私の目に素敵に映ったものを、みんなと共有したいんです

写真拡大

「美女採集」「Complex」シリーズ等で注目を集めるアーティスト・清川あさみが、GW期間中の4月27日から5月6日まで、東京・表参道で「清川あさみ個展 ADASTRIA 美女採集 by ASAMI KIYOKAWA」を開催する。

【写真を見る】“美女採集”されたゆりやんレトリィバァ。モチーフはエボシカメレオン/[c] AsamiKiyokawa

同個展をサポートするのは、「グローバルワーク」「ニコアンド」など、20を超えるブランドを展開するカジュアルファッション専門店チェーン・アダストリアだ。

今回の個展の内容や、清川あさみの創作の重要なテーマである「美女」について、清川さん自身にお話を聞いた。

――今回の個展ではどのような展示を予定しているんでしょう?

清川:最新の「美女採集」4作品に加えて、今までに公開した「美女採集」の作品からも展示します。ほかにも新作も公開します。会場全体では100点以上の作品が並ぶ予定です。それらを通じて「美女採集」ができるまでの過程や、美女採集の“過去と現在”を公開したいなと。

――新たな「美女採集」は和田アキ子さん、ゆりやんレトリィバァさんなど、これまた個性の強い“美女”が揃っていますが。

清川:和田アキ子さんは今年で芸能活動50周年だそうですが、50年間トップを走っている方なので、実際にお会いしてみて50年やり続けられる理由がわかったし、一方ですごく繊細な部分も持ち合わせている方でした。

なので、ふだんみんなが見ている和田さんと、私が実際に見て感じた和田アキ子さんを混ぜ合わせたような作品イメージにしました。

ゆりやんレトリィバァさんは女芸人でナンバーワンになったのをきっかけにいろいろ見るようになったんですけど、結構豪快に面白いことをしている一方で、急なフリにちょっと弱かったりと、可愛らしさもあって。それがみんなに愛される要素のひとつなんじゃないかなと感じていました。

そのあと実際にお会いしましたけど、彼女に会ったひとはみんなきっと彼女のことを好きになるだろうし、とても愛着のあるキャラクターでしたね。

――清川さんの考える「美女」の条件とは?

清川:今までやってきた美女採集の中には、もともと綺麗な方もいっぱいいるんですが、人としての在りようだとか、人生を楽しんでいるかどうか、コンプレックスや悩みを抱えているところなども含めて、それらを前向きに「個性」に変えている人、それを私は“美女”と呼んでいます。

――コンプレックスや悩みといった一見ネガティブな要素すら、清川さんの定義する“美女”には含まれると。

清川:はい、私はそれが“美女”の要素になると思っていて。人って悩んだり考えることによってどんどん脱皮していくと思うんですよ。

どのタイミングでなるかはわからないんですけれども、それを個性として変換できる、あるいはできそうだと思った人を“美女”だと捕らえています。後はギャップのある人ですかね。ギャップがある人にはすごく魅力を感じます。

――「コレクション」や「図鑑」などではなく、美女“採集”という表現を選んだのには理由がありますか?

清川:私の場合、写真に対して針と糸で刺繍などをするんですけど、これって画家でいうと、筆とか油絵の具と同じなんです。と同時に、写真に刺繍を加えることで作品が立体的になるじゃないですか。

ひとつの作品を作るのに非常に時間がかかるっていうのもあるし、単なるコレクションじゃないぞっていうところも含めて“採集”ですかね。気づけばこの“採集”をはじめてからもう15年も経っていて、自分でもびっくりです。

――これまでに採集されてきた“美女”はのべ何人くらいでしょう?

清川:200人以上になりますね。

――逆に考えると、15年でも200人しか採集できないということは、やはり1人に対して相当時間をかけているということですよね。

清川:実際に採集するときは写真はもちろん、撮影用の衣装も全部自分でやるんですけど、それこそ布とか材料だけを用意して、現場で作って、撮影して、仕上がった写真には針と糸を通して……。

とにかく「いいな」と思い入れた人が現れたら、ずっとリスペクトし続けて、その人を好きになって、作品の中に“採集”するまで頑張る、って感じです。

――清川さんの作品を拝見すると、その多くに“自然”を感じます。「ナチュラル」ではなくて「ネイチャー」のほうの。そのあたり、ご自身では意識されているんでしょうか。

清川:私、出身が淡路島なんですけど、やっぱり都会に比べたらそんなに情報があふれてるわけじゃなくて。自然と、あとは“人”。なので、注目するものがどうしても自然と人間になるのは確かにそうかなと。

それと、自分の中では糸って“生きてる”感じがして、無機質な写真に有機物を重ねることで新しい生き物になる感覚があるというか、その感覚を見つけた時に「やっぱりこれが自分らしいな」と思いましたね。

――なるほど。

清川:私の作品を知っている人は、「そんな手間ひまかけずに、全部デジタルでもいいじゃん」っていう人もいると思うんですよ。もちろんデジタルも好きですけど、人の手を入れる過程が自分の中では一番大事で、写真という無機質なものに針と糸で刺繍をほどこすことで、大げさですけど「命を吹き込む」感覚があるんですよ。それが、自分が“採集”した人をちゃんとリスペクトするということなんです。

――今までに“採集”した人の中で、特に印象に残っている方はいますか。

清川:こんな短い期間で4人もの方を採集したのは初めてなので、今回採集した方々はみなさん印象深いですね。過去に採集した方だと…夏木マリさんですとか、色々経験されている人はやっぱりすごさを感じます。

――今回の企画では、個展をサポートをしているアダストリアの社員の中からも3人“採集”したそうですが。

清川:1万5000人の社員の中から募集をされたそうで、最終オーディションでは私も実際に面接しました。40人くらいだったかな?決定した3人のうちの1人は、面接の途中で泣き出しちゃったんですよ。話しているうちに家族のことで思いが込み上げてしまったらしくて。

私は採集する人を動物や植物に例えるんですけど、その子を見ていたらなんか「カピバラっぽいな」と思って。カピバラって自分の子供でなくても授乳しちゃうような博愛主義者らしいんですけど、彼女にはそれぐらいの愛情を感じたから。

――実際に展示会場に行ってみようと考えている人に向けてメッセージをお願いします。

清川:「美女採集」を知ってる人も知らない人もいると思うし、知っていても「テーマは女の人」くらいの人もいると思います。でも、どちらかというと「人生ってこんなに面白いんだ」「自分が抱えている悩みやコンプレックスだって個性に変換できるんだ」ってことを知ってもらいたい。

誰かがこの展示を見て少しでも勇気を持てたり、展示してある作品からエネルギーを吸い取ってもらって、少し元気になってもらえるとすごく嬉しいなって思います。

それと、自分が作り上げたもの、やり遂げたことって誰かと共有したくなるじゃないですか(笑)。私の目に素敵に映ったものを、みんなと共有したいんです。展覧会をやらせていただく意味はそこにもあるかなと思っています。

同イベントは表参道ヒルズの スペースオー、大階段、エントランスで開催される。入場料は無料なので、GW期間中に東京にいる人はぜひ会場に足を運び、“命を吹き込まれた”作品の数々を自分の目で鑑賞して欲しい。(東京ウォーカー(全国版)・桑原健太郎)