「やれたかも」しれない女性はキレイに見える。佐藤二朗×山田孝之が明かす、男の記憶

「絶対やれたっしょ!」「いや、これ無理じゃね?」――。ドラマ『やれたかも委員会』(MBS・TBSほか)を見つつ、日本中の男たちが自分のダメっぷりを棚にあげ、恋愛評論家を気取って思案中である。いまさら何を言おうと「やれてない」事実は変わらないし、「やれたかも」しれない夜は返ってこない。それでも、ドラマの最後で佐藤二朗と山田孝之が「やれた」という札を掲げるとホッとする。なぜ人は「やれたかも」しれないあの夜をいつまでも抱え、胸を焦がすのか? ドラマさながらに、佐藤と山田に検証してもらおう。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
スタイリング/鬼塚美代子(Ange)【佐藤】、澤田石和寛【山田】
ヘアメイク/今野亜季(A.m Lab)【佐藤】、灯(ROOSTER)【山田】
衣装協力/ジャケット\19,000(トミー ヒルフィガー/PVHジャパン tel.0120-266-416)【佐藤】

いつものコミカルさを封印した芝居を楽しんだ(佐藤)

ネットで話題となった吉田貴司さんの漫画を実写化した本作。相談者の「あの夜、もしかしたらあの子とやれてたんじゃないか?」という告白を、3人の「やれたかも委員会」メンバーが「やれた」「やれたとは言えない」と判定する異色のコメディ…いや、恋愛ドラマです。
佐藤 原作の着眼点のスゴさは出色。"あるある"の要素も含まれてる。一方ドラマも、その着眼点の面白さをしっかりと継承しつつ、原作より尺が長いぶん、相談者のエピソードをさらに掘り下げてて、これは純粋に恋愛ドラマとして楽しめるなって思います。
山田さんにとっては、『闇金ウシジマくん』シリーズでも長くタッグを組んできた山口雅俊監督とのお仕事ですが、『ウシジマくん』とはまた毛色が異なる作品ですね。
山田 ただ、山口さんらしいなって感じましたね。山口さんは人間の欲望を描くのが好きな人なので、今回、お金は絡まないですけど、性とか愛とかの欲望なんだなって。あとは(共演者が)二朗さんと聞いて「やった! やります!」という感じでした。
佐藤さんが演じる能島 譲、山田さんが演じるオアシス、そして乃木坂46の白石麻衣さんが演じる月 綾子の3人で委員会が構成されており、相談に対して三者三様のリアクションを見せますが、ご自身の役柄についての印象は?
佐藤 やっぱり、物語にバカバカしい面白さがあるから、僕にもコミカルな演技を期待される方もいると思うんですけど、監督と話したのは「そうじゃない」ということ。
どっしりと構えていて、決してセリフも多くはないですね。
佐藤 おそらく、この3人の中では一番恋愛がうまくいったことがないタイプだと思います。とにかく相談者に誠実に向き合うことだけを考えて演じました。
こういうコメディ要素のある作品で、しかもすぐ隣に山田さんもいらして、ワチャワチャしたやり取りや、アドリブのボケ&ツッコミを期待する視聴者もいるかもしれませんが…。
佐藤 そうしたいという気持ちがまったくないと言えば嘘になりますが(笑)、ただこれも完全な本心として、俳優はいろんなことをやりたいんですよ。だから、いつものコミカルさを封印した芝居を心から楽しみましたし、そうした山口監督の演出に喜びも覚えましたね。
山田さんはオアシスに対して、どんな印象と役作りを?
山田 知識もあるし、頭もいい役ですよね。なんですけど…やっぱり男として「やれた」と言いたいところがある(笑)。「やれた」であってほしいという願望がちょこちょこ垣間見えてくるんですけど、完全肯定の能島と否定的な月 綾子に挟まれて、中立の立場で頑張ってますね。
今回、3人のキャラクターは、原作の要素を残しつつも、あえて役名も変えており、ドラマ版のオリジナルキャラクターとなっていますね。この点は役を作っていくうえで影響はあったんでしょうか?
佐藤 原作でね、能島はしゃべってなくても、インパクトがあって面白いカットがたくさんあるんですよ。漫画ならではの面白さというか。最初は、それに近づけようと悩んだんですけど、結局そこはあきらめました。
漫画だからこその面白さにとらわれず?
佐藤 実写なりの能島を作ろうと。むしろ、原作を踏襲せねばならないと思ったのは、コミカルな部分ではなく、やはり相談者に真剣に寄り添う部分。そっちを大事にするほうが作品的にも優先順位が高い。その能島の根っこを踏襲しようと。
山田 僕も漫画に寄せようとか、離そうという意識はなかったですね。ビジュアルは寄せてますけど。というか、漫画では言葉数も少ないし、相談者がメインで、僕らのことはそんなに深く掘り下げられてないので、逆に原作から拾える要素って多くないんですよ。そもそも自分で作らないといけない部分が多かったです。

