航空自衛隊F-2戦闘機の後継機開発を巡り、議論が続けられています。国内開発を断念したとしても新しい戦闘機は必要なのですが、どのように調達するのでしょうか。

F-2後継機、国内開発断念か?

 2018年3月上旬、複数の報道機関は、航空自衛隊が運用しているF-2戦闘機の後継機について、国内開発を断念し、外国との共同開発(国際共同開発)を行なう方向で調整が進んでいると報じました。


先進技術実証機X-2。X-2の開発により日本はステルス技術などをある程度会得している(竹内 修撮影)。

 小野寺五典防衛大臣は3月6日の記者会見で、「国内開発を断念したという事実は無い」と述べています。ただ、一説によればF-2後継機を国内開発した場合の経費は1兆5000億円ともいわれており、現在の日本の財政状況では、国民から巨額の開発費の支出の理解を得ることが難しいことなどから、技術を持つ外国の政府や企業と開発費を分担することで、支出を抑えられる、国際共同開発の可能性が高くなっているのは確かだと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)には思われます。

 軍用機の国際共同開発は大きく分けて4つの手法があります。

 ひとつめはすでに存在する軍用機をベースに改良を加えるという手法で、F-16戦闘機をベースに、ジェネラル・ダイナミクス(現ロッキード・マーチン)が協力して、航空自衛隊の要求を充たすべく大幅な改良を加えたF-2がこれにあたります。

 ふたつめは自国軍への採用を前提としない外国の政府やメーカーの支援を受け、新型機を開発するという手法で、アメリカ政府とロッキード・マーチンの支援を受けて韓国が開発したジェット練習機T-50などがこれにあたります。

国際共同開発にもいろいろある

 3つめはひとつの国が打ち出した、自国の軍で使用する新型機の開発計画に、複数の国が相乗りするという手法で、アメリカ空海軍と海兵隊が運用している複数の戦闘機を更新する「JSF(Joint Strike Fighter/統合打撃戦闘機)」計画に、イギリスやイタリアなど8ヵ国が相乗りする形で開発されたF-35などが該当します。


アメリカの計画に8ヵ国が相乗りして開発されたF-35(竹内 修撮影)。

 4つめは複数の国が自国の軍の要求をすり合わせた上で新型機を開発するという手法で、ユーロファイター「タイフーン」やパナヴィア「トーネード」などが、この手法によって開発されています。

 現代の軍用機は性能の向上にともない、開発や生産にかかる費用も上昇の一途をたどり、もはや一国で開発費と生産費を負担するのは困難になりつつあります。このため国際共同開発の事例は年々増加しており、F-2後継機も高い性能を求めるのであれば、国際共同開発にならざるを得ないと言えます。

 では F-2後継機が本当に国際共同開発となる場合、どの手法が使われることになるのでしょうか。

F-2後継機、国際共同開発の現実的な路線は?

 ひとつめの手法を用いる場合、F-2後継機が導入から50年近く運用されることを考えると、ベース機となり得るのはF-35しかありません。

 F-2後継機には、おそらく新型対艦ミサイル「ASM-3」など、国内で開発された兵装の搭載能力が求められることになると思われますが、F-35には中射程の空対空ミサイルであればAIM-120 AMRAAMといった形で、標準搭載兵装が定められているため、F-35の共同開発に参加していない日本が独自開発したミサイルなどの運用能力の追加は難しいものと考えられます。


F-35(左)とF-22(竹内 修撮影)。

 複数の報道機関は4月20日に、「ロッキード・マーチンがF-35とF-22をベースとする共同開発案を、日本政府に打診した」と報じています。報道によればこの案は「F-22の機体にF-35の電子機器類やステルス技術を組み合わせた戦闘機を日米で共同開発する」というものです。

 F-22の生産はすでに終了していますが、アメリカでは2016年から2017年にかけて、ロシアと中国に対抗するため、国防総省と議会でF-35の技術を組み込んで、F-22を再生産する案が検討されていました。この案は結局実現しませんでしたが、アメリカ議会下院では再生産が実現した場合、輸出も検討すべきとの声が上がっていました。今回の報道が事実であれば、おそらく国防総省と議会のF-22再生産推進派の働きかけによるところも、大きいのではないかと思います。

 航空自衛隊はF-4EJ改の後継機を導入する際、F-22を第一候補としていました。またF-22はF-35に比べて、日本製のミサイルなどを搭載するための改修のハードルも低いと思われます。もしこの提案がなされたら、航空自衛隊が魅力を感じることは間違いないでしょうが、F-22は1機約200億円と価格が高く、また国内の防衛産業が、どこまで開発、生産に関与できるかが未知数であるといった問題があります。


韓国の航空機メーカーKAIがロッキード・マーチンと共同開発したT-50練習機(竹内 修撮影)。

 ふたつ目の手法を用いる場合は、先進技術実証機「X-2」の開発によって会得したステルス技術をはじめとする、これまでの研究開発の成果を活かしつつ、欧米の政府やメーカーから技術支援を受けて独自の新型戦闘機を開発することになります。航空自衛隊の要求を完全に充たす戦闘機を開発するのであれば、この手法のほかに道はありません。

