柳井正氏(写真は2012年撮影)

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カジュアル衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングの好業績が注目されている。2018年2月中間連結決算は売上収益(売上高)、営業利益とも過去最高を更新、通期では初めて売上高2兆円を突破するのは確実だ。特に海外が好調で、中間決算では初めて海外ユニクロ事業が国内の売上高を抜いた。ただ、ユニクロ以外の業態はなお振るわず、『一本足打法』のまま。また、海外展開もライバルには後れを取るなど、課題も多い。

同中間決算の売上高は、前年同期比16.6%増の1兆1867億円、本業のもうけを示す営業利益も同30.5%増の1704億円と、いずれも中間決算として過去最高を更新した。

売り上げが国内外で逆転

国内ユニクロ事業は、例年より冬が寒かったことでヒートテックやダウンジャケットなどの防寒商品が売れ、売上高は8.5%増の4936億円、営業利益は29.0%増の887億円。一方、海外のユニクロ事業の売り上げは29.2%増の5074億円、営業利益は65.6%増の807億円となり、売り上げが内外逆転。中国に積極出店したほか、「ZARA(ザラ)」の本拠地であるスペインに初出店するなど、上半期中に海外で72店増やし、出店した地域はいずれも好調だった。

下半期も好調持続を予測。国内は店舗のフロア面積を拡大し収益構造の改善を図り、海外でも通期で計157店の純増を計画し、通期の売上高は従来予想に600億円上積みして2兆1100億円、営業利益は2000億円から2250億円、純利益は1200億円から1300億円に、それぞれ上方修正。4月12日に都内で開いた決算説明会で、ファストリの柳井正会長兼社長は「3兆円はあと数年でいく」と自信満々な表情で語った。ZARAを展開する、世界トップのインディテックス(スペイン)は2018年1月期の売上高が253億ユーロ(約3兆3500億円)だから、その背中を射程にとらえつつあるのか。

ただ、不安要素、課題も少なくない。第1に、ユニクロ以外の柱が育っていないことだ。

ユニクロや兄弟ブランドである「ジーユー(GU)」事業の売上高は8.3%増の1058億円だが、防寒衣料のアイテム不足などから、既存店売上高はマイナス。営業利益は23.3%増の91億円だったが、ユニクロの1694億円との差は大きい。「時間を買う」として積極的に取り組んできたM&Aで手に入れてきた「グローバルブランド事業」は、「コントワー・デ・コトニエ」が赤字など、全体で56億円の営業赤字を計上しており、どう立て直すかが問われる。

ネット販売の比率高める考え

第2に、海外展開もまだまだ足りない。現在のアジアの好調を受け、柳井氏は「ようやくアジアの時代がきた。我々の服が理解され始めブランドとして確立してきた。世界の人、全てに商品が受け入れられる可能性を感じている」と強調するが、進出済みは19か国・地域にとどまり、100近いインディテックスに大きく水をあけられたまま。インド、東欧、中南米、中東などは手つかずの状況だ。中華圏、東南アジアを中心に、今後も、頭打ち傾向の国内を上回るペースでの出店を計画するが、そのペースをどこまで高められるかも注目点だ。

第3に、ネット販売だ。現在、ユニクロのネット販売が売上高に占める比率は9%程度、金額で年間1400億円程度という。柳井氏は、これを向こう2年で2倍以上の20%(金額では3000億円以上)に高める考えだ。そのために、店舗網を生かし、店頭での受け取りなどの独自サービスで差別化を図るという。

アパレル界で売上高5兆円の世界一企業を目指す柳井氏も2018年2月に69歳になり、70歳をめどに社長ポストを後進に譲り、会長に専念する意向を示している(2017年10月の日経新聞インタビュー)。むろん、譲った後も実権は保持し続けるが、壮大な目標に向けて、事業構造の将来像をどう描くか、これからの1年は柳井氏にとっても一段と重い時間になりそうだ。