GWには美味しい旅を。
長崎に浮かぶ、祈りの島。【五島列島・福江島】で豊かな食文化と自然を体感しよう!

長崎の西海に浮かぶ五島列島・福江島。長年秘められてきた、キリスト教信仰の史跡と穏やかな自然に、心が鎮められていく。ゴールデンウィークは、そんな五島列島・福江島で食巡りをしませんか?

長崎空港からプロペラ機で約30分、140以上の島々からなる五島列島は東シナ海に浮かんでいる。ここ福江島は、五島列島の中で面積最大の島。空港のそばには気軽にハイキングができる山・鬼岳が立つ。登頂すると、ぽこぽこと連なる列島を360度見渡すことができ、島には穏やかなビーチが多いのもわかる。

キリスト教信仰の史跡がここに。

ここは、かつて弾圧を受けた「潜伏キリシタン」の歴史が息づく島。16世紀末にキリスト教禁制が始まると、人々は隠れて信仰を継続。その後さらに迫害が強化されると、長崎の信者たちが五島に移り住み、島には潜伏キリシタンが増えていった。

五島列島には、各島合わせると20の教会があり、福江島には五島においてキリスト教布教の重要拠点となった〈堂崎教会〉が厳かに佇む。1873(明治6)年に禁制が解けたのち次々と建てられた教会は、ゴシック様式の建築方法と日本元来の技術がミックスされ、世界的にも珍しいデザインをしている。

■長崎県五島市奥浦町堂崎2019
■095-893-8763(長崎巡礼センター)
■9:00〜17:00(冬季〜16:00)
■拝観料は大人300円。

堂崎教会のある奥浦地区は島の外れといわれるが、〈菓子工房nokonoki〉内にあるこのカフェは、教会巡りの休憩場所として重宝されている。併設のカフェ〈巡礼茶屋Oratio〉では、BGMの聖歌を聴きながら、手作りの焼き菓子で一息つこう。

パンケーキセット880円(税込)のほか、壁を飾る聖画、パンケーキにトッピングされた十字架クッキー、ショップで販売する「御堂さまサブレ」(1枚140円、税込、写真上)などキリスト教にちなんだ品も並ぶ。

■長崎県五島市奥浦町1995
■0959-73-0969
■10:00〜17:00/水、第3木休
■10席/禁煙

豊かな食文化を丸かじり。

長崎港から福江港へは、ジェットフォイルかカーフェリーで。港には各島をつなぐ船の往来が頻繁にあり、にぎわっている。島を囲む海岸線は複雑に入り組んでいる。そのおかげで、五島の海は日本屈指の好漁場として名高く、ブリやマグロなどの養殖業も盛ん。福江島には平地も多いため、稲作や畑作も行われ、ブランド牛「五島牛」をはじめとした畜産にも精力的だ。肉も魚も米も野菜も、島採れ食材が豊かな福江は、食い道楽を存分に楽しませてくれる島なのだ。となれば、新鮮な地元食材をふんだんに使う料理人のいる店へ。

〈ニク勝〉は、包丁で肉をさばく「肉挽き」という仕事に誠実に取り組む精肉店。肉の筋を正しく丁寧に取り除き、調理方法に応じた切り方にそろえていく。島の人がここで肉を買うのは特別な日。けれど五島牛入りコロッケ(1個80円、税込)なら、子どものおやつにもぴったりだ。

■長崎県五島市富江町富江225
■0959-86-2475
■8:00〜18:00/日休

ゆったりとランチを楽しむなら〈Big wave cafe〉でコースをいただこう。大阪国際ホテルやアラブ首長国連邦の日本大使館シェフなどの経歴を持つ篠田公三さんと妻の由美さんが故郷で営む、完全予約制のレストラン。写真は五島パエリアコース(2,000円、税込)より前菜とパエリア。キビナゴやトマトなど五島の食材を使った瓶詰めも人気。

■長崎県五島市三井楽町濱ノ畔2945-4
■0959-84-2308
■11:30〜14:00(13:00L)/土日のみ営業
■20席/禁煙

旅の最後には「鬼鯖鮨」をお土産に。〈鬼鯖〉は、鯖鮨を五島の名物に押し上げた立役者。マイルドな旨酢に浅く漬け、真鯖本来の味が引き立つよう仕上げる。さらに五島産の米「ヒノヒカリ」や無添加醤油にもこだわる徹底ぶりだ。毎朝3時から手作業で作り、空港や港に出荷しているが、直営店に行けばいつでも確実に手に入る。鯖を2枚重ねた「鬼鯖鮨(ダブル)」2,916円(税込)

■長崎県五島市上大津町1161-1
■0959-88-9110

堂崎教会の隣の〈BABY QOO〉には、見に行きたい笑顔がある。85歳の看板娘・白濱ケサヨさんがスタンドから顔を出す姿が、ホッと和ませてくれるのだ。、長崎名物のチリンチリンアイス300円(税込)。息子の實男(じつお)さんが手がけた看板や内装にもキュン。スタンドでの販売が主だが中庭には席もあり、店のアイドル犬QOO(クー)と一緒に過ごすのもいい。

■長崎県五島市奥浦町1997
■090-8765-3581
■8:00頃〜17:30頃/不定休
■5席/禁煙

おいしいものに恵まれているからか、島民の笑顔は弾むように明るい。高校卒業後に島を出た人たちがUターンなどで島に戻ったり、移住者が増えたり、島はますます活気付いている。コミュニティカフェ〈ソトノマ〉には、移住を希望する若者も集まってくるという。

カフェやファーマーズマーケット、コミュニティスペースなど様々な使い方ができ、島の作家が作る雑貨も店主・有川和子さんがセレクト販売。店は倉庫を有川さんの手でリノベーションし
た気持ちのいい空間だ。「ソトノマ日替」(ランチ780円、税込、写真右)に使われる五島野菜は店で購入可。

■長崎県五島市堤町1348-1
■0959-88-9081
■9:00〜21:00/火休
■20席/禁煙

人も、自然も、食材も、みんな優しく包んでくれる。

水ノ浦教会の奥の丘を歩き進むとキリスト像が港を見守っている。島の自然に触れ、食材をいただき、地元の人たちと会話していると、確かにずっとここにいたくなる。

■長崎県五島市岐宿町岐宿1644
■095-893-8763

(1137号掲載:photo : Tetsuya Ito text : Kahoko Nishimura)