「テロリスト」長者番付 最大の資金源はどこだ?

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世界中で絶えず発生し続けている凶悪なテロ事件。そのテロの財源はいったい何で、どこからくるのか。フォーブス イスラエルがその背景を分析した。

それは土曜日の正午のことだった。カフェやホテル、レストラン、政府施設が建ち並ぶソマリアの首都モガディシオの広場には、何千人もの人々が繰り出していた。その通りを、何百kgもの爆発物を満載した2台のトラックが走り抜け、テロ対策のバリケードの1つを突き破った。

トラック2台は、治安部隊と短いカーチェイスを繰り広げたとの証言もある。そして、群衆のど真ん中で、街路全体を破壊するような大爆発を起こした。何十台もの車が炎上し、崩落した建物が人々を押しつぶした。

犠牲者や負傷者を収容できるようになるまでに数日、被害状況が判明するには何週間もかかった。このたった1件のテロによる死者は500人を超え、過去10年間で犠牲者が最も多い、現代史上ワースト3に入るテロ事件となった。犯行声明は出ていないが、専門家の多くはイスラム過激派の武装組織「アルシャバブ」の犯行だと見ている。

それからひと月もたたないうちに、今度はエジプトでテロ事件が発生した。ジープや武装車両に分乗した数十人のテロリストが、シナイ半島北部の小村にあるモスクを襲ったのだ。

男たちは車両で出口を塞ぐと、金曜日の朝の礼拝中だった人々に無差別に発砲した。シナイ半島を拠点とするイスラム国(IS)の一分派による綿密に計画された攻撃だったと見られている。

犠牲者の数は300人を超え、100人以上が負傷。エジプト国内で起きたテロとしてはかつてない規模で、モガディシオの事案と同様、史上ワースト10に数えられるテロ事件となった。

2017年は際だって血塗られた年だった。8件の大規模なテロ事件が起こり、そのすべてで100人を超える犠牲者が出た。うち6件はタリバン、IS、アルカイダのいずれかによるもので、シリア、リビア、アフガニスタン、エジプト、ソマリアで、合わせて1500人近い人の命が奪われた。


2017年11月24日、エジプト東部、シナイ半島のビル・アル・アベドの町のモスクが金曜礼拝中に襲われ、300人以上が死亡した。

経済平和研究所(IEP)によれば、15年に起こった世界のテロの犠牲者の約74%が、これら3組織に殺害されたという。

私たちは米国のメリーランド大学による「グローバル・テロリズム・データベース(GTD)」をもとに、独自のランキングを作成した。データは、上記3組織が世界の「殺人産業」をいかに牛耳っているかを立証している。たとえば16年には1万3488件のテロ攻撃の記録があるが、実行組織が判明している事案の半数以上は、ISかタリバンかアルカイダ(またはそれらの分派)によるものだった。

テロによる死者は16年だけで3万4,700人前後に上り、ISの犠牲者はそのうち1万1623人で、全体の約34%を占めた。2位のタリバンも同年、犠牲者総数の約7分の1に当たる5000人を殺害した。


2017年10月14日、ソマリアの首都モガディシオで発生したテロでは500人以上が死亡し多数の負傷者を出した。

世界最悪のテロ組織は、同時に最も裕福な組織だ。そして、これは偶然ではない。

イスラエルのシンクタンク「政治戦略研究所」の会長でイスラエル国防省政治安全保障局の元局長だったアモス・ギラド少将(予備役)は、フォーブス イスラエルにこう語っている。

「テロ組織にとって財政部門は極めて重要で、車にとってのガソリン同様、欠かせないものなのです」

実際、テロ組織の運営には金がかかる。作戦の実行、工作員へのサラリー、トレーニングキャンプの維持、武器や爆発物、車両や装備などの買い入れと整備のための金だ。コストは巨大で、どれほどの資金が必要かは組織によって異なっている。

たとえばヒズボラやハマスなどは”普通の”テロ組織よりも多くの資金を必要とする。テロ組織自体が、社会的、宗教的、政治的、経済的なシステムを抱えており、権威を示し、影響下にある人々のニーズに応えなければならないためだ。

