1日2分を30日続けると自分が見違える

写真拡大

■ほとんどの人が使っていない潜在意識を使うコツ

ほとんどの人が自分の本来もっている力を出せずにいます。その原因は大事なときに緊張でガチガチに固まったり、過去の失敗にとらわれてクヨクヨ悩んだり、自分はダメだと自信をなくして自己否定にはまったりと、「打たれ弱い」からです。これを克服するには「なぜ○○できないのか」と自分を責めたり落ちこんでいる状態から、「どうすれば○○できるか」という状態へ、スイッチを切り替えることです。

人間には、意識と潜在意識の2つがあります。意識できない部分には生きるための力の宝庫である「潜在能力」が秘められています。しかし、この能力を100%出し切っている人はそうはいません。ほとんどの人は数%がせいぜいでしょう。

その中でたとえばプロ選手として天才的な感覚をもった人や、事業家として大成功した人などは、ここぞというときに意識から潜在意識にスイッチを切り替えて力を発揮するコツを体でつかんでいるのです。この意識から潜在意識に切り替える手段を活用すれば、私たちもトレーニングで同じコツをつかむことができます。

▼メンタルを整える「リズム呼吸」のやり方

それではなぜ、みんなが平等にもっている潜在能力を発揮できずに、大事な場面で失敗して悩むのでしょうか。普段よりも大事な場面では意識過剰になることでわかるように、意識と潜在意識は、正反対に働く関係性にあります。たとえば、「ミスしないように集中しよう」と意識しすぎると、潜在意識で「焦ると失敗するぞ。きっと失敗する」と気弱になり、ミスをする方向へスイッチが入り、失敗体験が積み重なって自信を失っていきます。成功する人は過剰に反応せずに、潜在意識のもつ力を素直に発揮できているのです。

成功する人に限らず、誰でもずっとマイナス状態ではなく、結果を出して調子のいいときもあります。そのときはメンタルが目標に向けて力を発揮したときで、その際には自然に呼吸をしていたはずです。そのときの無意識の呼吸法が、「意識」と「潜在意識」のパイプ役であり、できない自分から、できる自分へスイッチを切り替える「暗示の役割」をはたしています。

■呼吸法を見直せば、人生は変わる

ヨガでは呼吸法を大切にするのが基本ですし、昔から緊張を解くのに深呼吸をしろといわれています。普段の呼吸は、「これから息を吸おう」などと意識せず、潜在意識で行っています。しかし、血圧や脈などとは違い、呼吸は深呼吸したり少しずつ息を吐くなど、意識的に変えられます。この場合の呼吸は、潜在意識から遠ざかっています。

このように呼吸は、意識と潜在意識の両方にまたがっており、意識的に呼吸を変えることで、潜在意識を変えていくことができるわけです。本来の自然な呼吸を取り戻し、呼吸を整えれば、潜在意識に伝わりメンタルも整います。これが「リズム呼吸」です。

▼1日2〜3分を1カ月続ければ緊張はコントロールできる

「深呼吸してください」といわれると多くの人は、まず大きく吸ってしまいますが、吐いてから吸ったほうが、楽に深呼吸できます。呼吸のリズムを身につけるには、吐くのは口・鼻どちらでもかまいませんが、吸うのは鼻から吸い、おなかに入れる腹式呼吸をします。鼻から吸う時間は、吐く時間の半分から同じ長さを目安にして、どの程度が気持ちいいか探ってみます。それがあなたに合った呼吸のリズムです。

リズム呼吸で、緊張をコントロールしてみましょう。自信がなかったり、クヨクヨするときは意識過剰で、潜在意識にマイナスのエネルギーが働いています。緊張感があるからこそ、大きな仕事をやり遂げられるし、危険から身を守ることができます。とはいえ、マイナスのメンタルに支配されているときは、緊張感に振り回されないよう、緊張を自分でコントロールすることが必要です。緊張をコントロールするには、自分で最大限の緊張をつくりだせば、自分で引っ込めることもできます。

まず、息を深く吐きます。次に強い緊張状態をつくって、息を吸います。息を吸う音が隣の人に聞こえるくらいを目指します。その自分でつくりだした最大限の緊張を、息を吐きながら、少しずつゆっくり意識して解いていきます。これを数回、1日2〜3分、1カ月も続ければ緊張はコントロールできるようになります。

----------

▼「暗示」効果があるリズム呼吸の手順

1:頭の中でカウントしながら、口または鼻から息を吐ききる(例:5秒)

2:息を吐いた時間の半分〜同じくらいの長さで鼻からたっぷり息を吸う(例:3秒)

3:(1)と(2)を繰り返し、自分にとって楽なリズムで深い呼吸を繰り返す

----------

■手のひらの一点を何も考えずに5分間見つめる

イメージしたことを潜在意識にインプットすることも重要なトレーニングです。何かの状況や、将来の目標などをまるで体験したかのようにイメージすることで、脳は、実際に体験したこととイメージしたことを同じ情報として処理します。過去の「うまくいかなかった」体験を、イメージによって「こうやったらうまくいった」体験に置き換えることも可能です。スポーツ選手はこのイメージトレーニングを苦手場面を克服するのに役立てています。

集中力に欠け、やる気のなさを嘆く人も多いでしょう。集中力がないのではなく、出せない状態になっているのです。集中状態は潜在意識がつくり出すもので、面白いと思えば自然に集中し、やる気も出ます。しかし、意識して集中しなければと無理を繰り返すと、「集中できない自分」という回路が頭の中にできてしまいます。「集中できる自分」への切り替えが必要で、そのスイッチになるのがリズム呼吸です。

まず手のひらの一点を、何も考えずに5分間、リズム呼吸でじっと見つめます。途中でいやになって投げ出すはずです。そこで「集中できないからダメ!」と自分を否定せず、「集中していないな」と認めればいいのです。ここがトレーニングの大事なところです。5分間のトレーニングを1週間やってみてください。リズム呼吸が、集中していない自分から潜在意識の「集中する自分」に切り替わり、自信がわき、悩みから解放してくれます。

----------

▼集中力をつけるトレーニング

手のひらの一点を5分間リズム呼吸をしながら見つめる(途中で投げ出さず、1週間ほど続ける)

----------

----------

岡本正善(メンタルトレーナー)
1965年生まれ。東海大学卒業。能力開発研究所を経て、メンタルトレーナーとして独立。プロのスポーツ選手の指導のみならず、企業での指導や講演会など多忙を極めている。著書は『逆境を生き抜く「打たれ強さ」の秘密』『「ここ一番」に強くなる方法』など約30冊にのぼる。
 

----------

(メンタルトレーナー 岡本 正善 構成=吉田茂人 撮影=小川 聡)