FC東京を躍進に導いている長谷川監督。写真:田中研治

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[J1・10節]FC東京3-1広島/4月25日/味スタ
 
 監督次第で、チームはこうも変わるのか。3-1というスコア以上に内容で広島を圧倒した試合を観て、素直にそう思った。
 
 単純な戦力なら、大久保嘉人らが在籍した昨季のほうがおそらく上だった。しかし、昨季はチームとしてまったくと言っていいほど機能せず、J1で13位と低迷した。篠田善之監督(17年9月に解任)、後任の安間貴義監督(昨季終了後に退任)の下では攻守ともにチグハグで、視覚的にも面白くなかった。
 
 それが今季はどうだ。ディエゴ・オリヴェイラ、永井謙佑の2トップが躍動すれば、郄萩洋次郎、東慶悟、大森晃太郎らが献身的に振る舞う中盤も機能的。最終ラインこそやや安定感を欠いているが(10節を終えて11失点)、ここまで6勝1分3敗の2位と好位置につけている。結果と内容を両立させている背景にあるのは、長谷川健太監督の優れた手腕だ。
 
 長谷川監督がなにより素晴らしいのは、正しい競争意識をチームに植え付けている点だ。「区別はしますが、差別せず、フラットなスタンスでスタメンなどを決めます」と指揮官自身が言うように、今季はレギュラーを固定しているわけではない。例えば現在好調の永井も、左サイドバックで高精度のクロスが光る小川諒也も、今季の開幕当初はサブメンバーで、そこからチャンスをモノにしてスタメンの座を掴んでいるのである。
 
 結果を出せば試合で使う──。そういう風に見える指揮官のスタンスが選手たちの闘志に火をつけ、好循環を生み出しているような気がする。
 
チームの雰囲気の良さは、試合後のミックスゾーンからも窺える。選手に話を聞いてもポジティブな話題が多く、昨季のような重々しい空気は微塵もない。
 
 選手起用で特筆すべきは、D・オリヴェイラと永井の2トップだろう。テクニックとフィジカルを兼備した前者、爆発的なスピードを誇る後者は相互補完性がばっちりで、視覚的にも特長が分かりやすい。前線の“目印”がはっきりしているからか、選手たちのプレーには迷いがなく、結果的に効果的な速攻につながっている。
 
 昨季はそこまで活躍していなかったD・オリヴェイラや永井の能力を最大限に引き出し、それをチームの新たなストロングポイントに仕立てた点で、やはり長谷川監督の手腕は素晴らしい。
 
 開幕3試合勝ち星なしから急浮上。FC東京の躍進は、選手の頑張りはもちろん長谷川監督の好采配なしにありえなかった。
 
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)