めたのは恐怖があったからです。というのも、この上司は、飲み会で私のグラスにこっそりとクスリを入れていたんですよ。後輩が教えてくれたから無事でしたが、あれを飲んでいたら、酩酊した上でホテルに連れ込まれ、とんでもないことになっていたでしょうね。それなのに、こういう奴は“合意の上だった”と、しれっと言うんですよ。男ってそんな人ばかりだと思います。特にエリートと言われる人はその傾向が強いと、この会社で思いました」

25歳のときに転職したのは、IT関連会社。待遇は契約社員だったけれど、念願のデスクワークだったことで、選んだという。

「スタートアップベンチャーでの秘書業務はやりがいがありました。最初のメンバーは10人に満たないくらいで、上層部はほぼ理系のエリートです。でもここに様々なメンバーは入るようになってから、おかしくなっていったんですよね」

転職してデスクワークになった時に、解放感と前の会社の人に対する優越感が生まれたという。

自分を嫌う役員から「偏差値45」とあだ名をつけられ、劣等感で壊れていく自信……〜その2〜に続きます。