「一番、精神年齢が高い」ふたりから見た白石麻衣の姿

3人と各回のゲストである相談者による委員会のシーンの撮影、カメラが回っていないときの会話など、現場の様子について教えてください。
佐藤 基本…みんな、疲れてましたね。5日間でまとめて8話分の委員会のシーンを全部、撮ったんでね。けっこうな量ですよ。
山田 寝てましたね。
佐藤 空いている時間は寝ようという暗黙の了解がありました。ただ、3人の中では白石さんが一番、精神年齢が高く、大人でしたね。
実年齢では最年少ですが…。
山田 白石さんは、時間を有効活用して、寝られるときはきちんと寝てましたね。僕と二朗さんは、さっさと寝ればいいものをなんやかんやとだべってました(笑)。
佐藤 「昨日、何飲んだ?」とか。
山田 普段から、睡眠時間を削ってでも酒を飲んでしまうことを肯定するために「なぜ俳優は、睡眠時間がない中で酒を飲んでしまうのか?」というテーマについて話し合ったり。
佐藤 地方ロケで宿泊先に戻って、いますぐにシャワーを浴びても4時間しか眠れないのに、なぜそれを3時間にしてまで飲むのかと。
山田 こういう作品をやってるから、頭がそういうモードになってるんですよね。「なぜ?」とか「どうすべきか?」とか自己肯定の理由をついつい探してしまって…。ま、答えはすぐ出ましたけどね。
せっかくですので、そのお答えを…。
山田 フィジカルかメンタルか? どちらを休ませているのかという問題なんだなと。
佐藤 僕らはメンタルを休ませているというね。
白石さんは、そこでしっかりとフィジカルを休ませていらっしゃって…。
山田 しっかりとね。余計な言い訳をせず。言い訳を考える必要もないくらい、ちゃんと寝てましたね。
そのほうがフィジカルのみならず、メンタルも休まっている気も…。
佐藤・山田 それはどうなんでしょうね。
白石さんが眠っていない時間で、現場で会話などは…?
山田 ほぼなかったですね。
佐藤 静岡出身という話を聞いた覚えが…(※白石さんは群馬県出身)。
山田 あと、写真集をいただきました。
佐藤 爆発的に売れているやつね。
山田 サイン入りですからね。
共演されてみて、女優としての白石さんの印象は?
佐藤 すごく合ってましたね、この役に。
山田 一切、笑顔を見せずに月 綾子に徹してましたよね。これだけキレイな人に「やれたとは言えない」と突きつけられたら反論できないってのもあるじゃないですか。そういう意味でも合ってますね。素晴らしいキャスティングだと思います。

ドラマのせいで「やれなかった」としても、一切責任は負いません!

