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■酒税法改正でビールの定義変更 業界勢力図はどうなるか

2018年4月から酒税法が改正され、ビールの定義が変更される。これまで制限されていた果実や香辛料などを副原料として使えるようになり、より幅広いフレーバーのビールを開発、販売できるようになった。

さっそく各社が柑橘類などを使った新商品の投入を予定している。だがこの定義変更自体は、さほどビール業界にインパクトを与えるものではないと私は見ている。若者の間で広がる“ビール離れ”をやや食い止めることができるかも、という程度の期待感でしかない。

それほどいまの20〜30代はビールを飲まない。そもそも飲酒量自体が50代男性の半分程度と見られているが、特にビールは好まれていない。国内ビール市場は1994年のピーク以降、足元の年率1〜2%で縮小し、酒類全体も下落傾向だが、それを相当に上回るペースで減少している。

今後、中高年が老年期に入って飲酒量が減り、逆に現在の若者が40〜50代になる頃には、ますますビールは飲まれなくなっているだろう。この動き自体はもう止めようがないところまで来ている。

■なぜ「輸入のアサヒ」より「クラフトのキリン」なのか

ビール離れの大きな要因は固定された商品のマンネリ化だ。そこで各社、クラフトビールを造るなどして多様化を図っているのが現状だ。今回の定義変更は、その動きに拍車をかけ、若者向けに様々な味わいのビールを出していく、その流れを後押しするものにはなるだろう。

この流れであえて優位に立つ会社を挙げるならキリンではないか。クラフトビールも「グランドキリン」など他社の一歩先を行く商品開発を進めていた。

対するアサヒビールは収益性では世界最高水準の優良企業。アサヒは一昨年から欧州のビール会社を相次いで買収しており、輸入ビールに活路を見出そうとしている。クラフトのキリン対輸入のアサヒという構図になっていくのではないか。

(野村証券 アナリスト 藤原 悟史 構成=衣谷 康 写真=iStock.com)