先輩から「なぜか好かれる後輩」の共通点
※本稿は、入江慎也『入江式 のしあがる力(ちから。)』(ゴマブックス)の一部を再編集したものです。
■かわいがられる後輩は先輩の○○を上げる!
僕は吉本興業の先輩や後輩たちと旅行をすることがよくありますが、そういうときに「こいついいやつだな」とか「かわいいな」とうれしく思うのは、とにかく楽しんでくれる後輩です。
まだ世間に広く知られていない後輩の多くは、いつも同じような洋服を着ていて、仕事のときでも旅行のときでも、だいたい同じ格好です。もちろんお金がないことはわかっているし、自分も彼らと同じような経験をしてきたので、気持ちはわかります。だから、あえてそこを突っ込んだりしません。
でも、ある後輩が、お金がないはずなのになぜか全身新品の服で旅行に来たことがあったんです。みんなで「どうしたんだよー? 珍しい服着て」なんて茶化しながら理由を聞くと、彼はこんなことを言いました。
「いや、楽しみになり過ぎて、思わずバイト代全部使って新しい服を買っちゃいました!」
常識的に考えれば、そんな無計画な金の使い方をするなんてバカなのかもしれません。でも、じかにうれしさや楽しさを表現してくれる後輩を見ると、こちらも素直に「こいつを連れてきてよかったな」と思います。
実はこういう後輩は、自分のテンションを上げることが先輩たちのテンションも上げることを知っているんです。
彼は旅行中も気づかいを忘れません。
例えば、みんなで集合写真を撮ろうとしたときも、率先して自らカメラマンになります。そして写真を撮ったあとも先輩たちに「こんなふうに撮れましたが、大丈夫ですか?」と画像チェックまでしてくれるんです。
このように、旅行という楽しい場に合わせて「みんなのモチベーションを上げる」気配りができる後輩を見ていると、改めて、相手を思いやることの大切さについて考えさせられます。
■相手にどんなお返しができるか常に考える
では、突然ですが、ここで問題。もしあなたが後輩として旅行に参加したら、先輩に対して何ができるでしょうか?
答えは……、「オリジナルのしおりをつくってくる」「旅行先のお店情報を調べておく」「盛り上がりそうなゲームを持ってくる」「(男だけなら)女の子をナンパする」「車を運転する」「動画を撮影して編集する」などなど。あなたのできることはたくさんあります。
ほかの業界はどうなのかわかりませんが、僕ら芸人が旅行をする場合、旅行代金は先輩持ちなのが当たり前です。でも、だからといって、それを「先輩だからおごってくれて当然」と思ったり、あるいは必要以上に恐縮して黙ってしまったりせず、自分はどんなお返しができるのかを常に考えることができる。そういう人は間違いなくライバルより一歩抜きんでることができると思います。
■組織の中で上へ行くのに必要な“判断力”
仕事の上でも同じことがいえます。あなたが会社という組織に所属していれば、少なからず会社が自分のことを守ってくれるでしょう。でも、そんな状況に甘んじることなく、「自分はこの会社で何ができるのか」を考え、自分の判断で積極的に動ける人は、“のしあがる力”を持っているといえます。
例えば、ミーティングなどでは、自分の企画を提案したり意見を言ったりしていますか?
他人の意見をなんとなく聞いて、取りあえず誰かの意見に同調しているだけの人も多いのではないでしょうか。
複数人が集まっているなかで自分の意見を発現するのは、勇気がいります。まったく賛同を得られなければ、場がシラけたり、恥ずかしい思いをしたりするかもしれません。でも、そんな中で「この企画はこうだから、こうしたほうがいいのではないか」と論理に基づいた提案や意見ができる人は、間違いなく上司から一目置かれる存在になるでしょう。
ちなみに、以前僕が仕事でプレゼンを受けたとき、驚かされたことがありました。配られた資料から、いい香りがしたんです。なんでも、紙に1滴アロマを垂らしたんだとか。内容や発言で勝負をするのも大事ですが、こういう工夫も、人より抜きんでるには必要かもしれません。
■中堅世代の会社での戦い方とは
一方、40代前後のいわゆる中堅世代は、若者とは少し違った悩みを抱えています。それは、会社という意外と狭いコミュニティの中では新しいもの(人)がよく見える傾向にあり、その中で自分はどう振る舞えばいいのか、ということです。
例えば、新卒で若い子が入社してきたり、中途採用で即戦力のある新人が入ってきたりすると、今までなれ親しんだ空気が変わることがよくあります。長年勤めている中堅社員はよくも悪くも“なれ”があるため、意欲のある“新しい風”には経験値をもってしてもかなわないことがたびたび出てくるものです。
そんな中で、若者や新人、そして上司に挟まれた中堅世代が自分のポジションを確立させるためには、どうしたらいいのでしょうか。
そのためには、今の状況に甘んじることなく、「今までの自分を超える」努力をするしかありません。まず、惰性で会社に通勤しているという感覚は捨てること。「初心は忘れない」、つまり新人のころの意欲を思い出し、できるだけ維持すべきです。そういう人は、自然と若い人から親近感を持たれ、また上司からもかわいがられます。
かくいう僕も、今年で41歳。「不惑の40」と言いますが、まだまだ迷うことだらけです。
でも、迷うことで出せる答えもあるということが分かったのは、40歳になってからです。どんなに経験を積んでも、若者と同じように迷いもがき続けることが、結局は近道なのだと気付きました。経験と意欲、そしてもがくための体力を持てるのは、40代だけの特権なのかもしれません。
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お笑いタレント
1977年、東京都生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。相方の矢部太郎とともにお笑いコンビ「カラテカ」を結成。バラエティ番組出演やお笑いライブ活動を続ける一方、ビジネス界、スポーツ界などに幅広い人脈をもつことでも知られる。近年では公演活動で全国を飛びまわり、人脈構築術やコミュニケーション術を多数のビジネスマンに伝授。主な著書は『後輩力 凡人の僕が、友だち5000人になれた秘けつ』『使える!人脈力』『夢をかなえる営業力』など多数。近著に『入江式 のしあがる力(ちから。)』(ゴマブックス)がある。
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(お笑いタレント 入江 慎也)