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もくじ

ー 2000万台規模に育った中国市場
ー グローバルな自動車産業に対する影響
ー 電動化の野望
ー 三拍子そろったフォルクスワーゲン
ー 中国の時代

2000万台規模に育った中国市場

すでに数千万台の規模に育った中国市場で、地球最大の自動車メーカーが市場を独占しようと決意した。当然だろう。

2017年、フォルクスワーゲンは英国で年間20万8462台を販売した。いっぽう中国では34万1888台だ。ただし、12月だけで。

昨年1年間で、フォルクスワーゲンの中国での3企業(自社企業1社とジョイントベンチャー2社)は317万7000台を販売した。フォルクスワーゲンの総販売台数623万台の実に半数以上だ。

この販売台数は、1日に8704台、または10秒に1台が売れているということになる。フォルクスワーゲンは中国でもっとも販売台数の多い自動車メーカーである。

ハーバート・ディエス社長が「中国は今後の戦略の死命を制する」というのも頷ける。

中国の自動車市場の大きさ(昨年の販売台数は2420万台)とさらなる拡大の余地により、フォルクスワーゲンのみならず世界中の自動車メーカーにとって、中国は最優先の市場となっている。

同様に、現在の自動車産業の世界的な主要トレンドは、本を正せばすべて中国に行きつくのだ。

グローバルな自動車産業に対する影響

現在の自動車業界におけるクルマの3大トレンド(つまり、SUV、コネクテッドカー、それに電動化)は、すべて中国によって加速する。

2012年以降、中国でのセダンの売り上げは伸びていないのに対して、SUVの売り上げは年間1000万台以上にまで成長し、今や全販売台数の半数を占める。

このためフォルクスワーゲンは、2020年までに中国で販売するSUVの車種を現在の3車種から大幅に増やす計画だ。

中国の消費者は大きなクルマに対する信仰があり、ゆえにSUVに惹かれる(そのため中国ではストレッチ・サルーンも数多く販売されている)。

ちなみに新型トゥアレグを含めて、多くのSUVが欧州人の目から見ると鉄面皮なフロントデザインになるのも、中国人の好みのせいである。

なお、SUVの伸びは若者によって支えられている。中国の自動車販売の65%は初めてクルマを買う顧客で、購入者の平均年齢は34歳。欧州では50代半ばである。

そういう若い購買層はコネクテッドカーに対する要望も強い。中国のスマホ契約者は3億5000万人で、オンラインショッピングの市場は5320億ポンド(81兆4000億円)に上っている。

電動化の野望

若い購買層は、電動自動車にもご執心だ。またこれは中国政府の方針でもある。政府は厳しいCO2ルールを導入し、新エネルギービークル(NEV)の育成を促している。「メイド・イン・チャイナ2025」運動の礎石にしたい考えだ。

このため、フォルクスワーゲンは開発中の電動MEBプラットフォームの完成を待たず、2020年までに電動自動車を10車種発売する計画である。引き続いてMEBベースのNEV10車種を投入する。

フォルクスワーゲンは2025年までに世界で100万台のEVを販売する計画で、そのうち65万台が中国だ。

フォルクスワーゲン中国R&Dの所長スヴェン・パツーシュカはこういう。「中国は革命的ですね。成長著しく、どんどん技術を飛び越えていきます。中国にはワゴンはありません。若い顧客はまっすぐSUVに飛びつくんですよ」

三拍子そろったフォルクスワーゲン

フォルクスワーゲンは1984年以来中国の自動車市場で存在感を持ち続け、三段戦法で中国最大の自動車メーカーになった。

最初、フォルクスワーゲンはジョイントベンチャー上海SAICフォルクスワーゲンとして中国に参入した。その後1990年に北東の都市、長春にFAWフォルクスワーゲンを開設する。そして仕上げが北京を本拠地とするフォルクスワーゲン・インポートの設立である。

3社はそれぞれ異なった地域の市場を担当しており、独自のモデル構成を持つ。フォルクスワーゲンの販売のトップであるユルゲン・スタックマンは、このふたつのジョイントベンチャーの公平を保つよう努力しており、ディーラー数、モデル数ともほぼ同じであるという。

このため、フォルクスワーゲンは中国向けモデルのラインナップを急拡大しており、例えば最近、同サイズの中国専用SUV2車種の販売を始めた。各ジョイントベンチャーに1台ずつ割り当てるためだ。

モデルの割り当てはどのように決定するのか?「大喧嘩になることもありますね」とスタックマンはいう。

中国の時代

2010年、中国の8大自動車メーカーのうち中国企業は1社だけ。奇瑞汽車がようやく8位に入っていた。

昨年になると上位8社のうち3社が中国企業で、ジーリー(吉利汽車)が3位に食い込んだ(フォルクスワーゲンとホンダに続いて)。宝駿が7位、長安汽車が8位である。

国産自動車メーカーには伝統といったものがないので、大流行の兆しがある電動SUVで成長を加速させようとしている。これらのモデルはもはや欧州デザインのパクリではない。

フォルクスワーゲン中国の社長ステファン・ウォレンシュタインは、現代の中国のクルマは「偉大な製品」だという。

外国企業であるにもかかわらず、フォルクスワーゲンは過去を引き合いに出して国産企業と戦っている。

「中国で車に乗ったことがあるひとなら、われわれの栄光あるクルマに乗った経験をお持ちでしょう。サンタナとジェッタです」とウォレンシュタインはいう。

「われわれのブランドの精神的な拠りどころですね」