自動運転には5段階のレベルがある

「自動運転なんて、もってのほかだよ!」。根っからのクルマ好きは、そんなことを言う。確かにそうだ。クルマは運転することが、なによりの楽しみというのは正論だ。でも、どんなに運転が好きでも、疲れたときに自動運転が助けてくれるのはとってもありがたいことではないだろうか。いつでも気を張って運転するのは、正直疲れてしまう。前の夜が寝不足のときだってあるだろう。

 そんなとき、自動運転スイッチをオンにすれば、走行を継続しながら車内で休憩がとれる。これが、自動運転レベル3の考え方だ。

 自動運転には、レベル1〜レベル5まで5段階あるが、レベル1とレベル2はすでに量産されている技術。自動ブレーキや車線逸脱防止の自動操舵など、一般的には高度運転支援システム(ADAS)と呼ばれる領域だ。ここまでは、運転の主体はドライバーであるため、自動運転というより自動運転機能というのが正しい表現といえる。自動運転機能がオンの状態でも、ドライバーは車外をしっかり見て、いつでも運転できる姿勢を保つ必要がある。

 それがレベル3になると、運転の主体がクルマのシステムに移る。ドライバーは自動運転モードのスイッチをオンにしたのち、車外に注意を払う義務はなくなる。そのため、飲食やテレビ視聴などが可能となる。もちろん、仮眠することも想定されるが、自動車メーカーとしては仮眠を推奨することはない。なぜならば、クルマのシステムが自動運転の継続が難しいと判断した場合、ドライバーに運転を引き継いでもらうように通知してくるので、ドライバーはそれに従わなければならないからだ。つまり、運転席に常に座っている必要がある。もちろん、飲酒することはできない。

 こうしてたレベル1〜レベル3の自動運転車を、最近では自動運転における「パーソナルカー」と呼ぶことが増えている。

レベル4とレベル5はクルマというよりも移動する部屋状態

 さらに自動運転レベルが上がって、レベル4とレベル5になると、運転の主体は完全にクルマのシステムに移る。こちらは、「サービスカー」と呼ばれる。そうなると、もうクルマの概念はなくなる。たとえるならば、東京のお台場で運行している「ゆりかもめ」のような運転者がいない電車のようなものだ。

 つまりユーザーは乗員であるため、車内の状況によっては身体を横にして寝ることや、飲酒を伴う飲食も可能になる。まさに、動く部屋になるのだ。オフィスとして、自宅の代わりとして、その空間をいかようにも活用できる。また、レストランとして活用すれば、ナイトドライブしながらシェフや板前さんが目の前の調理してくれるサービスが登場することも間違いない。

 このように、クルマ好きはレベル3を上手く利用して走りを楽しむ。また、レベル4以上は公共交通の発展型として、クルマ好きは乗客のひとりとなって、空間を楽しめば良いのだ。