人は、“麻布十番”という街にどんなイメージを持つだろうか?

港区民が住まうセレブタウン。都内屈指の名店が集まるグルメの街。それとも、庶民的で気取らない、下町風情を残した居心地の良さ?

訪れる人によって、十人十色の景色を見せるこの街。

これは、麻布十番在住の少々奇抜な男女の生態記録である。

これまでは犬を溺愛する美人妻、大人の色気漂う“十番おじさん”を紹介したが、今週は...?



<今週の麻布十番住人>

名前:アキラ
年齢:29歳
出身:横浜
職業:外資系メーカーのマーケター
ステータス:独身
趣味:レストラン開拓
好きな店:『SAVOY』

高層レストランの少ない麻布十番で人気の『ヒルトップカシータ』の最上階のルーフトップテラスに現れたアキラは、少々ギラついたファッションに身を包んでいた。

芸能人が愛用する某ストリートブランドのパーカーに、高価そうなダメージジーンズ、そしてゴツめのスニーカー。

手元には、男性にしては珍しくブランドもののケースに包まれたスマホを持っている。

「遅れちゃってスミマセン!昨日はクライアントと朝方まで飲んでたんで」

そう言って軽く会釈をするアキラには、憎めないような人懐っこさがあった。

「でも...こんなに天気のいいテラス日和なんで、一杯飲んじゃおうかな。休日の昼シャンは最高っすね」

人によっては少し図々しいと思われかねない若者に不思議と苛立ちを感じないのは、彼が稀に見る“イケメン”という生き物だからに違いなかった。


東京恋愛市場の“勝ち組男”。十番在住を誇りに思う理由は?


“十番在住”は、大人の男の証


男性にしては綺麗な肌に、色素の薄い艶のある髪。アキラは最近人気の若手俳優のような整った甘い顔立ちをしている。

ニコッと微笑む度にくっきりと浮かび上がるエクボには彼の愛嬌の良さが滲んでおり、少し垂れ気味の瞳からは外見への絶大な自信が感じられた。

「あ、ちなみに俺が住んでるのは、あそこに見えるマンションです」

運ばれてきたシャンパンのグラスに早くも口をつけながら、アキラはテラスから見えるほど近い建物を指す。

「俺の部屋はここより高層階なんで、眺めも最高ですよ。ちゃんと東京タワーも見えるし」




そのドヤ顔...いや、得意気な表情は、まるで小学生の男子がプラモデルを自慢するような幼さがあり、やはり何となく憎めない。

29歳、外資系メーカーで活躍するマーケター、そして、この甘いマスク。

要するに彼は今、この熾烈極める東京恋愛市場に於いても、向かうところほぼ敵ナシ状態なのである。多少調子に乗るのも致し方ない。

「まぁ...そうですね。今彼女はいませんけど、デートする子には困ってないかな」

アキラは謙遜のカケラもなく、またしてもエクボを見せてニッコリと笑った。

そんなアキラが麻布十番に住むきっかけとなったのは、学生時代にOB訪問がきっかけで仲良くなった先輩の影響だという。

「今では某大手企業の役員になってるカッコイイ先輩なんですけど、彼が当時独身で麻布十番に住んでて、なんか“大人の男”って感じがしたんすよね」

素直に先輩への憧れを口にするアキラは、目を輝かせて語る。

「でも、やっぱ新卒のペェペェの頃は十番はまだ敷居が高くて、渋谷に住んでました。引っ越してきたのは2年くらい前ですけど、その時は大人の仲間入りを果たした気分でしたね」

やはり、麻布十番はある程度の“大人感”を身につけた者が住む街なのだろうか。

アキラの話を聞いていると、麻布十番に住むことが大人の男への一種のハードルのように聞こえるが、この街に住む利点はそれだけではないという。

「何ていうか... やっぱり“渋谷在住”と“十番在住”では、女の子の食いつきが確実に違うんです(笑)」

いくらイケメンのマーケターでも、都心には強敵がわんさかいる。そんな中、“麻布十番在住”というステータスは、かなり強い武器になってくれるという。

「実際、十番はデートに誘いやすいんですよ。ちょっとした下町感があって親しみやすい雰囲気なのに、レストランのレベルは超一流。まさに口説ける街です」

本気めのデートならば『カーザ ヴィニタリア』や『アリエ』、『クチーナ ヒラタ』などのロマンチック系のレストラン、食事会ならば『トラットリア ケ パッキア』や『麻布十番 がいがい.』といったコスパの良い店。

