18番バンカーに苦しめられた石川(撮影:鈴木祥)

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予選ラウンドでは今平周吾、秋吉翔太、香妻陣一朗など若手選手が上位に浮上。しかし、4日間が終わってみれば、ツアー屈指の難関コースを制したのは海外メジャー覇者のY・E・ヤン(韓国)だった。「力感や、ストレスがまったくないゴルフで、メジャーチャンピオンらしい攻め方やマネジメントを見せていました」と、JGTOのコースセッティング・アドバイザーを務める細川和彦は語る。
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■ピンを狙わない、メジャー覇者の冷静な判断が勝利
「今年はピンの位置を端に切らず、エッジから6〜7ヤードと中めにしました。そうやってピンを狙わせながら、和合の難しさを出せたと思います」。その罠にかからず、冷静な判断で切り抜けたことがヤンの強さのひとつ。
「ヤン選手は、ピンをどこに切っていても、グリーンのセンターしか狙ってこない。とくに、最終日の18番ですね。ティショットがフェアウェイのど真ん中にいっているのに、ピンを狙わずにセンターを狙っていました。ああいった場面でもわかるように、確実に安全なところを狙ってきている。その上で、そこから11ヤードくらいのバーディパットを決めてしまうのだから、攻めと守りのかけひきが上手くできていたのだと思います」。大会を通して、海外メジャー覇者らしいマネジメント力が光った。
「反対に、無理やり一か八かでピンを狙ってしまうとスコアを崩してしまいます」と細川は語る。
■プレッシャーに負けると“罠”にはまる
「特に難しいのが、3番・パー3」。右ドッグレッグの3番は、ティグラウンドが右にきられている。「ティショットがフェアウェイにとまりづらく、ラフにいってしまうと、フライヤーがかかるのでキャリーしたらグリーンをオーバーしてしまう。反対に、それを怖がると手前に打ってボギーか、むりやりピンを狙うとガードバンカーに入ってしまう」。最終日、単独トップに立っていた秋吉翔太は、ここで3打目をバンカーに入れ、3パットをたたいてダブルボギー。「ヤン選手を追い上げる選手は、アップアップで自滅している印象がありました。まさに勝負の世界。和合の難しさと、プレッシャーに負けたというのもあるでしょう」。
■石川遼が苦しんだ“魔の18番”
攻めようとするほど、どつぼにはまるのが和合。「3番だけでなく、18番もそうですね」。今年から、フェアウェイ左のバンカーが2つに分かれて深くなった。石川遼はこのバンカーに苦しめられ、予選ラウンドでは2日連続このホールでダブルボギーを叩いている。
「安全にいくのは、ドライバー以外のスプーンやクリークで刻む攻め方。フェード系が打ちやすいホールです」。ドローボールを重点的に練習してきたことが、このホールでは裏目に出た。
「2日間バンカーに入れたことが影響しましたね。最終日にとくに怖さがでたのでしょう」。最終日の18番・パー4では、ティショットを右に曲げてOB。「完全に左のバンカーを怖がって、右に打とうと体が反応したように見えました。スイングのリズムも速いし、トップも浅い。左が嫌で体が開いていました。ただ、打ち直しの球は開き直って打てていて、すごくよかった」。打ち直しをフェアウェイにおき、そこから1.5メートルに寄せてボギーとした。
■知れば知るほど苦しむ和合
優勝はメジャーチャンプの手に渡ったが、上位の面々を見ると新鋭が顔をそろえる。昨年覇者の宮里優作を始めベテラン勢が苦しむ中で、今平、昨年のチャレンジツアー賞金王の大槻智治、QTランク5位の資格で出場した狩俣昇平などがそうだ。
「コースを知っていると、打ってはいけないところが分かっているので振れなくなる。意外と、初出場や2回目などの選手が上位に上がってくるのは、知らないからこそガンガン攻めていけるというのもあるでしょう。狩俣選手や大槻選手など、来年、また出場したときにどうなるかが楽しみです」。
解説・細川和彦(ほそかわ・かずひこ)/ 1970年12月28日生まれ。ツアー通算8勝。1993年にプロ転向し、95年に初優勝。翌年には中嶋常幸以来となる20歳代での2試合連続優勝を達成。00年には米国男子ツアーの「ケンパーインシュランスオープン」で2位に入っている。青木功JGTO(日本ゴルフツアー機構)体制ではコースセッティング・アドバイザーを務める。

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