「即座にハマる」メディア絶賛、スパイドラマに新風吹き込む『Killing Eve』

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BBCアメリカが4月8日から放送している新ドラマ『Killing Eve(原題)』は、MI5に所属するイブ(サンドラ・オー)が、雇われ暗殺者ヴィラネル(ジョディ・カマー)による一連の殺人事件を追うスパイドラマだ。強烈な個性を放つ二人の女性キャラクターと、ジャンルの伝統を踏襲しつつも急激な変化球を織り交ぜた予測不能のプロットを武器に、レビューサイトのRotten Tomatoesでは批評家から100パーセントのポジティブな評価を獲得している。

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◆キレ者のMI5職員が連続殺人鬼を追う

『Killing Eve』はルーク・ジェニングスによる小説を原作とした8話構成のスパイドラマで、BBCアメリカで放送中。一見よくあるスパイ物だが、女性二人を主役に据えた点が特徴的だ。MI5所属のイブは頭の回転が速いがパニック気質という弱点を抱えている。彼女が追うのは、ヨーロッパを股にかける暗殺者ヴィラネル。その美貌とは裏腹に、笑顔で人を殺めることのできる残忍な殺人鬼だ。

優秀な職員であるイブはある日、上司も気づかない殺人事件の真相に勘付く。互いに全く別のものに見える複数の事件が、実は同一人物による連続殺人事件だという着想を得るのだ。事件の犯人を追ううちに、イブは一連の事件を起こしたヴィラネルの罠に捕われてゆく。視聴者はヴィラネルの行動の裏に隠された事件の全容に迫る過程で、犯罪を追う側・追われる側の命を賭した応酬に手に汗握ることになるだろう。

◆笑顔で殺人 クセのあるキャラクターがグイグイ惹きつける

これまで繰り返し作られてきたスパイものというジャンルで本作がなおも輝くのは、主人公二人の圧倒的な存在感が効いているためだ。イブは野心家でありMI5の中でも優れた職員だが、物事につい口を出してしまうことから問題を起こすこともしばしば。『グレイズ・アナトミー』のクリスティーナ役でゴールデン・グローブ賞を獲得したサンドラが、まったく違ったキャラクターを見事に演じている。

暗殺者ヴィラネル役には、『女医フォスター』のケイト役で知られるジョディ。一筋縄ではいかないこの殺人犯は、暗殺時に必ずターゲットの死に様を見届ける。殺害のプロとしての責任感からかと思いきや、単純に、瞳から光が失われるのを見るのが好きなのだという動機には背筋が寒くなる。イブを脅迫する場面にしても、丁寧にラッピングされた衣装を何着も送りつけるくだりは実に恐ろしい。どの服を取っても、イブの体のサイズにぴったりなのだ。笑顔で人を殺める彼女には、脅しの手段にも独自の美学があるようだ。

◆古典ジャンルに持ち込まれた新鮮なスタイル

思わず引きこまれるキャラクターとひねりの効いたプロットが唸らせる本作は、第1話の放送直後からメディアが絶賛している。New York誌(4月6日)は、「実に楽しく、即座にハマるテレビ」だとしており、BBCアメリカの有名番組『オーファン・ブラック〜暴走遺伝子』に並ぶ人気作品になる可能性があるとも予想している。本作の女性キャラクターは上司や配偶者に従順ではなく、現代風の男女の描写にも要注目だ。

USA Today紙(4月6日)は、「本作はおなじみの道を辿りつつも急にコースを外れる旅で、驚きと満足感が尽きることはない」と例える。正義が悪を追う物語に新鮮味を持たせるのは骨が折れるが、『Killing Eve』はいとも簡単にやってのけた、とは全面的な賛辞だ。ひねりの効いたユーモアを交えた、主役二人の応酬が見ものだとしている。

一方、Variety誌では、急に挿入されるコメディシーンが、シリアスなメインプロットの歩調を乱しているとの苦言も呈している。ただし全般には高評価で、特に皮肉の効いたユーモアを愛する人はとことん気に入るだろうと勧めている。(海外ドラマNAVI)