「監督を代えればチームの状態が必ず改善するわけじゃない」と語るセルジオ越後氏

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日本代表の新監督に西野朗氏が就任した。記者会見では緊張のせいか終始、表情が硬く、暗い感じだった。笑顔を交えて爽やかにしゃべってほしかったけど、まじめな性格なだけに難しかったのだろう。「大変なことに巻き込まれた」という気持ちが顔ににじみ出ているように見えた。

また、肝心の発言内容も同じようなことの繰り返し。報道陣からの様々な質問にも、答えているようではっきりと答えていなかった。元々、話術が巧みな人ではないけど、具体的な中身に乏しかったね。

もっとも、ロシアW杯まで約2ヵ月というタイミングでの急遽の監督就任だから、あの場で明確なビジョンを示すのは難しかったとは思う。「さて、これからどうしようか」が彼の本音だろう。

実際、これからW杯開幕までの短い期間で西野監督にできることはあまりないし、彼に多くを期待すべきではない。彼の監督就任が決まって以降、1996年アトランタ五輪でブラジルを破った“マイアミの軌跡”の再現を期待する声も聞こえてくる。でも、もう20年以上も昔の話だし、そればかりクローズアップされるということは、つまり他にポジティブな要素が見当たらないということ。

また、どのスポーツでもそうだと思うけど、監督を代えれば、チームの状態が必ず改善するわけじゃない。過去現在、名監督はたくさんいるけど、マジックなんてない。ピッチでプレーするのはあくまで選手だ。

振り返れば、2002年日韓W杯の時のトルシエ監督もかなりクセのあるキャラクターで、選手との関係は決して良好ではなかった。それでも選手たちが「このヤロー」「チクショー」と言いながら結果を出した。

今回の監督交代劇は、選手からハリルホジッチへの不満が噴出したことによるものと言われている。つまり選手が監督を代えさせた。どの選手が「コミュニケーションに問題がある」と訴えたのかはわからないけど、こうなった以上、あとは選手が結果を出すしかない。もう言い訳はできない。

ポジティブな要素を挙げるなら、西野監督が就任して言葉の壁がなくなること。「長すぎる」と不評だったミーティングも短くなるはず。何よりチームの空気が新鮮なものになる。

ステージは違うけど、Jリーグでも今季早々に監督交代を行なった浦和は、すぐに調子を取り戻した。そういうケースもある。ただし、浦和の場合はサポーターが「おまえら、新監督のもとでちゃんとやれよ」と選手に圧力をかけているわけだけど、日本代表の場合はよくも悪くもファンが選手に対して優しくて甘い。それがどう出るか。いずれにしても監督、選手、スタッフ含めた全員が「やるしかない」と一致団結できるかどうかだね。

あとはハリルホジッチが27日に会見を開くという話がある。その内容によっては西野監督、選手にとって大きな逆風が吹く可能性もあるだろう。そこはちょっと心配だ。

僕はかねてからハリルホジッチを解任すべきだと言ってきたし、今も解任は当然だと思っている。とはいえ、今さら言っても仕方のないことだけど、日本サッカー協会の決断はあまりにも遅すぎた。その弊害の大きさをあらためて感じるよ。

(構成/渡辺達也)