ボストンマラソンで優勝した川内優輝【写真:Getty Images】

写真拡大

31年ぶり快挙の川内、大逆転劇に米実況アナウンサーも「信じられない」と大興奮

 男子マラソンの川内優輝(埼玉県庁)が16日、米ボストンで行われたボストンマラソンで2時間15分58秒のタイムで優勝。日本人としての優勝は1987年の瀬古利彦以来、31年ぶりの快挙となった。

 レース開始前から気温5度に届かず、強風が吹き、冷たい雨が降る厳しい環境。棄権者が続出する中、レースは予想通り、スローペースで進んだ。この好機を粘りが持ち味の“公務員ランナー”は見逃さなかった。

 序盤、いきなり集団から飛び出すと、30メートルほど差を広げてトップを快走した。これには思わず、レースを中継する米放送局「NBC」のアナウンサーも「ペースが速すぎる。必ず失速するだろう」と思わず嘲笑。その予想は的中し、6キロ付近で一度は先頭集団から遅れを取った。しかし、これが“川内劇場”の幕開けだった。

 ハーフ辺りで再びスピードを上げてトップ争いに加わると、NBCのアナウンサーは「カワウチの姿が見えている。彼は踏みとどまっている」と驚きを込めて伝えた。

優勝会見では米記者からの質問が殺到、「普段の仕事は?」「カラオケの得意曲は?」

 そして迎えた終盤。優勝争い常連のアフリカ勢が悪条件に体力を奪われ、次々とトップ争いから脱落する一方、川内は40キロをすぎた辺りから再び力強さを増した。30キロ付近から独走していた昨年の優勝者ジョフリー・キルイ(ケニア)との差を縮め、市街地に入ったところで一気に追い抜いた。

 最大1分23秒あった差をひっくり返す大逆転劇。これには最初懐疑的だった同局のアナウンサーも大興奮。「全く信じられない。川内がすごいことをやってのけた」と絶叫。ゴールを駆け抜けた川内は勝利を確信すると、喜びを爆発させた。

 誰もが信じがたいレース運びで優勝をさらった日本人ランナーに米記者たちも興味津々だ。優勝記者会見では「昨年12度マラソンを走っているが、どうしてそんなにレースに出るのか」「市民ランナーということだが、普段の仕事内容は」「カラオケの得意な曲は」などと矢継ぎ早に質問が飛んだ。

 女子でもデジリー・リンデンが米国女子として33年ぶりの優勝を果たすなど、男女ともに波乱のレースを象徴する結果に。悪天候の影響でタイムは平凡だったが、中継時間の多くで画面に登場するなど日本の「最強の市民ランナー」が伝統レースの話題をさらった。(THE ANSWER編集部)