「楽しんでもらえたら、それが一番いい」竹内涼真が“自分の言葉”を発信する理由

“国民の彼氏”という称号を与えられた男、竹内涼真。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』や『過保護のカホコ』(日本テレビ系)、『陸王』(TBS系)など話題作に立て続けに出演し、大ブレイクを果たした2017年。今年もテレビで彼を見ない日はない。そんな超多忙の竹内にインタビューして驚くのは、打てば響くような反応の速さと、理路整然とした言葉。ポジティブでありながら、能天気なだけのキャラとは違う。前向きな野心を持ちながら仕事に向き合っている。

撮影/浦田大作 取材・文/江尻亜由子
スタイリスト/徳永貴士 ヘアメイク/佐藤友勝

「青い!」をテーマに、カッコ悪く、情けなくやりたい

この4月から、日曜劇場『ブラックペアン』(TBS系)に研修医・世良雅志役で出演。オペの腕は天才的でありながら、組織のルールにとらわれない孤高の外科医・渡海征司郎(二宮和也)、組織のトップを務める外科医・佐伯清剛(内野聖陽)、新任エリート医師の高階権太(小泉孝太郎)に翻弄されながら、医師としての理想を求め、成長していく。
「医療ドラマに出演したい」と思っていたそうですが、それはなぜですか?
小さい頃から、医療ドラマをよく見てたので。『白い巨塔』、『医龍』、『Dr.コトー診療所』、『救命病棟24時』、『チーム・バチスタ』シリーズ(すべてフジテレビ系)とか、『JIN-仁-』(TBS系)とか。自分もこの世界に入ったら、一度は経験してみたいなと思ってたんですけど。……大変ですね(笑)。
小さい頃に見ていたというと、医師という職業への憧れもありました?
お医者さんってスゴいな、カッコいいなというイメージはありました。僕は小さい頃、身体が弱かったので、病院にはよく行ってましたし、お世話になってましたね。
研修医を演じるにあたっては、どういうふうに役作りを進めてこられたのでしょう?
世良役は、「青い!」っていうところをテーマにして、カッコ悪く、情けなくやりたいなって。そこから成長していきたいな、っていうのがありますね。

世良は、自分では動けないんですね、何もできないから。でも、自分が見ている光景はスピーディでものすごく圧倒される。とくに1話は、患者さんを救いたいというまっすぐな気持ちで医療の世界に飛び込んだはいいものの、「自分が思っていたものとは違った!」っていう状態。だからわりと、視聴者の方と同じ目線かなって。
さきほど「大変です」とおっしゃっていましたが、医療用語の難しさに苦戦中とか?
医療用語に関しては、僕はまだそんなにないんですよね。小泉さんが一番大変です(笑)。僕自身が大変なのは……動きながらの説明セリフっていうのは、難しいですね。気持ちが乗らないものなので、どう表現すればいいのか。そこのニュアンスは探ってます、いつも。
現場の雰囲気はいかがですか?
めちゃめちゃいい雰囲気ですよ。僕、今までの作品もすべて現場に恵まれているんです。みなさんすごく優しくしてくださいますし、楽しいです。コミュニケーションをとりながら、お芝居ができていると思います。
主演の二宮さんを筆頭に、市川猿之助さんや内野聖陽さんなど、錚々たる先輩方が集まっています。緊張したりはしないですか?
しないですね。自分の名前が台本にあるわけだから、ちゃんとやらなきゃいけないし、緊張してても仕方ないですから。先輩たちがしっかり受け止めてくださるので、ぶつかっていこうと思ってます。

発散する場がなくてモヤモヤ……過去最高に“キツい”役

世良役を演じていくことで、竹内さん自身も影響を受けて成長していく部分はありそうですか?
まさに今、影響を受けています。世良くんの役、なんかすごく疲れるんですよ(笑)。
なぜですか?
周りに翻弄されていて、スッキリするシーンがないんです。発散できなくて、ずっとモヤモヤしてるんですよね(笑)。
普段から、役を引きずることは多いですか?
あんまりないんですけど……。「役を引きずってる」というと、カッコつけた言い方になっちゃいますけど……今までの役の中で、一番キツい。

