「仕事は盗め」は正論なのですが…(イラスト:ずんずん)

会社がつらい、辞めたい……。そう思う人は、仕事そのものというより、職場の人間関係で行き詰まっていることも多いかもしれません。自分自身に原因があるとは限りません。会社のあちこちに生息する「困ったおじさん、おばさん」に追い詰められていることも。
そんな恐るべき現場を数多く見てきたのが、元外資系OLでコラムニストのずんずんさん。この連載では、そんな彼らの生態を解き明かし、対策も考えていきます。

こんにちは! ずんずんです。


ずんずんさんによる新連載。この連載の一覧はこちら

新社会人の皆々様方におかれましては、会社に入って1カ月、無事にサバイブされていますでしょうか。

新卒1年目の働き方は、その後の人生の働き方を決めるといいますので、最初の教育担当者は新社会人にとってとても大切な存在です。

私は新卒から“ブラックオブブラック”な会社に入ったため、1年で4回上司が辞め、最終的に自分が責任者になるという災難にあい、平穏とは程遠い社会人生活を送る羽目になりました。なので、親身になってくれる先輩や上司がほしかったなぁなんてことを今でも思います。

しかし、良い先輩や上司にあたるってことは、人生においてなかなか起こらないレアイベントです。新人時代、部下を育てられない上司にあたってしまったとしたらかなり大変です。いつまでたっても、雑用ばかりさせられて、仕事を覚えることができないかもしれません。

もしかしたらその上司……プレーヤーおじさんかもしれませんよ?

本日の困ったおじさんはエントリーナンバー8「プレーヤーおじさん」です。

部下を育てる気がない

プレーヤーおじさんとは、その名のとおり、管理職になったのに今でもバリバリのプレーヤーのおじさんの事です。プレーヤーとして一流で仕事ができまくるのはいいのですが、このおじさん、部下を育てられないのです……。

部下を育てられないというか、育てる気がないのです。

育てる気がないので、新人が入ってきても放置してしまいます。仕事が覚えられない新人は、社内ボッチになって居心地が悪くなり、スキルアップもできず、ただ腐っていってしまうのです。

A美さんが出会った上司も、このプレーヤーおじさんでした。A美さんは、大学時代に留学経験もある、おっとりとした才色兼備の女性です。大学卒業後、金融機関のバックオフィスで働き、5年ほど経験を積んだ後、給料アップを狙って、違う金融機関に転職しました。

転職先の彼女の上司は、会社に10年以上いる古株です。A美さんにとっては初めての転職で、わからないことばかりです。会社のシステムもわからない、会社の人もわからない、……そんな状況の中、上司はA美さんを放置しました。

いつも忙しそうで、A美さんの面倒はまったく見ません。周りの人も忙しそうで、A美さんに教えてくれる人はいません。入ったばかりのA美さんは正直ヒマでした。

時々、上司から任される仕事は、書類整理といった雑用ばかりで、これでは彼の秘書のようなものです。入社して1カ月、引き継ぎも何も行われない状況を不満に思ったA美さんは、上司に、

「もうちょっと、仕事を教えてください」

と直訴しました。

「仕事は自分で作るものだ」

すると上司は「何言ってんだこいつ?」という顔で、

「仕事は自分で作るものだ」

と言ったのです。これにはA美さんはぽかーんです。

これは話にならないと、A美さんは上司のさらに上司である部長に掛け合ってみました。すると、部長は歯切れ悪く、

「彼は、ああ言う人だからね。まあ、仕事は盗んで覚えるものだよ」

と言うだけで取り合ってくれません。

世の中、クリエイティブ系の職種など、先輩の背中を見て盗んで覚えるしかない仕事もあるにはあるでしょう。でも、ここは金融の世界。職場全体のパフォーマンスをあげるために、教えたほうがいい仕事も多いのです。にもかかわらず、まったく教えようとしない上司。

この会社はあかん……!

A美さんは絶望しました。が、転職してせっかく給料がアップしたばかり。すぐに会社を辞めたくはありませんでした。そこで、A美さんは全力を出すことにしました。

A美さんは社内で人脈を増やし、自分の能力で何ができるかを考えたのです。A美さんは同僚の仕事を見て覚え、業務の改善点を提案し、上司に自分がどんな仕事がやりたいかを積極的に伝えていきました。

そして、上司に少しでも気に入ってもらえるよう彼と同僚たちとで、毎週ゴルフにも行きました。むしろ仕事とゴルフしかしてなくない? みたいな生活になりました。

その結果、A美さんはこの部署が何をしているかだんだんと理解できるようになってきました。積極的に上司に何をやりたいか伝えてきたかいもあり、希望どおりの仕事もふられるようになり、そして1年後……

A美さんは、めちゃくちゃ忙しくなりました。

ありがたいようなありがたくないような……。

プレーヤーおじさんは、仕事は盗んで覚えろ、自分で作れという職人気質なビジネスパーソンでもあります。そのため、部下を育成するということにはあまり興味がありません。

1から10まで教えて! といった受け身の態度では、この上司の下ではまったく自分の能力を伸ばすことができないのです。

彼らから学ぶことはたくさんある

しかしながら、このプレーヤーおじさんは優れたプレーヤーでもあります。彼らから学ぶことはたくさんあるのです。

ある一定の年齢になれば、誰かから教えてもらえるということもほとんどなくなっていきます。プレーヤーおじさんにあたってしまったそのときこそが、独り立ちのチャンスなのです。

その後のA美さんは、新しく入った後輩には懇切丁寧に仕事を教えているそうです。が、「それではいかん!」と上司に注意されているそうで……。どちらがいいかは考えものですね。

といったところで今日は失礼します☆