運転中は「十分な車間距離」をとって、といわれます。クルマの流れにのって走っていても、意識して車間距離を空ける必要があるのでしょうか。じつはこれが、渋滞の防止にも役立ちます。

追突防止だけではない効果

 運転中はだれしも、周囲のクルマの流れにのって走っていることでしょう。その一方、特に高速道路では「十分な車間距離をとって」といわれます。


車間距離が詰まってくると、渋滞が発生しやすくなる。写真はイメージ(2018年3月、中島洋平撮影)。

 なぜ車間距離をとらなければならないのか、フジドライビングスクール(東京都世田谷区)の田中さんに聞きました。

――なぜ車間距離をとる必要があるのでしょうか?

 表向きには、急な事故に巻き込まれたり、追突したりしないようにするといった理由です。というのも、道路交通法では「追突するのを避けることができるため必要な距離を保たなければならない」とされており、追突事故の責任は、ほぼ100%追突した運転者が問われます。つまり車間不保持が問われるわけで、悪くなりたくなければ空けなさいということです。別の理由としては、渋滞を防止するという観点も挙げられます。

――車間距離をとることがなぜ渋滞防止につながるのでしょうか?

 たとえば、前のクルマがブレーキをかけたことで、後ろのクルマもブレーキをかけ、それが連鎖して渋滞につながるケースがありますが、車間が詰まっているとその間隔が短くなり、結果的に全体の速度がより落ちていくのです。車間を空けていれば無駄なブレーキを防ぐことができ、ひいては渋滞の防止や緩和につながります。

 もちろん、車間を空けていてもブレーキを踏んでしまうことはあるでしょう。しかし視野を広くもつことができますので、何台も前方からブレーキが踏まれていることや、ブレーキの強さもわかります。それに応じたスピードに調整でき、無駄な加速も抑えられるのです。

「割り込まれたくない!」と思っていると狭まる視野

――車間を空けているために割り込まれたり、遅く走ることが渋滞の原因になったりはしないのでしょうか?

 もちろん割り込まれやすくなりますし、ノロノロ走っていれば、それはそれで全体の速度を下げてしまうことにつながります。しかし、割りこまれたくない一心で車間を詰めていれば、視野が狭くなり、結局はブレーキを踏んでしまうことになるでしょう。

 そもそも割り込みこそが渋滞や多重衝突を引き起こす大きな要因ですが、それに対しても、車間を空けていれば対処しやすくなります。大切なのは、視野を広く持ち、周囲の状況を認識することです。

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 田中さんによると、速度に応じた適切な車間距離は、視野を広くとれば自然に生まれてくるといいます。逆に車間距離を意識しすぎることは、視野が狭くなり、むしろ危険なこともあるそうです。「渋滞時以外でも、たとえば走行位置をわずかに前のクルマから横にずらすなどして、2台前を走るクルマのブレーキランプを確認できるようにしておくとよいでしょう」と話します。

 ちなみに、埼玉県警は「ゆとり車間距離0102(ゼロイチゼロニ)」という運動を推進し、前を走るクルマから「2秒以上」の車間を空けることを提唱しています。たとえば、前を走るクルマが電柱などの目標物にさしかかったときに「ゼロ・イチ・ゼロ・ニ」と数え、「二」のときに自車がその目標物の位置にさしかかるようにするというもの。「イチ・ニ」だけでは2秒よりも短いため、あえて「ゼロ」を2回数えるのだそうです。

 埼玉県警によると、「車間距離の認識には個人差もあり、『これだけ空けていれば安全』というのは、数字としては出していません。そこで、距離ではなく『時間』で認識する方法を考えました。2秒以上空けていれば、たいていの状況にはとっさに対処でき、たとえ追突したとしても、速度が抑制されているためケガは大幅に軽減されます」と話します。

【画像】車間距離を「時間」で認識する方法


埼玉県警の「車間距離0102(ゼロイチゼロニ)」運動のパンフレット。前車との間隔を2秒以上空けることを推進している(画像:埼玉県警)。