どの用途にどの店を選んでも、女性ウケは抜群だ。

そしてこの『ヒルトップカシータ』は、ランチやディナーはもちろん、2軒目としても使いやすいという。(きっと彼は、デート相手にも先ほどのように自宅を紹介するのだろう)

「この街で独身貴族を満喫するのは、正直男として、めっちゃ楽しいですよ。でも...」

これまで何となくおチャラけた態度であったが、そこでアキラはふと真面目な表情を見せ、意外な言葉を口にした。

「俺もまぁいい年頃なんで、最近は、わりと結婚を意識してます」


結婚願望のあるイケメン発見!彼のタイプの女性は...?


イケメンの失敗談


もちろんデートにはもってこいの街であるが、麻布十番はファミリー層も多い。

この近辺の裕福で品のいい家族を目にするうちに、アキラの憧れは、そんな次なるステージに移りつつあるようだ。

では、彼のような“勝ち組男”が結婚を意識する際は、一体どんな女性を選ぶのだろうか。

「少し前までは、とにかく“可愛い子”がタイプだったんです。CAとか、グラビアモデルの子とかもよく遊んでました。でも、いざ真面目な関係を意識すると、付き合う女の子も変わりますね。

バリキャリ系は気が強くて苦手だと思ってたんですけど、最近はしっかり仕事をして、自立してる子の方が話してて楽しいです」

惚気るように語るアキラだが、目下、かなりお気に入りの特定の女性がいるそうだ。

「あっ、彼女も十番在住ですよ。2歳年下で、PR会社で働いてます。実はかなりマジに口説いてるんですけど、ちょっと苦戦してて...」

美人な上に明るく気さくで、さらに仕事に一生懸命だという彼女。

彼女とは男女の会話はもちろんだが、仕事の話も対等に楽しめる。しかし、もう何度もデートを重ねているにもかかわらず、なかなか隙を見せてくれないそうだ。

「完全に“チャラい男”って警戒されてるみたいなんですよね。だから最近は、爽やかにランチデートに誘ったりしてたんですけど......どうやら俺、そのとき何かやらかしたみたいで」




アキラはバツの悪そうな顔で、先週の休日デートの詳細を語り始めた。

その日は彼女と昼間から『SAVOY』でピザを食べ、『麻布野菜菓子』でデザートのかき氷を楽しみ、かつてないほどイイ雰囲気が漂っていたという。

だが、そこで事件は起きた。

「商店街を歩いてたら、やたら可愛い“犬”がいたんです。あ、俺こう見えて、めっちゃ動物好きなんですけどね。それで、その犬と少し戯れてたら、彼女が急に不機嫌になって...」

麻布十番の商店街ですれ違ったのは、真っ白い小さなトイプードル。

その潤んだ黒い瞳でアキラを見つめていたという犬に目を奪われ、撫でたり飼い主と軽い世間話をしているうち、気づけば彼女から笑顔が消えていたという。

「彼女、犬が苦手だったのかな。もしくは...」

さらに、その飼い主は、“麻布十番代表”とでも言うような素敵なオーラを放つ美男美女夫婦だった。犬の散歩をしているくらいだから、やはり近所に住んでいるに違いない。

「30代後半くらいだと思うんですけど、理想的なカッコイイ夫婦でした。それで、“俺も結婚したら、こんな夫婦になりたいなぁ”なんて、ついポロっと言っちゃったんです。重い発言と思われて、ドン引きされたのか...」

原因が特定できず、しょんぼりと肩を落とし、遠い目で麻布十番の空を仰ぐアキラ。

だが、もう一度シャンパングラスに口をつけると、次の瞬間にはやんちゃな笑顔が戻っていた。

「まぁでも、俺はそんな簡単には諦めませんけどね。今夜あたり、また彼女に連絡してみます!」

少々お調子者ではあるものの、アキラは心根の素直な、健全な若者に違いなかった。

そんな彼の恋愛の失敗談を聞いていると、不思議と親しみが湧き、彼が麻布十番でどんな大人の男に成長していくのか、今後も見守りたいような気持ちに駆られてしまった。

▶NEXT:5月12日 土曜更新予定
十番在住の“港区女子”。ちょっぴり切ない恋愛事情に迫る。