あなたはご存知だろうか。

日本国内最難関・東京大学に入学を果たした「東大女子」の生き様を。

東京大学の卒業生は毎年約3,000人。

しかしそのうち「東大女子」が占める割合は2割にも満たず、その希少性ゆえ彼女たちの実態はベールに包まれている。

偏差値70オーバーを誇る才女たちは卒業後、どのような人生を歩んでいるのか。

これまでには隠れにゃんにゃんOLや向上心の塊のような才色兼備が登場。さて、今週は?




<今週の東大女子>

氏名:佐久間沙良
年齢:28歳
職業:無職
学部:文学部仏文学科
住居:汐留のタワマン
ステータス:複数の“パパ”と交際中

『マリアージュフレール 銀座本店』に現れた佐久間沙良は、明らかに異質な空気を纏っていた。

すらりと華奢な手足、背中まである艶やかな黒髪。透き通るほど白い肌に、黒目がちの大きな瞳が印象的だ。

しかし完璧なまでに整ったその顔は、どこか人工的なものを感じさせる。

…それもそのはずだ。

「整形は、毎年少しずつ色々な箇所をしているので...どこをどうと具体的に言い始めたらキリがないですね」

両手で大切そうにティーカップを包み込みながら、沙良はゆったりと微笑む。そして彼女のこれまでについて静かに語り始めた。

「もうかれこれ5年前になるでしょうか…卒業後はほんの一瞬でしたけど、会社勤めをしたこともあるんですよ。

4年生になっても一向に就職活動を始める気配の無い私を父が心配して、とある出版社にコネ入社させてくれたんです。…あ、父は物書きなんですけどね」

そう言って彼女は、ある大物作家の名前を挙げた。

「でも入社して1年もしないうちに辞めてしまいました。

仕事というのを始めて1日目に悟ったんですが...私、“労働”というものに向いてないんですよ」

可憐な笑みを浮かべながら、彼女はそうきっぱりと口にした。


"労働に向いていない"と言い切る彼女は、どんな東大女子だったのか?


浮世離れした東大女子


「学生時代は、ほとんど図書館に籠っていましたね。

父の影響で小さい頃から幅広く何でも読む方でしたが、大学に入ってからは更にその幅が広がりました。

特に衝撃を受けたのは、フランスの詩人ボードレールの詩集です。2年生の頃、フランス語の講義で知ったのがきっかけで。

3年生からは仏文科に進み、卒業論文もボードレールの代表作『悪の華』をテーマに書いたんですよ」

沙良はどうやら、かなり真面目な東大女子だったようだ。

...しかしながらボードレールの、頽廃的でありながら気品溢れる魅力を嬉々として語る沙良は、どうにも浮世離れしている。

なるほど、彼女自身が言うように沙良と“労働”はまったく結びつかない。

とはいえ現実問題、生活はどうしているのか...?

「出版社を辞めてから仕事はしていませんが、特に困ってはいません。

両親が所有しているマンションに住んでいるし、あと...お付き合いしている方からお小遣いもいただいているので」

静かな口調で彼女は続ける。

「作家である父の関係で、学生の頃から様々な方にお会いする機会がありました。

評論家や政治家、経営者の方など、彼らの目から見える世界についてお話を伺うのはとても面白いですね。

その頃から、何人かの方とお付き合いしていました」

華奢な身体と28歳という年齢からは想像も出来ないその落ち着きは、それらの経験から育まれたものなのだろう。

「とはいえ多忙な方ばかりですし皆さまご家庭もあるので...それぞれと月に1、2度お食事に行く程度。

それ以外は学生の頃と変わらず、一日中本を読んで、こうして天気の良い日はたまに散歩に出たりして過ごしています」




現実社会は、私には向かない。


「何かを生み出すとか人の役に立ってお金を稼ぐ、ということに意味も興味も感じられなくて。

会社勤めをしていた頃は、自分の存在意義をそういうもので定義されているように感じて、本当に窮屈でした。

今でも時々その頃のことを思い出そうとするんですが…いつもモヤモヤと夢みたいで。何をしていたのかすらあまり覚えていません」

沙良はそう言って、困惑したような目を向けるのだった。


高尚に文学を語っても、現実問題「無職」で「愛人枠」。そんな彼女が見せた心のうち...


「今の生活は本当に幸せです。気が済むまで本に没頭出来て。

読みたい本は無限にあるし、フランス文学だけ取り上げてもその思想はどこまでも深淵です。

ルネサンス・ユマニスム、近代合理思想、啓蒙思想、フランス革命思想など…現代を形作ってきたのは、何百年も前に生まれた思想の変遷の結果です。

一方で今私がお付き合いしているのは、対照的に“現代社会”の一線で活躍されている方ばかり。

思想と現実、その両面を伺い見られるのも面白いですね」

高尚に文学を語る沙良の口ぶりは、自信に溢れている。

...彼女の肩書は、“無職”の"愛人枠"だというのに。

しかしここで、終始穏やかに一点を見つめていた彼女の目が、ほんの少しだけ泳いだ。




「でもたまに…じゃあ一体自分は何なんだろうって思うこともあります」

とっくに冷めてしまった紅茶のカップを置くと、ぽつりと続ける。

「学部を卒業するとき大学院に進まず社会に出ようと思ったのは、研究を続けることを"虚しい”と感じたからです。

いくら過去を振り返って偉大な哲学者の思想を辿ったところで、現実を動かしているのは今を生きる者たち。

そして過去の思想だって、その時点での現実を生きる者が作り上げた価値観でしょう?

だから本当の意味で文学思想を理解するためにも、一度は社会に出なければ、と思ったんです」

...そう語る東大女子・沙良はもちろん、自らの矛盾に気がついている。

窓から差し込む初夏の日差しに目を細めながら、沙良は力なく遠くを見つめた。

「...私は結局ずっと、現実も思想も真には理解できないままなのかもしれません」

熱を感じさせない、人工的な微笑を浮かべる沙良は、消え入りそうな声で小さく呟いた。

▶NEXT:5月17日 木曜更新予定
“東大卒”を逆手に取る女医が登場。「東大女子が何より苦手」という彼女の本心は?