渋谷すばるに脱退を決断させた「関ジャニ∞」の悲しき事情

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平本淳也(元ジャニーズ所属タレント)

 4月15日、「関ジャニ∞(エイト)」が記者会見し、メインボーカルの渋谷すばるが脱退、ジャニーズ事務所からも独立することが発表された。このニュースは大きく報じられたが、筆者からすれば、2年ほど前から聞いていた話であり、「ようやくか」という思いしかない。

 雑誌などで渋谷脱退の可能性が報じられて以降、相変わらずメディアは「ジャニーズ王国の崩壊」といった憶測や妄想を膨らませているが、これは的を射ておらず、渋谷の決断の理由はもっと単純だ。

 ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川氏がよく言っていたことがある。「タイガース」や「ドリフターズ」は、メンバー全員の名前を全国民が答えられるほどの知名度があり、それこそがスーパースターの証左だと。

 では、関ジャニ∞はどうか。渋谷すばる、横山裕、村上信五、丸山隆平、安田章大、錦戸亮、大倉忠義、この中で知名度が高いといえるメンバーは、かろうじて村上ぐらいだろう。コンサートツアーで国内最大規模の動員数を誇るとはいえ、現実はその程度のもので、SMAPや嵐にはあって関ジャニに足りないのもそこだ。

 そもそも関ジャニは知っていても「渋谷すばる」を知っている人はどれだけいるのか。村上はバラエティー番組の出演も多く、そこそこ有名だろうが、他のメンバーは、顔は知られていても名前までとなると、ファン以外はさほど知らないだろう。

 NHKの大河ドラマ「西郷どん」に出演している錦戸にしても、関ジャニを離れたら「誰だっけ」となっても不思議はなく、本人たちもそれを理解している。関ジャニはSMAPや嵐より稼ぐと言っても、個々のネームバリューは極端に低いのだ。となると、「このままでいいのか」という不安は日々増幅していくものだ。

 渋谷は10年も前からアーティストとして本格的な音楽に取り組み、ソロやバンドの活動も行ってきた。もちろん、関ジャニやジャニーズの看板があってできることだが、逆に「足かせ」になってできないことも多々ある。 あくまでも関ジャニとしてのグループ活動が優先であり、スポーツでいえば個人の成績よりチームの勝利が重要だからだ。関ジャニに帰属する個々の活動はできるが、そうでない場合は許されない。

 やりたいことができないわけではないが、物理的に時間がないのだ。普通の会社に置き換えれば、1日8時間の就労と往復の通勤時間、加えて家に仕事を持ち帰ることもあり、それ以上別の仕事をやろうと思えば難しい。

 グループでの活動は歌やダンスに楽器など、「仕事」は膨大にある。さらにテレビやラジオ出演があり、ツアーもある。この繰り返しの中で、年齢の問題が刻々と迫ってくる。

 当たり前だが、30代後半となれば人生の岐路だ。新たなことにチャレンジするにはギリギリだと思ったのだろう。安定を求めて関ジャニで活動するか、過酷ではあるが本当に自分の能力が生かせる仕事を追求するか。

 こうした現状がある中で、渋谷も36歳の大人として一つの決断をしただけだ。確かに関ジャニというグループの存在は大きいが、現状以上はもう期待できない。そこから脱皮したいなら、関ジャニを卒業するしかなかったのだ。

 では、なぜこのタイミングかを考えれば、関ジャニが絶頂期にある時を選択したにすぎない。先にも述べたが、関ジャニは知られていても「渋谷すばる」個人では限界がある。コンサートツアーも決まった中での脱退といった注目度が高い分「今」というタイミングは申し分ない。

 渋谷個人に限界があるとはいえ、2億円を超える年収があり、ブレーンやスポンサーの算段も背景にあることは間違いない。ただ、こうした環境が整っているからといって、アイドルグループからの脱退のタイミングは思うほど簡単ではない。他のジャニーズ所属のグループにもよくあるが、メンバーの不祥事などで逆風がいつ何時吹くかわからないというリスクもあるからだ。

 ではなぜ、渋谷はジャニーズ事務所に残った上でのソロ活動を選択しなかったのか。それは、ジャニーズでソロは売れないし、売る気もないのが90年代からのポリシーになっているからだ。

 光GENJIの絶頂期を経てソロデビューした諸星和己もそうだったが、いずれも売れているといった域に達しておらず、むしろジャニーズのブランドレベルでは失敗例だろう。

 最近で言えば、NEWSから離れてソロに転じた山下智久もよい例だ。今一つといった感がぬぐえない状況に、「山下のようになりたいか?」という思いが強いのだ。もちろん、キムタクや中居正広らは別格であり、同格で考えるわけにはいかない。

 そして、今回の渋谷脱退騒動で興味深いのは、やはり関ジャニメンバーそろっての記者会見だろう。

 ただ、これはジャニー喜多川氏が明言している「大人の決断を尊重する」といった企業としての姿勢の表れだ。もちろん、SMAPの時のようなゴチャゴチャした面倒にならぬよう最善を尽くした結果ではある。 ゆえに、冒頭でも記したが、今回の騒動に「ジャニーズ王国の崩壊」といった意味合いはない。そしてSMAPの解散であったようなメンバー同士の衝突や不仲があるわけでもない。

 不仲があったとしても、グループ内のいざこざは少なからずあり、それが脱退まで発展したと報じるメディアは無責任な憶測だ。ただ、あてえジャニーズに課題があるとすれば、人気グループの「高齢化」だろう。

 当然だが、人気グループのメンバーらはいつまでも子供じゃない。長年続けていれば、立場や将来を考えるようになる。ジャニーズやグループでずっと安定を求めるか、自分の才能を信じてステップアップするか、どちらを取るかメンバーそれぞれで考えが分かれるだろう。

 筆者は関ジャニ以外のグループでも、渋谷同様の決断を模索しているメンバーがいると聞いている。この状況を鑑みれば、再び渋谷のような騒動が起きても、不思議ではないのである。