「米家族計画連盟(PPFA)」のペンシルベニア州の支部がディズニー・プリンセスに“多様性”を求めるツイートを行った騒動について報じる米紙ワシントン・ポスト(電子版3月28日付)

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 さて、今週ご紹介する“エンターテインメント”は、久々となる、あの米の映画会社のお話でございます。

 2014年の3月1日付の本コラム「『ディズニーはデブに冷たい』ぽっちゃりお姫さま登場を訴えた米女子高生、世界3万人が賛同した“理由”」

https://www.sankei.com/west/news/140301/wst1403010080-n1.html

でご紹介したように、最近は各国で進む人種や性の多様化などを背景に、人形や玩具などにも、そうした多様性を求める動きがどんどん高まっています。

 そんな動きを受けて、米ディズニーでもアニメ映画では「アラジン」(1992年)や「ムーラン」(98年)のように、非白人の女性が大活躍する作品や、日本でも爆発ヒットした「アナと雪の女王」(2013年)のように、従来のディズニー・プリンセスの恋愛観を激変させるような作品が急増しています。

 というわけで、世界的な潮流に乗り遅れまいと努力を続けている米ディズニーなのですが、ここに来て、欧米では、またまた“多様性を反映していない”とやり玉に挙げられる事例が物議を醸(かも)しているのです。

 というわけで、今回の本コラムでは、そんな米ディズニーに関する話題についてご説明いたします。

■おデブの次は…「中絶したプリンセス」「ビザ無しプリンセス」「組合労働者プリンセス」

 3月27日付の米紙USAトゥディや翌28日付のワシントン・ポストや英BBC放送(いずれも電子版)などが報じているのですが、米で妊娠中絶手術や避妊薬の処方、性病の治療などを行っている非営利団体「米家族計画連盟(PPFA)」のペンシルベニア州(米北東部)の支部がツイッターで3月27日、こんなつぶやきを投稿したのです。

 「われわれには、妊娠中絶したディズニー・プリンセスが必要です」

 「われわれには、中絶権利擁護派(プロ−チョイス)のディズニー・プリンセスが必要です」

 「われわれには、査証(ビザ)を持たない移民のディズニー・プリンセスが必要です」

 「われわれには、組合労働者のディズニー・プリンセスが必要です」

 「われわれには、(心と体の性が異なる)トランスジェンダーのディズニー・プリンセスが必要です」

 人種差別問題や性の多様化の動きに敏感な欧米ですから、当然ながらこの投稿、大変な騒ぎを巻き起こし、欧米主要メディアがこぞってこの支部に投稿の真意などを問いただす羽目に。

 この支部の社長兼CEO(最高経営責任者)であるメリッサ・リード氏はコメントで「われわれは不名誉に挑戦する物語を伝え、あまり語られない話を擁護することの重要性を強調するため、人々が(映画などで)見たいと思っているプリンセスの種類に関するツイッターの会話に加わった」と説明。

 しかし「ツイートの反響を見ると、われわれが訴えようとした事柄の重大さは主題や文脈において不適切だったため、この投稿を削除しました」と述べ、謝罪の意向を示しました。

 その一方「われわれは、テレビ番組や音楽、映画などのポップカルチャーが、一般の人々を教育し、中絶を含む性的かつ性と生殖に関わる健康問題やその政策について有意義な会話を引き起こす重要な役割を担っていると信じている」と明言。

 そして「私たちはまた、これらの経験に基づく感情的かつ信頼に値する描写は未だ、非常にまれであることも知っています。そして、特定の人々の生活や地域社会の(人々の)正直な描写がまだまだ少ないことを示しています」と述べ、自分たちの主張や行動に正当性があるとの考えを示しました。

■えっ? トランプ大統領の長男も投稿…議論が白熱

 とはいえ、あまりにもといえばあまりにもな投稿だけに、削除された後も、この投稿をスクリーンショットに取って話題にする人々が続出。

 あるユーザーは「ディズニー・プリンセスは子供たちのためのもので、彼らの投稿は大人のための問題だ。そして、このどうしようもない投稿は(保守・共和党の)ドナルド・トランプ大統領(の考え)に固執したものだ」と投稿。

 この他にも「われわれはデブのディズニー・プリンセスが必要です」といった反論や非難、皮肉、あてこすりの投稿があふれ、何と、ドナルド・トランプ大統領の長男、ドナルド・トランプ・ジュニアが「われわれは、人種や性的指向、障害といった特定のアイデンティティーに基づく集団利益を代弁する政治活動を決して終わらせないよう(子供たちを)服従させるより、幼少期の子供たちを楽しませるディズニー・プリンセスを求めています」と投稿する盛り上がりを見せました。

 これまでから、米家族計画連盟(PPFA)はツイッターといったソーシャルメディア(SNS)で、こうした政治的なメッセージを投稿し、物議を醸しているのですが、さすがに今回の騒動は米ディズニー作品に多様性を求めるにしても、日本人的感覚で言えば行き過ぎな気がします。

