川内優輝【写真:Getty Images】

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海外メディアも虜、英高級紙が“10の川内伝説”を異例の大特集

 男子マラソンの川内優輝(埼玉県庁)が16日、ボストンマラソン(米ボストン)で2時間15分58秒で優勝。日本人として瀬古利彦以来、31年ぶりの快挙を果たした「市民ランナー」に英高級紙も注目。「お気に入りランナーにすべき10の理由」と異例の大特集を展開している。

 同じ日に予定されていたメジャーリーグの公式戦が中止になるほどの悪天候に見舞われたボストン。極寒の42.195キロで魂の激走を演じ、表彰台の頂点に立った川内旋風は海を越え、英国にまで波及している。

「ボストンマラソンの優勝者、ユウキ・カワウチがあなたのお気に入りのランナーにするべき10の理由」

 こう見出しを打って特集したのは、英高級紙「ガーディアン」だ。「彼の勝利はボストンマラソンで評論家たちに衝撃を与えた。しかし、世界中の彼のファンにとっては、信じられない快挙の数々の一つに過ぎないのだ」と、31歳の伝説ベスト10を紹介している。

 最初の伝説は3月25日に出身地の久喜ハーフマラソンにゲストランナーとして走った際のパンダの着ぐるみ姿の激走だ。「彼はこの大会で以前、スーツ姿で13.1マイルの非公認世界新記録をマークしていた。彼はパンダのコスチュームで1時間10分3秒を記録し、2位に入って弟の鮮輝を破った」。住宅街をパンダ姿で疾走し、観衆から拍手で激励される動画も紹介されている。

週40時間勤務、世界の「社会人の星」に…「間違いなく我々に希望もたらす」

 2番目はギネス記録だ。「ユウキは数々の世界記録を保持している。25回という2時間12分以下の最多記録を含んでいる。彼はマラソン2時間20分以下の世界最多記録を保持している。驚愕の79回だ」と評価だ。

 3番目は異色のキャリア。「彼はフルタイムのアスリートではない。彼は公務員として週40時間、勤務している。午後1時から9時まで、だ。間違いなく、これは我々全てに希望をもたらしてくれる」と一般社会人の希望と評価している。

 さらに、4番目は実業団に所属せず、スポーツ界も受け入れていない日本マラソン界での独自の立ち位置、5番目は「他のエリートランナーと異なり、1日1回しか走らない」「オフの日にはジョギングペースで50キロまで走る」という独特の練習ルーティーン。そして、6番目にロンドン五輪代表落選後に髪を剃った謝罪のスキンヘッドというエピソードまで紹介している。

 7番手は世界屈指のベストタイム。「彼の自己ベストは2時間8分14秒。これより速い米国人は3人、英国人では1人しかいない。彼はアマチュアランナーかもしれないが、タイムはそうじゃない」と31歳の確固たる実力も高評価。そして、驚きとともに8番目に紹介したのは、川内の野望だった。

 すでにフルマラソンで2時間20分切りを79回も記録しているが、「彼は2020年東京五輪まで2時間20分以下を100大会で記録することを目標にしている。(今年は)彼はすでに4回走り、全てで優勝している。彼の出場予定はかなりパンパンだ」と伝えている。

氷点下23度の伝説の激走「マラソン史上最寒での2時間20分切りと思われる」

 9番目は幼少時から受けていた英才教育。6歳で1500メートルを7分30秒で走った川内。元ランナーの母親は近所の公園で指導したが、「彼は毎日、自己ベストを記録した」とし、自己ベストから30秒遅れたら、公園を1周の罰走、1分以上遅れた場合、2周の罰走というスパルタ式だったと報じている。

 最後には今年の元日に同じくボストンで行われた「マーシュフィールド・ニューイヤーズデイ・マラソン」で2時間18分59秒をマークした極寒伝説を紹介。「レース中の気温は氷点下23度まで下がった。これはマラソン史上最も寒い中での2時間20分切りと思われる」と称賛している。

 ボストンマラソンでは15万ドル(約1600万円)の賞金をゲットした川内だが、休息の時間はない。「彼は今週末、日本に戻ってハーフマラソンの大会に再び出場する」と多忙ぶりにもスポットライトを当てていた。

 英国でも市民の「推しランナー」として注目を集める川内。一躍、世界のその名を轟かせ、今後の快走ぶりに海外からさらなる注目が集まりそうだ。(THE ANSWER編集部)