弁護士・柳原桑子先生が堅実女子の相談に応える本連載。今回は、松田玲子さん(仮名・38歳・公務員)からの相談です。

「かつて同僚だった夫と結婚して8年になります。2年前までは良好な夫婦関係だったのですが、夫がモラハラ上司の攻撃(あいさつ無視、みんなの前での叱責など)から仕事に行けなくなり、1年間の休職の後に退職しました。

それから1年間は、家で休養をしています。彼は生活費を出さず、私の給料で生活しています。その頃から、ちょっと気に入らないことがあると怒鳴ったり、壁を叩くなどしていましたが、最近は私の髪をつかんだり、顔や体を殴るようになりました。

それは回を追うごとにエスカレートしており、私は今、離婚を考えています。調子がいいときは優しい夫なのですが、何か気に食わないことがあると、血がでるまで暴力をふるってきます。むりやりキスをされるなどもありました。

もし今回離婚をするなら、慰謝料をガッツリもらいたいのですが、その場合の証拠はどのように残していくのがベストなのでしょうか。

また私はDV体質というか、かつての交際相手からもDVを受けていたことがあります。離婚した後、男性と交際して、またその人がDVだった場合、交際相手から慰謝料をもらうことはできるのでしょうか?」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?

暴力を振るわれたことを立証するには、“ケガの状態”という結果を証明する方法がまずは考えられます。

医師の診察を受けて診断書を作成してもらうことはもちろんですが、患部の写真を撮る(自撮りできればそれでも可)なども結果の証明になります。

さらによいのは、暴力をふるわれた経過を証明することです。暴力をふるっている最中の録画や録音などです。しかしDVは急に起こりますから、録画や録音は難しい場合もあると思います。無理はできないため、録音録画が厳しい場合は、できごとを日々書き留める日記等も有効です。

離婚時にDVを理由に慰謝料請求をすることについては、論理的にはできますが、加害者は認めないことも多いので上記のような証拠をもつのは大切です。

交際時においても、暴力は不法行為なので、慰謝料の請求はできます。

しかし、慰謝料請求のために暴力に甘んじるということではなく、何よりも身の安全を重視し、不運にも被害にあった場合には、早めに距離をおいたり警察などに相談した方が良いです。

繰り返される暴力は、行為一つ一つの苦痛が生じるのみならず、逆らわないようにするという支配関係を生み出しがちです。暴力を振るわれ続けるうちに被害者は、加害者にそのようなことをさせる自分が悪いという思考回路に陥り、その環境から脱する意思決定ができなくなったり、また他者への相談もしなくなるというように、DVの継続に進んでしまう恐れがあります。

「DVを受ける自分が悪い」と自分を責めている女性は意外と多い。パートナーや恋人との関係性を冷静に見直してみることも大切だ。



■賢人のまとめ
慰謝料請求のために暴力に甘んじるより、身の安全の確保を最優先してください。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/