2話では世良くんが爆発するシーンがあるんですけど、周りが見えなくなってうわーってなるだけで、結果、発散はできてないっていう。全然カッコよくない(笑)。(世良役としての自分に対して)「何をしてるんだろう」って、よく思いますね(笑)。
世良くん、いい人なんですけどね。
いいヤツなんですけどね。未熟すぎて、視聴者の方にイライラされないかなぁって、ちょっと心配です。
1話の台本を読ませていただいた限り、そんなことはない気が。
本当ですか!?(笑)
ちなみに今は、何話の撮影を?(※取材が行われたのは4月初旬)
セットの関係もあって、順番に撮ってるわけじゃないんですよ。2、3、4話、入れ乱れながら撮っています。だからなんかもう、どこをやってるかもわかんなくなってきて……「誰のオペでしょう!?」みたいな(笑)。でも、乗り越えます!
このドラマが終わる頃には、さらにタフになっているかもしれないですね。
そうですね、ただもしかしたら老けているかもしれません(笑)。

もう何も怖くない? 竹内涼真流・メンタルの鍛え方

渡海は手術成功率100%を誇る孤高の天才外科医である一方、傲慢な性格と言動が周囲との軋轢を常に生んでいる人物。そんな渡海に、世良として必死に喰らいついているが、実際の竹内は、人間関係を築くにあたって何を大切にしているのだろうか。
主演の二宮和也さんとは、以前にもバラエティなどで共演されたことはあったと思いますが、お芝居で共演してみて、いかがですか?
雰囲気やしゃべり方、セリフを出すテンポとかも、僕にはないものをすごく持ってる方。それに、流れだけじゃなくて、すごく気持ちでお芝居をする方だと思うんです。一緒にお芝居していて、僕のお芝居にもきちんと返してくださるので、ちゃんと会話ができるというか。二宮さんとのシーンは、いつも楽しみですね。
渡海はカッコいいですけど、近寄りがたいというか……たとえば竹内さんが会社に入って、自分の直属の上司がこんなに怖い人だったら、どうやって接しますか?
怖い人だったら……。どうだろうな。自分だったら、(渡海を)怖いとは思わないかな。
それはなぜですか?
……わからないですけど、最近、どんどんメンタルが強くなってきて(笑)。「あの人が怖い」っていうのも、「自分が怖いって思うから、怖いわけで」って思っちゃうんですよね。何か言葉を投げかけられるぶんには、僕は別に気にしないです。
それはサッカーをやっていた頃に鍛えられたからですか?
いや、サッカーをやってた頃は弱かったです。コーチが怖かったですから。でも今は、怖くないです。
この業界に入って、いろんなお仕事をする中で鍛えられていった?
それもありますけど、考え方の問題で。たとえば何か指導されて、その言い方がキツかったとしても、自分が良くなるために言ってくれてることだったら、言われたことを次の行動に活かせばいいだけで。

友だちを作りたいなら、人見知りな部分は見せちゃダメ

バラエティに出演されている姿からすると、竹内さんはポジティブで人懐っこくて、グイグイ懐に入っていくようなイメージがありますが。
仲がいい人には自分からいきますけど、だからといって、「はじめまして」でガツガツいくことはないです。仲良くなるにはタイミングが一番大事だと、僕は思うので。何でもかんでもグイグイいかず、空気を読みますね。
空気の読み方のコツみたいなものは、何かあるんですか?
仲良くなるタイミングって、必ずあると思うんです。共通点が1個見つかった瞬間とか。仲良くなるには、そのタイミングを逃さないようにするのが大事だと思ってるので。またそこで、無理に仲良くなろうっていう意識もしてなくて。何か通じるものがあれば、自然と仲良くなれるから。
この4月から新学生、新社会人として、新しい環境に戸惑っている人や、周囲になじめなくて悩んでいる方も多いと思うんですが、竹内さん自身は、そういった人間関係の面で悩んだことはないですか?
……あんまりないですね。
それはコミュニケーションに長けているからだと思うんですが、たとえば、人見知りの人はどうしたらいいんでしょうか……?
人見知りだっていう人は、自分を人見知りだと思いすぎなんですよ(笑)。人見知りオーラを出してる人には、相手も「話しかけられたくないのかな」って思っちゃいますよね。友だちを作りたいなら、人見知りっていうのは見せないようにしないと、相手だって近寄って来れないわけですし。ただ僕は人見知りじゃないので、こうして言葉で言うのは簡単なのかもしれませんけど……。
たしかに、「自分は人見知りだから」と公言することで、自分から壁を作ってるわけですもんね。
そうですね、そもそもそんな無理に友だちなんて作る必要はないし、自分と合う人をゆっくり見つけていけばいい話で。無理したって長く続かないですから。そんなに焦らなくてもいいんじゃないかなって。相手だって、自分と同じように「気が合う人いないかな」って探してますから。閉鎖しないで、開いておけば、そういう人とつながります。大丈夫です!
「開いておく」という意識は大事ですね。
はい。やっぱり、1回相手を受け入れないと、仲良くはなれないですよね。
次のページ