WPPのCEO、マーチン・ソレルCEOは4月14日、広告業界の最大手企業におけるトップの座から退く決断をした。これは、広告業界において33年間もの経験を持つ、同氏の不正疑惑に関する調査が開始されてから2週間後の話であった。

新CEOが見つかるまでは、ロベルト・クアルタ会長が執行会長を務める。また、WPPグループのワンダーマン(Wunderman)から、マーク・リード氏とアンドリュー・スコット氏というふたりの重役が、ジョイントチーフオペレーティングオフィサーとして指揮を執るという。

発表において、ソレル氏は調査についてこう触れている。「我々がいま直面しているこの混乱は、ビジネスに不必要なプレッシャーを与え過ぎている。大小関わりなく、我々のクライアントや株主、そしてステイクホルダーをはじめ、世間への利益を考えたときに、会社を退くことが私にできる最善策だと考え、この決断をした」。

業界への影響は大きい



今月のはじめ、WPPはソレル氏の不正疑惑に関する調査を開始したと発表。問題に詳しいある情報筋によると、疑惑は金融取引に関するものだという。

声明においてWPPは、「前回アナウンスされた、ソレル氏の不正疑惑に関する調査はすでに終息しており、大きな問題には発展しなかった。同氏は、随意雇用の原則(期間の定めのない雇用契約は雇用者・被用者のどちらからでも・いつでも・いかなる理由でも・理由がなくても自由に解約できるという原則のこと)に従い、取締役の報酬方針で述べられているように、退職という形でWPPを離れることになる」。

ソレル氏の辞任は、業界に大きな影響を与えるように思われる。現に、業界の先駆者として認知されていたWPPの今年はじめの収益は、2009年以来最低であった。エージェンシーは、いまだ猛威を振るうテクノロジーの信頼失墜によるコストの膨張に対して、蚊帳の外の存在になりつつある。ブランドが内製化を進めるなか、プロジェクト単位での対応など機動力が求められていることや、コンサル企業のエージェンシー化による脅威など、WPPの先行きは暗い。

「ひとつの時代が終わった」



ソレル氏はまさに、広告業界の象徴だった。1985年に、マーケティングサービスのホールディングカンパニーを築くというゴールを達成するため、WPPに資本参加した同氏は、広告業界においてもっとも辛口で、もっとも良く知られた人物であった。また彼は、業界におけるビューアビリティの基準作りにはじまり、2018年5月に控えたGDPR(一般データ保護規則)の執行のためパブリッシャーへの署名要求を行うなど、いま業界で大きな影響力を振るうWPPのグループ企業、グループ・エム(GroupM)の成長にも貢献している。

ここ数年、ソレル氏はWPPへの批判をどう処理するかに向き合ってきた。同社の子会社であるジェイ・ウォルター・トンプソン(JWT)の前CEO、ゲスターボ・マルチネス氏のセクハラ疑惑への対応には、年間100万ドル(約1億720万円)近くを支払っていたという。前CCO(最高コミュニケーション責任者)のエリン・ジョンソン氏によって訴訟まで発展したこの問題は、WPPによる対処の仕方に対する多くの批判を集めながらも、2018年4月のはじめに終息を迎えた。

「ひとつの時代が終わった」。匿名を条件に話してくれたあるWPPの従業員のひとりはこう話す。「多少のショックはあるが、当然の報いだとも思う」。

Shareen Pathak(原文 / 訳:編集部)