住宅や学校、病院、福祉施設の建設や維持に多額の資金を必要とし、中央銀行や司法機関、交通機関、警察といった機関の維持・管理にも資金がかかる。資金調達の手段(税収や天然資源を産する土地など)が多様化し、収入が増大する一方で、支出も平均的なテロ組織とはかけ離れたものとなる。

たとえ支出が多くとも、多くの収入源を手にした裕福なテロ組織は優位に立ち、影響力や勢力を伸ばしていく。17年初めに国連安全保障理事会が発表した報告書によれば、当時のISは戦闘員に潤沢に報酬を払い、戦闘員の募集にも巨額の資金を使っていた。とくに「実戦経験を有する」テロリストの勧誘に大金を注ぎ込んでいたのだ。

ISはつい最近まで世界で最も裕福なテロ組織だった。膨大な年間収入を背景に、他のテロ組織の倍のサラリーを支払っていた。アルシャバブの戦闘員の月給は平均30ドル(約3200円)ほどだが、ISではそれより33%高い40ドル前後で、家族持ちはその倍の80ドル前後を支給されていた。

もちろんそれはISが財政危機に見舞われる前の話だ。その後の資金難で戦闘員のサラリーの減額や遅配を余儀なくされ、生活のために副業を探す戦闘員も出ており、今後は多くのムスリム国家の支持を失うことになるかもしれない。ISに忠誠を誓った分派も、アルカイダのような「競合する組織に鞍替え」するだろうと見る向きもある。

影響力を増すイランからのマネー

データからは、テロ組織の資金力と活動能力との明確な関係も知ることができる。ナイジェリアを拠点とするイスラム系のテロ組織「ボコ・ハラム」は、ここ10年間で約2万人を殺害したが、その約3分の1にあたる7,000人以上は14年単年の犠牲者だ。その後の資金不足で彼らのテロ活動件数は激減し、犠牲者数も減ったのだ。GTDのデータよれば、16年にボコ・ハラムが実行できたテロは14年の約56%で、犠牲者数は約80%まで減少した。

それもそのはず。国連安保理に提出された報告書によれば、財政が逼迫したボコ・ハラムの戦闘員は餓死寸前まで追い込まれていた。部隊から離脱したり脱走したりした戦闘員さえいた。

テロ組織にとって資金は、それほど必要不可欠なもの。だが、資金調達手段は限られており、薬物や武器、たばこ、人身の売買、銀行強盗、”保護”に対する「みかじめ料」の徴収、身代金目的の誘拐などで、犯罪組織のそれとよく似ている。

ただし、それらとは別におおっぴらに大金が寄付される場合もある。資金提供者になるのは、慈善団体や企業、金融機関、裕福なビジネスマンで、近年は資金力のある政府や国家も含まれている。

「成功するテロ組織の背後には必ず財政システムがあり、多くの場合それは国家である」

イスラエル国防軍情報部のトップであるヘルツィ・ハレビ少将は、17年にある会議で語っている。「我々の地域では、イランがテロ組織への主要な資金提供者となっています」

実際、3年前に私たちが作成した裕福なテロ組織の推定収入との比較では、国家の支援を受けるテロ組織(ヒズボラやハマス、イスラム聖戦)の台頭と、独立した資金源に頼るテロ組織(ISやボコ・ハラム)が弱体化する傾向が顕著に見られた。

米国国務省がスーダン、シリアと並ぶテロ支援国家に指定するイランは、多くのテロ組織の主要なスポンサーとなっている。中東のテロ組織の経済力や軍事力のバランスはいま、イランに左右される度合いが非常に大きくなっているのだ。

この状態は、イランが近年の財政的な泥沼状態から救い出されたことで可能になった。

「核合意に調印し、制裁が解除されたことで、イランの首にかかったロープが解けたのです」

前出のアモス・ギラド少将はそう断言する。「米国はイランを経済的絞殺から救ったのですよ」

さらに、中東の他の国々、とくにペルシャ湾岸諸国も、中東でのテロ活動の財政的支柱の1つとなっている。彼らは自国の民間団体の財政的不法行為に目をつぶる形で間接的に関与したり、拉致された市民の身代金を支払ったりしてきた。

