わなで捕獲されたカミツキガメ。前夜の低温にもかかわらず、捕獲数は11匹に上った(11日、千葉県佐倉市で)

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 特定外来生物のカミツキガメが各地の川や農業用水路などで繁殖し、問題となっている。水田のあぜに穴を開けたり、農家がトラクターで巻き込んでしまうなどの被害が出ているからだ。かまれればけがをする恐れもある。大量繁殖している千葉県は、11日まで佐倉市で捕獲を行い、対策を強化。愛知県瀬戸市でも今月2匹が見つかり、注意喚起のちらしを配布するなど警戒を強めている。

水路にわな まず11匹 増殖地・千葉県佐倉市


 佐倉市は10日、捕獲作戦を開始した。県職員らが同市飯重の農業用水路約550メートルに、わな15基を設置。わなは一般的な漁具「もんどりわな」を改良したもので、サバの頭を餌に水路に沈めた。

 11日、農業用水路に仕掛けたわなを引き上げ11匹の捕獲を確認。生息密度の高さをうかがわせた。雌3匹、雄7匹、不明1匹、甲羅の長さは20センチ前後だった。5〜9月は活動が活発となり、わな捕獲の適期となる。産卵期は5、6月だ。捕獲を担う県専門職員の今津健志さん(34)は「成熟した雌を産卵の前に捕獲できたのは大きな成果だ」と話す。

 同県では佐倉市、印西市などの印旛沼水系を中心に繁殖。かまれればけがをする恐れもあり、水田のあぜに穴を開けたり、田起こし時の巻き込みで耕うん爪が傷んだりといった農業被害も出ている。沼の周辺や河川で捕獲するが、昨年度から農業用水路も対象に加えた。

 2015年度の推定では、県内の生息数は約1万6000匹。根絶に向け、毎年度2500匹以上、うち雌1250匹以上を目標にする。17年度の捕獲数は合計1429匹(うち雌463匹)と、目標を大きく下回った。委託先業者の確保が遅れ、捕獲が見込める6月に十分な作業を組めなかったためだ。

 今年度は「戦略集中実施期」と位置付ける3カ年の2年目。わなの数を昨年の400基から1100基に増強し、捕獲エリア、回数ともに増やす。

 捕獲事業を担当する県自然保護課生物多様性センターの小野知樹主幹は「今年はタイミング良く、これだけのわなを使えば計算上は目標に届く」と期待。地元農家と連携して小型わななども試していく。

各地で生息拡大 愛知でも・・・ 繁殖の恐れ


 静岡県などでも定着が確認され、住民が対策を取るカミツキガメだが、愛知県にも広がっている。

 同県瀬戸市は9日、5月上旬に同市でカミツキガメとみられる亀2匹を捕獲したと発表した。発見場所は市内の民家庭先と農業用水路で、いずれも矢田川付近にある。市内での捕獲は3年連続。多くが幼体の状態で、同じ川の周辺で見つかっているため、市は「定着、繁殖している可能性がある」とみる。甲羅の長さ約10センチの幼体と、約30センチの成体。11日に、愛知学泉大学に個体を引き渡し調査する。

 市は、小・中学校や保育園にちらしや注意喚起の文書を配布する計画。注意を呼び掛ける看板も設置している。市は「発見したら手を出さず、市役所まで連絡を」と促す。

 カミツキガメは北米から南米にかけて分布。さまざまな生物を捕食する広食性で、魚類や両生類などに大きな影響を及ぼす恐れもある。05年に特定外来生物に指定された。環境省は日本での生息数については「把握していない」という。