霞ヶ関

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 林芳正文科相が平日の白昼、個室ヨガ店に公用車で出かけていたという報道を聞いて、20年前の「事件」を思い出したのは私だけではないだろう。

 '98年に大蔵省(現・財務省・Ministry of Finance)を舞台に起きた「大蔵省接待汚職事件」である。「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」とも呼ばれている。

「MOF坦と呼ばれる、都市銀行や証券会社など大手金融機関に所属し、大蔵省の官僚たちと密接な関係を持っていた『対大蔵省折衝担当者』が、官僚の接待に歌舞伎町にあるノーパンしゃぶしゃぶ店を使っていたことが、マスコミに暴露され、話題になりました」(社会部記者)

 事件の本質は接待汚職であって、接待に使ったお店自体には問題がないように思える。しかし、当時は店の衝撃的すぎるコンセプトもかなり話題になったものだ。

「飲食店としての領収書をもらえるので、接待する側は使いやすかったのでしょう。される側は普通の飲食店よりはるかに楽しいので、接待効果は抜群だったんじゃないでしょうか」(週刊誌記者)

 この接待汚職事件では逮捕者や自殺者も出て、責任を取って当時の三塚博大蔵大臣と松下康雄日本銀行総裁が引責辞任した。そして、大蔵省は解体されて財務省と金融庁に二分されることになった。

 上述の事件と、林文科相の件に関連性はないが、あるとすれば、舞台がちょっと“怪しげ”なお店であること。

 ノーパンしゃぶしゃぶは言うに及ばないが、個室ヨガとは?

「利用している客は“キャバクラヨガ”と呼んでいまして、個室で若い女性のインストラクターと1対1でヨガのレッスンを受けます。レッスンの後でオイルマッサージがありますし、インストラクターと客の交際もOKといいますから、オトコ心をくすぐる、というかムズムズさせるお店でしょうね(笑)」(前出・週刊誌記者)

 芸能人御用達という店があるように、あまり表に出てくることはないが、政治家御用達の店もある。

 芸能人や政治家しか利用できない店もあれば、一般の人も利用できる店もある。ただし会員制であったり、会員の紹介がなければ利用できない店が多いが……。

かつて私が取材した“怪しげ”なお店

 私が、大蔵省汚職事件の取材をしていた当時、都内にはノーパンしゃぶしゃぶ店以外にも、政治家御用達の“怪しげ”な店がいくつかあった。

 潜入取材してみると、店内では、ここで書くのも憚られるような、政治家や官僚の痴態が繰り広げられていた。政治家や官僚も一人の男、ハメを外したくなる気持ちも解らないわけではない。

 ただ、ひょっとしたら、我々の税金がこんな場所で使われているのではないかという疑念が浮かんだのは事実だ。

「“御用達”の店って聞くと、行ってみたいという思う人は多いでしょう。実はしゃぶしゃぶの店は、事件の数年前からマスコミの間では有名な店でした。

 それでも、利用客はそんなに多くはなかったです。ところが、事件で広く知られるようになると、全国から客が訪れるようになり、後に流出した会員名簿には政財官300人以上を含む1万人が登録されていたといいます」(前出・社会部記者)

 “怪我の功名”といっていいのかどうかわからないが、宣伝効果はかなりのものだったようだ。

「林文科相の話が出る前に、個室ヨガは多くのメディアで紹介されてはいましたが、ニュースになってから問い合わせが増えたようです。芸能人の間でも“行きたい”と話題になっていますから」(ワイドショースタッフ)

 それにしても、政治家や官僚たちの、この手の店を探し当てる嗅覚の鋭さには感心してしまう!

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。