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カシオ計算機の株価が2018年4月25日に急落した。24日の取引終了後に「市場激減によるデジタルカメラ事業の戦略転換、楽器の事業構造の見直し」を理由に18年3月期の業績予想を下方修正したことで、投資家の姿勢が売り一色となったためだ。スマートフォンの普及とともにデジタルカメラの中でも比較的安いコンパクトタイプのデジカメが存在感を失っており、カシオが撤退するとの報道もあった。スマホ時代に生き残りをかけた構造改革ができるかどうかを株式市場が注視している。

コンパクトデジカメ、略して「コンデジ」と呼ぶ人もいる。1万〜2万円、高くても3万円程度と手ごろで携帯に便利な小型のデジカメで、世の中の写真が現像や焼き付けが必要なフイルムから扱いやすいデジタルデータに転換するきっかけになった役割を果たしたとも言える製品群だ。

時代の移り変わり

デジタルカメラは1990年代後半から日本の家電メーカーやカメラメーカーなどによってコンデジに加えて高級デジカメによって普及が進み、フイルムカメラが新製品市場からほとんど消えてしまうことになった。富士フイルムホールディングスがフイルムの衰退を見越して化粧品や健康食品などに活路を求めて事業の構造転換に成功したことは有名な話だが、フイルムカメラを追いやったコンデジが今度はスマホという有力なデジタル機器に市場退場を迫られる役目となっているわけで、時代の移り変わりを示してもいる。

カシオが今回、4月24日に発表した業績下方修正の内容は、次の通り。売上高は従来予想比10.3%減の3140億円で、2017年3月期実績(3212億円)を下回る減収を見込む。営業利益は従来予想費13.2%減の295億円で、こちらも17年3月期実績(306億円)を下回る見通し。経常利益、純利益は17年3月期実績は上回ると見込むものの、従来予想をそれぞれ10%以上、下回るとした。つまりは、減収営業減益を見込むというわけで、多くの投資家が失望することになった。

腕時計事業が好調と見られていたが...

カシオの株価はむしろ上昇基調にあった。「Gショック」など主力の腕時計事業が好調と見られていたためで、18年2月中旬に年初来安値(1427円)をつけて以降上がり続け、4月23日には1773円と年初来高値をつけていた。それが、意外な規模の業績下方修正で一気に下落した格好で、25日には「窓をあける」下落(前日安値より当日高値が低い状態)を記録した。一時1613円と前日終値比155円(8.8%)安まで下落。その後もさえない展開となっている。窓をあけることは株価推移上の節目となることが多く、今後は株価が停滞する可能性が高いとみられている。

SMBC日興証券は24日付のレポートで下方修正についてアナリストの予想平均を下回る水準だったと指摘。そのうえで、下方修正時の情報開示が少なく、詳細を「5月9日の決算発表で説明する」としている点を問題視し、「(5月9日まで)要因分析を行う材料が提示されないことは株式市場においてネガティブに捉えられよう」と記し、「開示の在り方には再考の余地があろう。5月9日までは株式市場ではこの不透明感を嫌気する局面が続くことになろう」とも訴えた。下方修正時に会社側の説明が不十分だと投資家の反発を招き、株価にも影響する可能性があることを、改めて示してもいる