日本では違法にマンガをアップロードする「漫画村」による著作権侵害が問題になり、ISPによる強制的なサイトブロッキングの是非が議論になりましたが、同様の違法な海賊版サイトは世界的に猛威をふるっています。デンマークの調査では、海賊版サイトへのアクセスが1年で67%も増加するなど急増しており、DNSによるブロッキングなどの対策が行われていますが、対応は後手に回っている現状が浮き彫りになっています。

Status og temperatur på det ulovlige marked

(PDFファイル)http://rettighedsalliancen.dk/wp-content/uploads/2018/04/RettighedsAlliancens-datarapport-2017.pdf

Danish Traffic to Pirate Sites Increases 67% in Just a Year

https://torrentfreak.com/danish-traffic-to-pirate-sites-increases-67-in-just-a-year-180501/

海賊版による著作権侵害を糾弾している「Rights Alliance」が、デンマークを対象にした著作権侵害サイト(海賊版サイト)の実態調査をレポート「Rights Alliance Data Report 2017」で発表しました。

SimilarWebとMarkMonitorによるデータから、デンマークからアクセスがあった海賊版サイトは主要なものだけで2000種類あり、総アクセス数は5億9600万回で、前年の2016年比で67%増という結果になったとのこと。なお、海賊版サイトへの1度のアクセスで複数のコンテンツをダウンロードできることから、著作権侵害行為はアクセス数をはるかに上回る規模で行われていると予想されています。



特に人気の高い海賊版サイトの「123Movies」(別名「GoMovies」「GoStream」)は、2016年に4000万回だったアクセス数が2017年には1億7500万回と約4.4倍に爆増。アクセスのほとんどがモバイル端末からのものでした。

123Moviesはすでに閉鎖しましたが、デンマークでは悪質なサイトに対してはサイトブロッキング処置がとられています。以下のグラフは123Moviesのアクセス数の推移を示したもの。サイトがブロックされるとアクセス数は急減します。ただし、サイトがブロックされるとまた別の経路が作り出されるというイタチごっこが続いている様子が確認できます。



Rights Allianceによると、ブロッキングによって海賊版サイトへのアクセスの約76%を抑制できるとのこと。ただ、海賊版サイトへのトラフィックは膨大な量で、主要な一部サイトのブロッキングが最優先に行われ、すべての違法サイトへのアクセスを遮断することは事実上不可能だそうです。



また、回線を秘匿化するために利用されるVPNに注目が集り、海賊版サイトの閲覧にVPNが利用されるケースも増えており、アクセス制限を困難にしているという事情があります。加えて、BitTorrentなどのクローズドなネットワークだけでなく、近年ではFacebookなどのSNSプラットフォーム上のプライベート・コミュニティ経由で著作権を侵害する違法なコンテンツのやり取りが急拡大しているとのこと。このようなプラットフォームのコンテンツ内で行われているやりとりを外部から正確に把握することは難しく、対応は困難になっています。

また、専用アプリを利用した、スポーツのライブストリーミングをリッピングした違法コンテンツの利用も増えており、テニス、サッカー、ツールドフランスなどのメジャーイベント期間中にアクセスが増える傾向が確認されています。



Rights Allianceによると、ユーザーが海賊版サイトにアクセスする方法はGoogleなどの検索エンジン経由ではなく、違法サイトへの直接アクセスが大半を占めるとのこと。「海賊版サイトへのアクセスを防ぐには、もはやISPやコンテンツを保有する民間企業だけで対処できるものではない」とRights Allianceのマリア・フレデンスランCEOは述べています。