 防衛装備品の調達や開発を担当する防衛装備庁は2016年6月に、国内外のメーカーに対して、将来戦闘機を導入する際、そのメーカーがどのような提案をできるかを質問する、「RFI」(情報提供要求)を発出しています。このRFIに対してはアメリカのボーイング、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、スウェーデンのサーブが回答したことを明らかにしており、おそらくイギリスのBAEシステムズやイタリアのレオナルド、エアバスの防衛部門であるエアバス・ディフェンス・アンド・スペースといった航空機メーカーや、プラット・アンド・ホイットニー(アメリカ)などのエンジンメーカーなどが回答を寄せたものと見られています。各メーカーにはそれぞれ強みがありますので、日本の弱点を最も補ってくれそうなメーカーを、共同開発のパートナーを選定することになります。

相乗りは乗り遅れ? 手の空いている適切なパートナーは…

 3つめの手法の場合、アメリカ空軍がF-15やF-22の後継機と位置付けている「PCA(Penetrating Counter Air)」と呼ばれている新戦闘機計画や、アメリカ海軍がF/A-18E/F「スーパーホーネット」の後継機として研究を進めている「F/A-XX」、2017年6月にフランスとドイツが共同開発に合意した、ユーロファイター「タイフーン」とダッソー「ラファール」の後継機への相乗りが考えられます。ただしF-2の退役開始が2030年ごろと見積もられているのに対して、PCAとF/A-XXの実用化は早くて2030年代半ば、ドイツとフランスの新戦闘機は2040年代の実用化を目指しており、F-2の退役開始が予定通り始まるとすれば、間に合わないことになります。


ボーイングが発表したF/A-XXのコンセプトCG(画像:ボーイング)。

 一部メディアは、F-2後継機の開発開始時期を先送りにするとも報じていますが、これが事実だとすれば、防衛省と航空自衛隊に他国の動向を見極めたいという気持ちがあるからなのではないかと思われます。

 アメリカ、フランス、ドイツという高い技術力を持つ国々が独自に新戦闘機の開発計画を進めているため、4つめの手法を用いる場合のパートナー国は、イギリス、イタリア、スウェーデンといった国々が考えられます。そのなかで最も有力なパートナー国となり得るのはイギリスでしょう。

 防衛装備品の調達や開発を担当する防衛装備庁は2017年3月に、イギリスとのあいだで将来、戦闘機に関して両国が協力できるかについての話し合いをすることで合意しています。イギリスはユーロファイター「タイフーン」の後継機を単独開発ではなく、共同開発する方針を明らかにしており、日本とイギリスの思惑が一致すれば、日英両国による新戦闘機の共同開発という話に進む可能性も皆無ではありません。

国際共同開発、もちろんデメリットも

 国際共同開発には一国の開発・生産費負担を抑えられるというメリットがある一方で、開発参加国の足並みが乱れると、予定通りに開発が進まなくなるというデメリットもあります。


共同開発参加国の足並みの乱れで実用化が遅れた、ユーロファイター「タイフーン」(竹内 修撮影)。

 ユーロファイター「タイフーン」は元々、1980年代にイギリス、フランス、西ドイツ(当時)、イタリア、スペインの5か国による共通戦闘機として計画がスタートしたものですが、1985(昭和60)年に空母艦載機としての能力を備えることと、自国のメーカーが開発したエンジンの搭載を主張したフランスが、その意見が受け入れられないことから脱退。その後イタリアとスペインを加えて開発の続行にこぎつけましたが、1992(平成4)年には東西ドイツの統一により、旧東ドイツのインフラ整備に多額の資金を必要としたドイツが脱退を表明。最終的にドイツは脱退を取り下げたものの、ドイツを説得するために時間を必要としたことなどから、当初1990年代前半を予定していたユーロファイターの就役は、10年近く遅れた2003(平成15)年にまでずれこんでしまいました。

 ユーロファイター「タイフーン」ほど大きな混乱には至っていませんが、F-2もアメリカ側が電機信号によって補助翼や昇降舵、方向舵などを制御する「フライ・バイ・ワイヤ」のソフトウェアの情報開示を拒否し、自力開発を余儀なくされたことなどから、就役時期が若干遅れ、また開発費の支出額も、当初予定をオーバーしています。

費用面だけではない、国際共同開発の見えにくいメリットとは

 ユーロファイター「タイフーン」やF-2の開発にともなう混乱のイメージから、日本では国際共同開発にはあまりいいイメージが持たれていませんが、国際共同開発には、開発・生産費を抑えられる点以外のメリットもあります。


スバルの半田工場(愛知県半田市)で最終組み立て作業中の、ボーイング787中央翼(画像:スバル)。

 F-2の開発が開始された1990年代前半、アメリカの製造業は低迷しており、原型機であるF-16の開発・製造を担当していたジェネラル・ダイナミクス(現ロッキード・マーチン)の工場を訪れた三菱重工のスタッフは、使った工具がそのまま放置されている、製造現場の乱雑さに驚愕しました。そこで三菱重工側から日本の製造業が得意とする「カイゼン」を提案したところ、ジェネラル・ダイナミクスの工場の生産効率は飛躍的に向上したといわれています。

 F-2は従来の戦闘機に比べて炭素繊維などの複合材料が多用されていますが、その技術がアメリカ側から認められたことによって、日本の航空産業は複合材料を多用するボーイング787の製造に参画する道が開けました。国際共同開発について考える場合は、このような目に見えにくいメリットがあることも、頭に置いておくべきだと言えるでしょう。

【画像】エアバスが描く将来の戦闘機


エアバスの防衛部門エアバス・ディフェンス・アンド・スペースが発表した将来戦闘機のコンセプト(画像:エアバス・ディフェンス・アンド・スペース)。