17年には、イラクを訪れたカタール王家の26人が、イランの支援を受けた地元のシーア派民兵に誘拐される事件が起こった。この時カタールは、人質解放のためにとてつもない額の身代金を支払うよう「強いられた」。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、その額は10億ドル前後に上ったという。

この時、シリアとイラク(そしてイラン)のテロ組織に流れた空前の身代金は、カタールによる直接的なテロ支援と見なされ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、バーレーンなどがカタールと断交する事態を招いた。

またテロ組織は、テクノロジーを駆使して、資金を得たり移転したりする方法を常に探っている。ウォールストリート・ジャーナル紙の最近の報道によれば、「イーベイ」や「ペイパル」の偽アカウントを使って米国内の工作員に資金を送っていたISの国際的ネットワークが、FBIに摘発された。

また「グーグル」や「ユーチューブ」は少し前から、テロ組織がプロパガンダ用のビデオを投稿するお気に入りのプラットフォームになっている。彼らの動画は人気が高く、宣伝効果や新たな支持者だけでなく、多額の広告収入ももたらしている。

ISなどは、「ビットコイン」のような暗号通貨を利用した送金システムも構築している。取引には従来とは異なる世界的金融システムが使われ、ユーザーは完全な匿名性を保てるのが特徴だ。

情報と国家安全保障の世界的権威であるコースタル・カロライナ大学のジョセフ・フィッツアナキス博士によれば、現在のテロ組織は音楽や映画、オンラインゲームの海賊版、偽ブランドのアパレル製品、電子機器、時には偽薬や、コンサートやスポーツイベントの偽造チケットを売る例さえある。

「暗号通貨と”ダークネット”を利用することで、今日のテロ組織はクリエイティブな方法で資金を集めたり金を儲けたりすることが可能なのです」

財源を多く持つテロ組織リスト

1. ヒズボラ/資金11億ドル
アラビア語で「神の党」の意味。レバノンを中心に反欧米、反イスラエルを掲げて活動する。最大の資金源はイラン政府からの支援。

2. タリバン/資金8億ドル
アフガニスタン、パキスタンで活動。ソ連のアフガン侵攻後の内戦の中で設立。ヘロイン、大麻の売買、資源の略奪、身代金などが資金源。

3. ハマス/資金7億ドル
別名、イスラム抵抗運動。主にパレスチナ自治区、イスラエルで活動する反イスラエル運動の組織。ガサ地区を実効支配し、税などを財源とする。

4. アルカイダ/資金3億ドル
オサマ・ビン・ラディン創設の反米組織。アフガニスタン、パキスタンを中心に広範囲で活動する。武器、たばこ、ドラッグ貿易などが財源。

5. イスラム国/資金2億ドル
イラク、シリアを中心に活動。国家の樹立を宣言して制圧下の地域を支配してきた。主な資金源は資源、古美術の収奪、密売、身代金など。

6. クルド労働者党/資金1億8000万ドル
トルコ南東部を中心に活動し、クルド人国家の樹立を目指す。主な資金源はドラッグやたばこの販売、人身売買、税、寄付など。

7. カタイブ・ヒズボラ/資金1億5000万ドル
イラクに駐留する多国籍軍の排除を目的に2006年設立。イランが多くの資金を提供。カタール王室人質事件では巨額の身代金を得た。

8. イスラム聖戦(PIJ)/資金1億ドル
1970年代に設立されたイスラエルや米国を攻撃対象とし、パレスチナの解放を目指す組織。イランからの資金の影響力が大きい。

9. ラシュカレトイバ/資金7500万ドル
アフガニスタン、パキスタンを中心に活動する。イスラムによるインド亜大陸の統治が目的。賛同者からの寄付金が主な財源。

10. アイルランド共和軍/資金5000万ドル
アイルランド全体の統一を目的とする武装組織。近年英国で活発化しているたばこの密輸、密売が大きな財源となっている。