 ところがこの直後、またまたディズニーがやり玉にあげられたのです。

■英ディズニー給料「男女差別」

 3月31日付で米娯楽・メディア系ニュースサイト、デッドライン・ドットコムや米経済誌フォーブス(電子版)などが報じたのですが、米ディズニーの英国法人「ウォルト・ディズニー・カンパニー・UK」の男性社員の給与が、女性社員より平均22%高かったことが判明。性別で給与を差別していると騒ぎになっているのです。

 政府の方針にならい。英国の大手企業9000社が性別による賃金ギャップの実態について調査(期限は4月4日)した結果、判明したのですが、英国支社の社員1592人の給与状況を見ると、男性の方が女性より平均で22%、中央値で15・8%、それぞれ高く、ボーナスだと平均41・9%、中央値で14・4%と、格差がさらに拡大していたのです。

 ちなみに、社員1284人の英国企業の場合、男女間の賃金格差は平均19・8%、中央値13・5%で男性の方が多く、ボーナスだとこれが平均77・2%、中央値23・2%とさらに拡大するので、ディズニーの格差は、まあそれほどでもないと思うのですが、実は、同じ米の娯楽・メディア系企業の英国法人の場合、NBCユニバーサルだと給与の平均が3・2%、中央値が6・2%、バイアコムが平均2・85%と、男性の方が多いとは言うものの、差がかなり小さかったため、ディズニーが悪目立ちしてしまったのでした。

 この結果についてディズニー側は「われわれは組織全体で採用している女性の割合を誇りに思っており、その役割、経験、業績に基づいて報酬を支払い。プロモートしています」と明言。

 そして「男女間の賃金格差を含むこうした統計は、労働者全体における男女間の平均賃金の差額だけを測定するため、われわれの全体論的なアプローチを反映していません」と異議を唱え「弊社では男性と女性が同じ仕事をすることで均等かつ公正に給与を支払っていると確信しています」と説明。

 同等の仕事に同等の報酬を支払う方が、平均賃金(という概念)よりも、公平さという点で尺度が強力であるとの考えを示し、今回の数字を重視しない考えを強調しました。

 今回のディズニーを巡る一連の騒動で“公平”や“公正”という概念について考えさせられました。

 確かにディズニー・プリンセスが、厳しい現実社会で生きる女性像を代表しているとは言えない一面も無論、あるのでしょう。そして男女間の賃金ギャップの問題では、男であるというだけで、給与が高いという一面もあるのでしょう。

 とはいえ、とりわけ後者の場合、数字のマジックみたいな要素が無きにしもあらず的な話でもあります。ディズニーというブランドを“清く、正しく、美しく”的な見方で叩(たた)くのもどうかと思います。

 ちなみに、世界で進むさまざまな分野での“多様化”という意味で個人的に心配なのは、今や「スター・ウォーズ」のシリーズから「スパイダーマン」や「アイアンマン」でおなじみのマーベルスタジオまで、多くの人気シリーズやヒーローたちが米ディズニーの傘下に入り、ダース・ベイダーからウルヴァリンに至るまで、どいつもこいつもディズニー印のヒーロー&悪役になってしまったことですかねえ…。   (岡田敏一)

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 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。

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【岡田敏一のロック講座】「KISS」の真の功績を語る 5月26日(土)に開催!

 1973年に結成され、歌舞伎の隈取(くまどり)のようなメイクと、ステージを火を吹いたりといった派手なライヴ・パフォーマンスで一世を風靡(ふうび)した米のハードロックバンド、KISS(キッス)。

 70年代には「激しい愛を」や「ハード・ラック・ウーマン」「ロックンロール・オールナイト」といった、ハードなサウンドでありながら誰もが口ずさめるポップな楽曲が全世界で爆発ヒット。さらに75年のライヴ盤「地獄の狂獣 キッス・ライヴ」はロック史に残る名ライヴ盤で知られます。

 幾度かのメンバー交代を経て、2014年には「ロックの殿堂」入りも果たすなど、息の長い活動を続けていますが、1970年代〜80年代の始めには、ロック音楽に反権力や政治的なメッセージを求めるコアなロックファンから長く偏見の目で見られ続けました。

 しかしその一方、ロック公演を純粋なエンターテインメントの場に変え“巨大テーマパーク化”するきっかけを作りました。

 この特異なバンドの真の功績などについて、音楽誌「レコード・コレクターズ」( http://musicmagazine.jp/rc/ )の常連執筆者で、ロサンゼルス支局長としてキッスのメンバーにインタビューするなどした産経新聞文化部の岡田敏一編集委員が解説します。30人募集。

 ■時と場所: 5月26日(土)午後2時〜3時半、サンケイカンファレンス大阪桜橋(西梅田)

(大阪市北区曽根崎新地1−4−12 桜橋プラザビル9階 http://www.sankeiconference.com/sakurabashi/ )

 ■参加費: 3000円

 ■問い合わせ・申し込み: ウェーブ産経(電話 06・6633・9087 http://wave.sankei-kansai.com/ )