実際、月 綾子が男の「やれたかも」願望をズバッと斬るさまに、「共感する」という女性が多いようです。3人の中で、彼女の意見や分析が一番、しっくりくると。
山田 それは全地球上の女性、とくに日本の女性が「男たちは『やれたかも…』と思ってるけど、私たちはそんな気は毛頭なかった」と結託してるから、そういう意見になっちゃうんでしょうね。
佐藤 何か、ちょっと規模の大きな話になってきたけど…(笑)。
山田 「私たちの作戦を男どもにバラしてたまるか」って女性のみなさん、思ってるんでしょうね。
佐藤 ぜひこのドラマ、恋人なり異性の友達なりと、見てほしいね。
山田 いやぁ、恋人はどうだろう…?(笑)
佐藤 亀裂が入っちゃうか? じゃあ友達以上、恋人未満の…。
山田 ややこしい! こじれますよ(笑)。でも、グループで見るのは面白いと思いますね。
まさに深夜、このあと「やれるかも…」という関係の男女で見るのは…?
山田 それは賭けですね。ゼロか100かですね。
佐藤 賭けだなぁ(笑)。
山田 だって、第1話(『山なみ編〜横たわる山なみ〜』)で、宅飲みでふたりきりになって女の子がベッドに横たわって…というのを見たあとで、ベッドに寝転がったりしたら「え? こ、これってそういうこと…?」ってなるでしょ(笑)。
佐藤 そりゃなるよね。
山田 いや、でも女性にしたら、この作戦をドラマで描かれちゃったから、同じテクニックを使うのはあざといと思われる…って感じで、本来ならその作戦を実行するつもりだったのにできなくなるかも(笑)。
佐藤 そうね。ホントはすんなりとやれたはずなのに、このドラマのせいでやれなくなった男女が出てくるかもね。我々はそこ、一切の責任を負いませんので。
改めて、完成した作品をご覧になっていかがですか?
山田 いや、もう楽しそうだなぁって。ドキドキチュッチュしてて。
佐藤 何回か、相談者と立場を代わりたいって思ったね。あくまでも男の記憶なんだけど、やれたかもしれない夜の女性ってキレイで色気があって…。
山田 時間が経てば経つほどキレイになっていくんですよね。
佐藤 なっていくのよ。やれなかったぶん、余計ね。みんな、どのエピソードの女優さんもキレイでかわいくて。
山田 二朗さんもカラオケで(GLAYの)『HOWEVER』(※第3話『お米編〜焼きそら豆と内もものぬくもり〜』で相談者役の森永悠希とヒロイン役の武田玲奈が歌う)を歌いたかったですか?
佐藤 歌いたかったね。カラオケが苦手な俺であっても、武田玲奈ちゃんと『HOWEVER』をね。
ほかに、おふたりがこれは「やれた」とか「やれたとは言えない」と感じたエピソードなどは?
山田 自分の感覚で言うと、二朗さんと同意見なんですけど「可能性はすべてにおいてゼロではないだろう」と思えて、全部「やれた」と言いたいですね。
佐藤 そうね、どのエピソードもかなりいいところまでいってますからね。佐藤二朗の感覚で言うならば。どれも確実に「やれた」と言ってあげたい。だってチュッチュしてたりするしね。
たしかに「これは運が悪かっただけで、普通ならやれてただろう」というエピソードもありますけど、中には難しい判断を迫られる状況もあります。たとえば、先ほども話に出た『お米編』で、朝までカラオケをしたあと、一緒にヒロインの家の近くまで行ったのに「やれなかった」というのは…。
佐藤 あれは微妙かぁ…。
山田 うーん、あれはわからないですね。
佐藤 わからんなぁ…。
山田 正直、自分があの状況に置かれたら「うーん…」ってなりますよね?
佐藤 そうね。でも願望としてはね、「やれた」と思いたい!
山田 米じゃなく食パンだったら、やれてたかもしれないですよね?
佐藤 武田玲奈ちゃんがコンビニで買うのが?
山田 「やれた」あとの翌朝のためかもしれないと劇中でも言ってますが、米はわざわざ炊かないといけないけど、パンならすぐ焼いて食べられるじゃないですか。
佐藤 「やれた」のあとでね。
山田 でも2キロのお米じゃねぇ…難しいですよ、これは。
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