チームワークが光ったビリー・ホーシェル&スコット・ピアシー(撮影:GettyImages)

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「チューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオリンズ」は、昨年大会のプレーオフで惜敗したケビン・キスナー&スコット・ブラウン(ともに米国)組が首位で最終日を迎え、悔しい思い出を1年間抱えてきた、彼ら2人の雪辱戦になると予想されていた。
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だが、蓋を開けてみれば、キスナー&ブラウン組はスコアが伸ばしやすいフォアサム形式でありながら「77」と大きく崩れ、入れ替わって首位に浮上し、勝利したのはビリー・ホーシェル&スコット・ピアシー(ともに米国)の組だった。
「ビリーはショットからパットまで、すべてがグレートだった。11番のビリーのバンカーショットが僕らを好転させた。ここ数年、僕は不調だったけど、この優勝がきっかけで調子も上がりそうだ。すべてはビリーのおかげだ」とホーシェルにひたすら感謝するピアシーに対し、ホーシェルは「いやいや、僕ではなくチームワークのおかげだ。それに、最後にウイニングパットを沈めたのは僕ではなくキミだよ、スコット!」と言葉の掛け合いにもチームワークの良さを光らせていた。
2013年大会で米ツアー初優勝を挙げたホーシェルは、忘れがたき思い出の地で通算5勝目を挙げ、ピアシーは不調の闇から抜け出した喜びを噛み締めながら通算4勝目を達成。2人の前向きな姿勢とチームワークが、この日の大逆転勝利につながった。
今大会は、従来は通常のストロークプレー個人戦だったが、昨年からチーム戦に変わり、優勝しても翌年のマスターズ出場権はもらえなくなったが、そのぶんエンタテイメント性の高い楽しいイベントに生まれ変わった。
選手とギャラリー、テレビ中継の視聴者が一緒になって楽しめるよう、ライブ感や一体感のアップを目指し、今年は1番ティに立つ際に選手たちが自分で選んだ曲をかけ、それぞれの音楽に乗って登場する「ウォークアップ・ミュージック」を採用。予選落ちが決まった際の「ウォークオフ・ミュージック」もあり、ノリノリで踊る選手も現れて、試合会場は笑顔と活気に溢れた。
折りしも米ツアーは新たな広告キャッチフレーズ「Live Under Par(ライブ・アンダーパー)」を掲げたばかりだ。プレーする側と観る側、そして社会とのライブ感、一体感を図ることは、これからの米ツアーの課題でもある。
チューリッヒ・インシュアランスは05年から今大会のスポンサーになり、19年までのスポンサードが決まっていたが、契約をさらに7年延長し、26年までスポンサードすることを今大会最終日に発表した。昨年大会から個人戦をチーム戦へ変え、今年は新施策を採り入れてエンタテイメント性を高めたことが評価され、契約延長につながったそうである。
戦いの舞台、ルイジアナ州ニューオリンズは05年にハリケーン・カトリーナに襲われた被災地であり、その年から今大会のスポンサーになったチューリッヒ・インシュアランスは全社を挙げて被災地の復興と被災者の救済、チャリティ活動に尽力してきた。
そして今年はニューオリンズ市の300周年であり、ジャズをはじめとする音楽を同地で開催されているこのゴルフの大会に採り入れようと考えた試みは、米ツアーと大会スポンサーと、ニューオリンズ市が素晴らしいチームワークによって生み出した盛り上げ策。大会の収益がニューオリンズ市に還元されるチャリティの意味合いも一層強まったといえそうである。
今大会の成績は世界ランキングには加算されないが、優勝したホーシェルとピアシーには、それぞれに1億円超(103万6800ドル)のビッグな優勝賞金が支払われ、フェデックスポイントは他のレギュラー大会の優勝者同様に400ポイントずつが付与されるなど選手にとっての魅力はビッグに維持されている。
まさに、みんなの前向きな姿勢と意欲とチームワークから生まれ、みんなが笑顔になる大会。そして、いろんな意味で「盛り上げ」と「生き残り」を課題に掲げる世界中のゴルフツアーと大会関係者が何かしらを学ぶことができる大会となり、「チームワークのおかげで勝てた」と言ったホーシェルとピアシーは、そんな新生チューリッヒ・クラシックにふさわしいチャンピオンだった。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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