たった1冊の本で、社会現象を巻き起こした作家たち。彼らにとってもベストセラーは大きな分岐点だった。印税を投資に回す人、まったく別の職業に就く人ーー。個性あふれる作家たちの人生を追う。

 自身の体験を描いたノンフィクション『筆談ホステス』(2009年/光文社)がベストセラーになった斉藤里恵氏(34)。現在は東京都北区の区議会議員だ。

 髄膜炎の後遺症で1歳10カ月のときに聴力を失った斉藤氏は23歳で上京。銀座のホステスとなり、客と「筆談」で会話してNo.1に。「筆談インタビュー」で当時を振り返ってくれた。

「この本を読んだ母が『思ったより皆さんとコミュニケーションが取れていたんだね』って安心してくれました。ずっと心配していましたから」

 現在は7歳の女の子を育てるシングルマザーでもある。

「彼女は聞こえない私のことを考え、助けてくれます。先日も電車が止まったとき、アナウンスが聞こえない私に身振り手振りで説明して落ち着かせてくれました。本当に感謝しています」と嬉しそうにペンを走らせる。

 議会ではどのように質疑しているのだろうか。

「質問するときは原稿データを音声ソフトに読み込ませて皆さんに聞いていただきますが、予定した質問しかできないことが難点です。答弁者の声は音声ソフトを介して文字になります。ときどき変換ミスがありますが」と苦笑する。

 新人議員として奔走する毎日だ。

さいとうりえ
2009年に上梓した『筆談ホステス』は北川景子主演でテレビドラマ化された。2015年に東京都北区区議会議員選挙にて、過去最多票を獲得し、トップ当選を果たす

(週刊FLASH 2018年3月20日号)